好きにしろ~ノブナガだって標準語喋れないわけではない~
「にゃああああああああああああん!! にゃあああああああああああん!!」
「おねーちゃんが!! おねーちゃんが!!」って感じでマシロちゃんはもう半泣きだ。
「助けにいってくれるよね? くれるんだよね?」って感じにうるうるとドーザンにしがみついている。
「――見捨てんで」
ばっさりと。
冷酷にも切り捨てたのはノブナガだった。
ああ、そうだ。こいつはそう言う奴だよ。
「にゃんこ一匹にかまってられへん。先に行くで」
「――三人とも先行っててくれ。すぐに追いつく」
がしゃりと。
羽を付け俺はツクモが落ちた穴をのぞき込む。
「――零と一の塊にそこまでするんか?」
「零と一に人生賭ける――それがSEって人種だぜ?」
NPCなんて零と一の塊に過ぎなくても。
その後ろに生きた人間の願いと理想があることが分からなければ――この業界でSEなんて名乗れるか。
「――っ! 好きにしろ!」
ツクリモノの関西弁じゃなくノブナガが吐き捨てた。
それが奴なりの誠意であることが分からなければ――こいつの「トモダチ」はやってらんねえ。
「――あのお、すいません」
盛り上がっていた空気に水を差したのは――兄ちゃんの声。
「盛り上がっているとこ悪いんですけど――その穴から下行っても同じとこに出るとは限らないんですけど……」
「「「「は?」」」」
すいませんすいませんと右頬をかきながら兄ちゃんは言った。
* * *
「この世界――神界の下には境界と呼ばれる世界がありまして、その下に現界と呼ばれる世界があるんです」
「その現界が――今まで俺らがいた世界だと」
「そうです。で、現界と神界は境界によってランダムに接続していまして――どこに出るかは分からないんです」
つまり、こういうことである。
雲の下には境界という訳分からない不思議空間がありその不思議空間によって今までのステージとこのステージはつながっていると。
で、不思議空間のせいでどのステージのどこに出るかは完全にランダムだと。
要するに。
このツクモの落ちた穴から行っても――ツクモと同じ場所どころか同じステージに出るかどうかも定かではない、ということらしかった。
まあ、それはそれとして。
「それでも――行く」
それでも――見捨てるなんて選択肢はこれっぽっちもねえけどな!
当たり前だろう?
「――好きにしろよ」
標準語で喋るノブナガの目は完全に据わってる。
――悪いな。それでも「相棒」なんだよ。
「いや、盛り上がってるとこ悪いっすけど、とりあえずデバイスに連絡先登録しておきましょうよ……」
「……そうだな。とりあえず二人とも落ち着け」
「「……」」
二人のツッコミは――実にもっともだった。
* * *
さて、そう言うわけで分割行動である。
一応、フレンド登録はしてる訳だが――打てる手は全部打っておくべきだろう。
まずはウェアラブルコンピュータの連絡先登録。
これをしておくと回線がつながる限り電脳空間でアプリが使える。
遠隔で支援したり攻撃したり出来る訳だな。
続いて――兄ちゃんが取り出したのはこのステージ特有のレアアイテムだった。
「『呼び寄せの鈴』って言うんですが……これを使えば現界にいる人を神界に呼び寄せることが出来ます」
「おお……」
「ちなみにお値段金貨五千で使い捨てです」
「おおう……」
まあ、買いました。
金は俺が出しました。
しょうがない。俺のわがままだし、ここは俺が出さなければ。
呼び寄せの鈴はみかんサイズの親鈴とクルミサイズの子鈴で出来ている。
親鈴を割ることで子鈴を持つものを親鈴を持つものの元に呼び寄せる。
……おお、普通に強力だぜ。
「うちも買っとこ」
「俺も買うっす」
「俺も買う」
結局みんな買った。
つーか、ノブナガの関西弁が復活したよ。
掘り出し物見つけると機嫌良くなるあたり関西人よりも関西人らしい。
「船は俺持ちでいいな?」
「こっから先宇宙船必要になります?」
「いや、特に必要にはならないと思いますね」
「なら、マサムネが持っとけや」
あとは細々としたアイテムの受け渡し。
これで、準備OKである。
「じゃ、頑張れ」
「いわれんでもそうするわ!」
それが――最後。
俺はツクモが落ちた穴へとダイブした。




