仮説~だから、シリアスなんだって!!~
「フフフ……今宵の鮮血の剣は血に飢えている」
「にゃん♪」
もう、なんていうか。
マシロちゃん逃げてー! 逃げてー!! すりすりしてないで逃げてー!!って感じだった。
というか、ドーザンは血に飢えすぎである。
「おかえりー。ドーザン」
「うむ」
「にゃあ♪」
マシロちゃんご機嫌である。
「あのねーあのねー! すっごく格好良かったのー」って感じだ。
「地下闘技場いってきたん?」
「いや、賞金首狩ってきた」
そういってドーザンはじゃらりと金貨の詰まった袋を置いた。
「鮮血の剣買った残りだ。適当に使ってくれ」
「おー、太っ腹」
「つーか、どんだけ鮮血の剣欲しかったんねん……」
「高周波振動ブレードだぞ!? 欲しいに決まっているだろう!!」
譲れないこだわりがあるらしい。
火力絶対主義者の考えることは分からない。
「そっちこそどうだ? 次のエリアの情報は?」
「あー、うん。なんというか……」
「なんつーかっすよねえ……」
「なんつーかやねん」
「なんなんだ!?」
ドーザン、ツッコむ。
――鮮血の剣持ったままの手で。
あっぶねえよ!? おそろしく危ねえよ!?
スイッチ入ってないからOKとかそういうことじゃないからな!?
「……えーと、なんというかだな。――ブラックホールに突っ込むらしい」
「――は!?」
「だから、宇宙船でブラックホールに突っ込むと次のエリアにいけるらしい」
「――はあ!?」
うん、まあ、なんというか。
流石に第六ステージともなると情報が少ないのではっきりしたことは分からないのだが――どうやらそういうことらしい。
「今んとこ見つかってるブラックホールは七つ――そのどれかが当たりらしい」
「ハズレだと入り口に戻るらしいからとりあえず片っ端から特攻してみるっきゃないって感じっすかねー」
「……おおう」
「……にゃにゃう」
若干引き気味なドーザン。
同じように引き気味なマシロちゃん。
羨ましくなるようなシンクロ具合である。
「まあ、そう言うことならいいか……」
「ビビっててもしょうがないやん。前進あるのみや!!」
「そうっす、そうっす!!」
そんなこんなで。
ブラックホールへ突撃となった。
* * *
「ドーザン、ちょっとええか?」
「……何だ?」
次のステージに行く前に持って行くアイテムを選別しなければならない。
向こうからこっちに帰ってこられるとは限らないからだ。
とはいえ戦闘特化の火力絶対主義者は必要となるアイテムが少ない。
さし当たっては防具と武具と消耗品を選んで終わりだ。
手持ち無沙汰になった隙を見計らったようにノブナガが声をかけてきた。
上手い事マサムネ達の死角に入り込んだのも――きっと偶然じゃない。
「……話しておきたいんやけど」
「……『仮説』の話か」
ノブナガが心当たりがあると言った『仮説』。
どうやら言う気になったらしい。
「ああ。僕が思うに――」
そう言ってノブナガが語ったのは――
「――――――――――――――――――――」
「――馬鹿な!!」
とは言いつつ。
筋が通ると理性が冷静に頭の片隅で断じた。
「――これで全部説明つくやろ」
思わず確認した掲示板には――次々とログアウトしていく「単身者」の声。
家には誰もいないはずなのに――家族は遠く離れた所にいるはずなのに次々に押されていくエスケープボタン。
あのボタンをオンラインでどうこうすることは出来ない。
押す方法はたった一つ――実際にマシンの元に行き押すしかないのに。
その不条理も。
ノブナガの仮説が本当なら――確かに説明はつくのだ。
「だからと言って……信じられん」
とは言いつつ。
冷静な理性が信じたくないと叫ぶ感情を押しつぶす。
ノブナガの「仮説」に理があることは――認めざるをえないと。
「ドーザンに話したんは僕がログアウトする事になった時のためのバックアップや。マサムネ達にいうかどうかはドーザンに任せる」
「……とんだ事を押しつけるものだな」
つまりそれは――自分は言うつもりがないと言うこと。
「……卑怯なんは分かって――」
その時。
ぽーんとアラームが鳴った。
メッセージの着信――それも運営からのものを知らせる音。
「……なんや」
うるさそうに確認したメッセージには――画像が一つだけ添付されていた。
「……っ!?」
「……なんだこれは」
目に飛び込んだのは――肌色を埋め尽くす銀色。
そこに写っていたのは――一本の腕。
手首から肘までの皮膚の上を埋め尽くすようにホチキスの針が突き刺さった――左腕だった。




