第六天魔王~ノブナガ本気を出す~
「――天空落下」
「――光輝障壁!」
キイン!
軌跡を描く流れ星が無慈悲に地上に降り注ぐ。
輝く障壁は甲高い音と共に砕かれた。
「――鳳凰乱舞」
「――完全反射!」
砕かれた大地をなめるは赤き炎。
反射の魔法を押し流して大地を赤く染める。
燃えさかる紅炎があらゆる命を焼き尽くす。
弾かれた炎の欠片を上空の術者は直に食らって――寸前で戦士がカバーリング。
薄く笑った唇が言霊を紡ぐ。
「――邪龍顕現」
「――次元歪曲!」
赤き炎を巻き上げて暴虐の嵐が吹き荒れる。
狂乱するは黒き邪龍。
大地に潜った僅かな命を上空に吹き上げて――引き裂く。
空間をねじ曲げて逃げる姿は――ただの的だった。
「――暴龍吐息」
呼び出された悪龍の幻影は狂気のままに暴れまわる。
気まぐれのように標的を踏みつぶす。
こうして――。
第六ボス――大天使ミカエルは死亡した。
* * *
要するに。
ノブナガはまだまだ全然本気だして無かったということだった。
具体的に言うと。
めぼしいスキルの入った木の実を密かにキープして置いたのだった。
それも、ログアウト不能になる前からずっと。
レアスキル入りの木の実は高値で取り引きされる。
持ち運びしやすくどのエリアでも需要がある木の実はいざというときの隠し財産にぴったりだった。
そう言うわけで。
マサムネという枷を失ったノブナガが第六天魔王として覚醒した。
「いや~、多重詠唱強いわー。代償軽減とHP変換のおかげでようやっと使えるようになった……ここまで長かったわー」
なんだかツヤツヤしてるノブナガさんである。
手にするロッドは新たな相棒、魔王の杖――攻撃以外の魔法が使えなくなる代わりに攻撃力を大幅に上昇させる杖。
首から下げるはHPを削って攻撃力に転化する首飾り――魔王の首枷。
両手にはめるはMP消費を軽減する代わりにHPが回復しなくなる腕輪――魔王の手枷。
両足にはまるは移動が不可能になる代わりに攻撃力が増大するアンクレット――魔王の足枷。
完全固定砲台仕様――おまけに魔王シリーズをコンプリートした事によりさらに攻撃力がアップである。
……ヒーラーする気は一切無かった。
「……ドーザン先輩」
「なんだ」
「……今のウチに逃げませんか? 今のノブナガ先輩と一緒のパーティーって……身の危険を感じるんですけど」
「甘いな、セイメイ」
「……甘いっすか?」
「逃げられると思ってるのが心底甘い」
「…………………そうっすね」
ノブナガがこうなったら逃げられない――修羅場を共にした経験から断言できる二人である。
「さあ、次のエリアにとっとと行くで。マサムネがいない内にラスボス倒すで」
「……うぃーす」
「……了解」
こうして。
第六天魔王とその眷属はラスボス戦へと向かった。
* * *
「……こんなトラップがあるとは、や」
「いや、まあラスボス戦っすしね」
「……」
結果として。
次のエリアに行くことはできなかった。
ラスボスを倒すと同時にでてきた光の柱の中に飛び込んで見たのだが。
『資格無き者は我が元へたどり着くことあたわず』と放り出されてしまった。
「資格……資格ってなんや?」
巻きで来た第六天魔王ご一行には情報が足りない。
スキルは木の実で取得できても――ステータスは木の実で爆上げできても。
RPGで最も強いのは『情報』だ。
「もー、大人しくマサムネ先輩待ちましょうよ。ドーザン先輩もそう思うっすよね?」
「……」
「ドーザン先輩?」
「……あの声、どこかで聞いたような気がする」
「声優の柚木さんやろ? 有名人やん」
柚木清吾。ボスっぽい渋いバリトンボイスで有名な声優である。
ボスが柚木ボイスかどうかでアニメの視聴率が変わるとかなんとか。
「……いや、確か『すろら!!』の中で聞いた気がする」
「……ホンマか?」
「…………どこだったかな」
目を閉じてドーザンは記憶を辿る――が。
「……ダメだ。思い出せない」
「だから、マサムネ先輩待ちましょうって……今、マサムネ先輩に連絡とりますから」
「やめろ」
セイメイの手を押さえたのはノブナガ(標準語モード)である。
目がマジである。
「今、マサムネに乱入されたらややこしいねん。――わかるな?」
「……分かりましたっす!!」
すっと目の前に突きつけられた魔王の杖を前にホールドアップするセイメイ。
第六天魔王、横暴である。
「じゃ、じゃあ現在地だけでも聞いとかないっすか?」
「……妙な真似したら」
「しねえっす!! 死んでもしねえっす!!」
セイメイも必死である。
「まあ、ええよ。そんぐらいなら」
「らじゃす!!」
「……どこだったか」
ドーザンはまだ頭をひねっていた。
コイツも結構マイペースだ。
「お、返信もう来たっす。……龍人ヶ原でもふもふに囲まれてるみたいっす」
「もふもふに埋もれて死んでしまえ」
「………………………あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
突如。
絶叫するドーザン。
「ど、ドーザン?」
「ドーザン先輩?」
「倶利伽羅龍形態だ……」
「「は?」」
疑問の声など耳に入らないというように――ドーザンは呆然と呟いた。
「ようやっと思い出した……あの声は倶利伽羅の声だ」




