不吉な予感~とりあえず一隻狩ってみた~
「じゃあ、お兄さんちょっとオマケしとくよ」
「おおきに~。さすが美人は太っ腹や」
「いやだもう、口が上手いんだから!!」
市街非戦闘員本領発揮であった。
交渉も出来て火力もあるとかなんだこのチート。
関西弁か!? 関西弁なのか!? 俺も関西弁を喋ればあんな風に……!?
「マサムネ~行くで」
「お、おう」
そんな訳で。
買い物である。
* * *
すろら!!ではエリアごとにアイテムの値段が違う。
そのエリアでは取れにくいもの取れやすいものが決まっており、それに従って値段が決まっているのだ。
よってエリアをまたいで貿易みたいなことが出来る。
ただし要注意なのがリアルと同じように「アイテムを大量に持ち込むと値段が下がる」ということ。
需要と供給のバランスを見定めないと一攫千金は難しい。
そして、そういうのこそ――この腹黒関西弁男の独壇場である。
宇宙船購入で使い切ったはずの資金をものすごい勢いで回収している。
交渉スキルフル活用だ。
「……流石に、お坊ちゃんの件は箝口令しかれてるわ」
「いや、かなり口割らせてたと思うけど!?」
「肝心の事がわからんのやよ」
そう言ってノブナガはため息をつく。
「肝心のこと?」
「今でも現役で海賊やっとんのかってこと。それ次第でこっちの対応も変わってくるから……」
「ああ、それで運輸系の人たちに聞き込みを」
「そうなんやけど……」
うーんとノブナガは首をひねる。
「なんかまだ隠してるような気がすんのやよね……僕の嘘感知に反応無かったから嘘はついてへんと思うのやけど」
「えげつねえスキル持ってんな!?」
「市街非戦闘員のたしなみや」
けろりとした顔のノブナガ。
「まあ、しゃーないわ。あんま時間もかけられんし――宇宙行こか」
そんなこんなで。
再びの宇宙である。
* * *
「まずは手頃な非正規船で腕試しするんが良いと思うんよ」
「まあ、そんなところだろうな」
「ういーっす」
「じゃあ、各員配置につけ」
一応配置については取り決めてある。
ドーザンがミサイル担当。一番火力のある武器ってことで。宇宙でもこいつは火力絶対主義者だ。
ノブナガが魔法担当。魔法変換器を介して魔法を撃ち込む。
セイメイがレーザー担当。あと細かい武装もコイツが担当。
そして俺が運転担当である。
「それでは、はっしーん!!」
「「「はっしーん!!」」」
さあ、狩りの始まりだ。
* * *
「思ったより強いな……」
「そう? あんなモンやない?」
とりあえず一回戦って。
捕獲したのが一隻、逃げられたのが二隻とイマイチな成績。
とりあえず捕まえた一隻の非正規船をレーヴェ社のコロニーに引き渡す。
金貨一枚貰って酸素と弾薬、燃料を補給である。
回復はこまめに。RPGの基本である。
「思ったより連携が取れてるというか……」
「まあ、もうフィフスステージやしねえ……あれぐらいはするんやない?」
「つーか、魔法強すぎっす。ノブナガ先輩無双っす」
「魔法変換器の出来がいいんよ。まあ、それを差し引いても魔法防御力低いわ」
「スゴかったっすもんね、魔法……」
宇宙空間。すなわち真空空間。
よって物が燃えることも風が吹くことも無いはず。
だが、魔法変換器はそれを可能にする。
どういう原理かは全く分からないし興味もないが可能にする。
漆黒の宇宙空間を切り裂く鮮やかな炎の矢は壮観である。
「……」
「ドーザンどうしたん?」
「……掲示板が、な」
ドーザンは躊躇うように言葉を切った。
ノブナガはすぐさま自分でも掲示板を開く。
そこに踊っていたのはーー
「……荒れとるね」
「ログアウト者が続出している。同居家族のいない単身者も多い」
「『いったい誰がボタンを押してるんだ!?』、か」
今のところ確認されているログアウト方法は二つ。
タイムリミットかエスケープボタンによる強制ログアウトである。
この二つのログアウト方法に限りログアウト直前に赤い警告文が出るからすぐに分かる、のだが。
「『ログアウトしてるのはゲームからじゃなくて人生からじゃないか』、か」
「軽くパニックになってるな……。実際、俺にもこの現象は説明できん」
「いや」
ノブナガは掲示板を見つめたまま呟く。
その目はひどく悲しげで――
「説明は、つくよ。――あんま良い話やないけど」
「……そうか」
ドーザンはそれきり黙った。
こういうとき根ほり葉ほり聞かないのがドーザン――斉藤英志という男だった。
「……なんにしろ、ウチらに出来るのはゲームをクリアする事だけや」
「そうだな」
切り替えるようにノブナガが言って。
受け止めようにドーザンが答えた。
「ドーザン先輩、ノブナガ先輩!! 出発するっすよ!!」
「今行く」
「はいはい、ちょっと待ってえなあ」
そうして――四人は再び宇宙に戻る。
不吉な不安の種を抱えたまま。




