決別の訳~ドーザン、ウナギを奢る~
「――で?」
セイメイ半眼であった。ジト目と言っても良い。
「で――とは?」
「何隠してるんっすか?」
「どういう――意味や?」
セイメイはわざとらしくため息をついた。
「なーんか様子がおかしいとは思ってたんすけどね。今の明らかにおかしかったっす」
「どこがや?」
「ノブナガ先輩はいつも通りっす。――おかしいのはドーザン先輩っすよ」
ぴくりと。
ドーザンの肩が動く。
「俺の、どこが」
「可愛いにゃんこに泣きつかれて――それを無視できるような人じゃないっす。ドーザン先輩は」
ぶっきらぼうに見えても――根は優しいの俺は知ってるっす。
むすっとした顔でセイメイは断言する。
「半年も給料が出てないのに――後輩にウナギ奢るようなお人好しっす。ドーザン先輩は」
「ウチは?」
「ノブナガ先輩は金があろうが無かろうがワリカンしかしない人っす」
缶コーヒー一本奢ってもらったことないっすからね。
ますますむすっとするセイメイである。
「で、何があったんすか? キリキリ吐くっす」
「……」
「……しゃーないか」
うーんと髪をかき回してノブナガはため息をつく。
「マサムネには言うか迷ったんやけど――セイメイならええか」
そして、ノブナガは話す。
――二人が攻略を急ぐその訳を。
* * *
「マジっすか……」
セイメイが言えたのはその一言だけだった。
それほどまでに――ノブナガの話はセイメイの想像を越えていた。
「マサムネは理系……ゆうかSEやから逆にこういう発想はないと思うんや」
「おそらくセキュリティホールがどうとか難しい事を考えてるはず」
まさしく――それは文系的発想だった。
「マサムネには言えんかった……リョーマの『親友』やから」
「言えねえっす……言えねえっすよ」
あるいは――ここで言えなかったということがこの三人の限界なのかもしれなかった。
少なくとも。
ここにいたのがリョーマなら――マサムネに言うことを躊躇ったりしないだろう。
修羅場をくぐり抜けた同士の――限界がそこにあった。
* * *
「ま、それはさておくとして――メインヒーラーがいなくなってもうた訳やけど」
「おううっす……」
「そう言えば……」
マサムネ。この四人のメインヒーラーである。
言うまでもなく最重要ポジションである。
ヒーラーの質でそのパーティーの継戦能力が決まるといっても過言ではない。
「マシロは……」
「ムリやろ」
「ムリっす」
「にゃむ……」
適合者のツクモならともかくただのミュミュのマシロではメインヒーラーにはかなり頼りない。
くすんくすんとすすり上げつつマシロが一声鳴いた。
「ドーザン、セイメイ。回復スキル何持っとる?」
「応急手当と自己修復ぐらいっすかね。自己修復はⅢまで持ってるっす」
「応急手当のみだ」
「ドーザン……」
応急手当はチュートリアルでもらえる木の実に入ってるスキルでほぼ全てのプレイヤーが使える基礎スキルである。
それしか持ってないとか……火力特化過ぎる。
「ちなみにノブナガ先輩は……?」
「広域回復、状態異常回復、回復はⅢまで持っとるねえ。あ、勿論応急手当と自己修復は持っとるよ」
「……いや、もうノブナガ先輩がヒーラーでいいっしょ」
何を隠そう。
この四人の中で最もステータスが高く取得スキル数が多いのがノブナガである。
『広域商人』は伊達じゃないのだ。
ちなみに一番下がマサムネ。ぶっちぎってマサムネ。
「それやと、流石にMPが足りへんのや。といってMP増強系スキルはめぼしいのとりつくしてもうたし……」
「なんかノブナガ先輩が攻略組っぽいっす……」
「……」
「っ!? いや!? ライバル心燃やしてるフェイズでもねーっすからねっ!? ドーザン先輩!!」
しゃーないとノブナガはため息をついた。
「とりあえず、スキルもうちょいとってから動くで。巻いていくから――覚悟しいや」
「了解っす」
「了解」
こうして――三人のボス攻略が始まった。




