目からビーム~それはさておき腕が届く~
「範囲探索……、軌跡追跡……、対象捕捉……、ダメか」
とりあえず、探索系スキルを片っ端から試して――結果は該当なし。
問題は――だからツクモがノヴァーリアにいないとは判断できない事である。
探索系スキルがあれば――妨害系スキルもある。そういうことだ。
探索してみれば一目瞭然――探索不能エリアの数々。
セキュリティの関係で、後ろ暗いことをしてるから、むしろ戸締まり感覚で――使われた妨害スキルの数々。
「……マジ勘弁してくれよ」
この中でツクモを探すのだ。
頭が痛くなる。
まるで砂浜に落ちた一粒の砂金を探すよう。
「……しゃーない。場所変えてもう一回だ」
* * *
と、思ったのだが。
ツクモの情報は早々に見つかった。
危険地帯西北部――アンダーグラウンドの中でも闇市の発達したそのエリアで、黒い子猫に懸賞金がかかっていたのだ。
「ツクモォォォォォォォ……」
とりあえず、安心が半分。なにやってんだが半分。
曰く、目からビームがでた。
曰く、十メートル近いビルの壁面を軽やかに駆け上がった。
曰く、光の爪でサイバネ化したごろつきを五、六人まとめて薙払った。
曰く、どんな電脳攻撃でも通じない。
……間違いなくツクモである。
電脳化したサイバーキャットなら適合者でなくてもそれぐらいはできるが……電脳攻撃が通じないというのは適合ミュミュだけの特性だ。
電脳化していないものには電脳攻撃は通じない。
「まーしょうがない、か」
怖かったんだよな。きっと。
知らない場所にいきなり一人で。
暗くてじめじめした悪い人がいっぱいいるところで。
「みぃ……みぃ……」と耳ぺたんで泣いているツクモを幻視して――俺は歩き出す。
なにはともあれ――情報収集である。
* * *
危険地帯は弱肉強食である。
俺のような純後衛職が一人でうろうろしていても平気なところではない。
できる限り目立たないように――それでいて耳ざとく。
地をなめるように這い回る。
「……まだ、ここにいるみたいだな」
みんな血眼になって探し回っているが――よそのエリアで見かけたという証言はない。
少なくとも――レッドエリアにはいるみたいだ。
「エサ、エサ、クウゾ、クウゾ!」
「痛い痛い! 突っつくな! 引っかくな!」
「エサ! ヨコセ! ヨコセ!」
「俺はエサもってねえっての! 鳥頭!」
「ウソダ! ウソダ!」
「ニオウ! ニオウ!」
それはさておき。
俺ことマサムネ――ただ今、カラスに襲われていた。
* * *
俺を襲っているのはコーヴァスというこのエリア固有の戦闘系モンスターだ。
攻撃力は大したことないが回避力が極めて高く偵察用として有用なモンスター。
性格は……こんなんである。
貪欲で狡猾。エリアを歩いているとエサヨコセイベントにちょくちょく出くわす。
ここで、一発ガツンとできればテイムできるんだが……こちとら純後衛職である。
逃げるしかできない……トホホ。
「……ああ、そういえば黒いミュミュ見なかった?」
「ミュミュ!?」
「ミュミュ!!」
「ニゲロ!! ニゲロ!!」
「コワイ!! コワイ!!」
「クワレル!! クワレル!!」
「……石化弾」
バタバタと逃げだそうとしたところを魔法電磁銃の石化弾で固めてーー首根っこひっつかんで宙づりにする。
「さあ――きりきり吐け」
お前等――うちのこになにをした?
その――一瞬後。
響いたのは無機質な着信音。
それは――運営からのメッセージを知らせるもの。
「ーーっ!!」
開いたメッセージに添付されていたのは――写真。
縦横無尽にホチキスの針の突き刺さった――一本の左腕だった。




