にゃんこってチート~多分オリンピック選手並みに有名人~
「……攻撃手段が空気刃しかねえ」
うん。なんだ。まあ。
大見得切って出てきたものの――結構洒落にならない状況だった。
一言で言えば――俺弱すぎである。
パワーレベリングしてもらえなかったら――倶利伽羅様にすら瞬殺だ。
いや、流石にそれは言い過ぎだが。
ツクモのいない俺など出涸らしも良いとこだ。
「……まあ、仕方ねえか。バトルを挑まれたら逃げよう」
龍人ヶ原の真ん中で――そんなしょーもないことを俺は思った。
* * *
結局俺がたどり着いたのは龍人ヶ原だった。
場所によっては即死もあり得た中これは幸運と言ってもいいだろう。
ここは俺のホームと言っても良い。
ここでなら、俺の力は十全に発揮される。
………………うん。まあ。その前に。
ここに来てしまったからにはやらなければならない事があるわけで。
のしのしといらっしゃいましたよ。御大が。
「にゃあ」
「申し訳ございませんでしたあああああ!!」
なめらかに土下座。むしろ頭で地面を叩き割るように土下座。
現れたのは貫禄のある白猫――ツクモのお父様である。
* * *
基本的に適合モンスターはエリートである。
親兄弟はもとより近隣一帯にその名を知られる地元の期待の星なのである。
栗の木の下のツクモちゃんといえば美人で気だてが良くて可愛くってお利口さんだと龍人ヶ原中のミュミュの間で評判なのだ。
そんな一族期待の星が失踪……もう土下座で済むなら土下座するしかないのだ。
「にゃあむ」
かくかくしかじかと事情を説明した俺にお父様は渋い声で一声鳴いた。
ダンディである。ハードボイルドである。
「にゃ」
ついてこいとばかりに歩き出したお父様の後ろを俺はただ粛々と追いかける。
が、お父様しゅぱっと木に登ってしまった。
リアルでもゲームでも木登りスキルなど持っていない俺である。
のたのたと木にしがみつくしかできない。
「にゃ」
置いてくぞと一声鳴いてお父様は三十メートル近い木の天辺までしゅたっとまっしぐらである。
動きが軽やかすぎる。NINJAも真っ青である。
「にゃ」
何をしているとお父様一にらみ。にらまれたって登れないモンは登れない……ってそうか。
「飛行!」
俺、空飛べるんだったわ。忘れてました、てへっ♪
空中歩行に多段跳躍も持ってましたよ。
こういうスキルが結構荒野系非戦闘員的に役立つんですよね~。
「にゃ」
遅いぞと一声鳴いてお父様はしゅぱっとスタイリッシュ高速機動。
古武術でもやってそうな動きである。
にゃんこって存在自体チートだわ。可愛い上に元々の機動力が高すぎる。
「にゃ」
ようよう追いついた俺に一声鳴いて、お父様は天辺付近の枝に陣取る。
目の前に広がるは無限の広野。
背後に広がるは無限の広野。
ぐるりとそれを見渡して――お父様は叫んだ。
「にゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんんんっっっっっっっっ!!!」
一瞬。
ほんの一瞬だけ――静寂が支配して。
答えはすぐに来た。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッッッッッ!!
地平線を埋め尽くす――ミュミュの群だった。




