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すろら!!  作者: 的菜何華
四日目
48/72

リョーマの過去~がんばってフォローするがフォローになってないかもしれない~


……なんか、リョーマが痛い人みたいになったのでフォローしておこう。

いや、じっさい痛いんだが。物理的に。


つまるるところ、一言で言ってしまえば――大概の殺人犯は家族ということだ。


そして、かつてリョーマを殺そうとしたのもまた――家族だったということだ。


 * * * 


結局のところ。

無関係な他人を殺してみようとか思うサイコパスはそんなに多くないということだ。


すれ違った歴史の果てに。

掛け違った時間の結果で。

行き違った日々の結末が。


――その惨劇を引き起こす。


だからこそ。

考えて欲しい。


過ごした日々には本当に悲劇しかなかったのか。

ともに築いた歴史には不幸しかなかったのか。

流れた時間には苦痛しかなかったのか。


――本当に、殺された誰かは。

――殺した誰かの不幸を望んでいるのか。


 * * *


殺人とはそういう犯罪だ。


被害者の声が聞こえない。

絶対的に――圧倒的に。


聞こえるのは被害者面した遺族という取り巻きの身勝手な叫び。


ならば。


勝手に思いを語って許された気になることが許されないなら。


本当に――勝手に無念を語って断罪することは許されるのか。


 * * * 


リョーマとリョーマの母は血がつながっていない。

彼女の夫とその浮気相手の子がリョーマだ。


リョーマの本当の両親はリョーマをおいて駆け落ちしたらしい。

その日から――リョーマと母は家族になった。

二人きりの、家族なった。


愛せる方がおかしい関係性――それでも。

何回もつまづきながら――転んで倒れ伏しながら。

一歩進んで三歩戻るような試行錯誤を繰り返しながら。

それでも――不器用に愛そうとしてくれたとリョーマは言う。


遠足のたびに握ってくれたおむすびの味を覚えている。

風邪引いたとき額に乗せてくれたおしぼりの冷たさを覚えている。

買い物帰りにつないだ手の温かさを覚えている。


忘れられないぐらいに――覚えている。


あの人のありったけの愛情を――覚えている。


遠い過去を見つめる眼差しで――リョーマは語った。


 * * * 


殺人犯を捕まえるには――実際のところ名探偵も名刑事も必要ないことが多い。


その瞬間まで確かに自分と同じように生きていた誰かを殺しても――平然と証拠隠滅に走れる人間は多くない。


それどころか。

かなりの数の犯人が――被害者の傍らで物言わぬ骸となって発見されるという。


無理心中。

追いつめられて――どこにも行けなくなって。

そういう結末しか選べなくなって――起こってしまった結末。


リョーマがかろうじて一命を取り留めた事件もまた――そういうものだった。


 * * * 


小六の冬だった――らしい。

睡眠薬で眠らせたリョーマを部屋に閉じこめて――練炭に火をつけて。

自分はその場で手首を切った。


荷物を預かっていた大家さんが早くに発見してくれたことで二人とも一命を取り留めた。

母親の方は――意識が戻らないままだったが。


彼女の遺書によって真相が分かり――被疑者意識不明によって不起訴となり。

リョーマは父方の親戚に引き取られた。


親戚は――安楽死させようとしたそうだ。

非情と罵ることは出来ないだろう。


ただでさえ金がかかる上に――血のつながりもない殺人者だ。

加えて血のつながった年端もいかない少年を殺そうとした女だ。

大金を投じてまで――生かしてやれと言う方が酷だ。


けれどそのことが。

決定的に――リョーマを歪めた。


 * * * 


正直な話。

俺は生前のリョーマと母親がそこまで仲がよかったとは思ってない。


だって、子供の腕にホチキス打ち込む母親だぜ?

好きになれるというほうがおかしいだろう?


あとぶっちゃけ小学校高学年くらいって親正直うざいし。


けれど。

それでも。

自分のせいで――死ぬと言われて。

平気なほどに――嫌いではなかったのだろう。


あるいは。

どんなに嫌いであっても――人を殺したくは無かったのか。


殺されて――殺し返すと言われて。

きっとその時リョーマの心はいびつに歪んだ。


母親を殺されない為に――殺してはいけない理由を作るために。

幸せな記憶を捏造して――感情を書き換えて。

愛されていた――事にした。


普通に嫌って普通に憎んでいたはずの過去を――美談に押し上げた。


殺人を肯定してまで――罰と裁きを罪と言ってまで。

母親を肯定する道を選んだ。


そして――それは。

最悪の形で裏切られる事になる。

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