セイメイの知られざる過去~バク転しだしたら危険信号~
さて。
唐突だが――リアルで俺ら五人に会ったとして。
一体誰が一番イケメンだろうか?
……いや、気を使わないでくれ。
逆に悲しくなる。
分かってる……分かってるんだ!
……。
こほん。
無論、好みはある。
白衣眼鏡絶対主義なら確実にドーザンだし、腹黒関西弁に萌えればノブナガだろう。
中二チックな痛格好いいのが良ければリョーマだし、キャラの薄い理系が良ければ俺だろう。
……そんな奇特な人がいればだが。
が。
そう言った好みを抜きにして。
万人受けする見た目と言うことならば――十中八九セイメイだろう。
ジャニ系の実に甘く可愛らしい顔立ち。
言わなければ十代でも通るほどの童顔。
くるくる動くリスのような瞳。
ブラウンのくせっ毛は地毛。
小柄で後輩口調のよく似合う男。
持って生まれた顔形と言うだけではない。
多分セイメイが一番見た目に気を使っている。
修羅場中一番こまめに髭剃っていたのはセイメイである。
hospitalの成功以降――飛躍的にメディアへの露出が増えた俺らであるが――そこでもやっぱり最もウケたのはセイメイであった。
さもありなん。
セイメイ――安部衛と言う男。
実はアイドル上がりである。
* * *
ジャニ系も何も実際にアイドルだった訳だ。
いわば元本職。
国民的トップアイドルのバックでダンスを踊った事もあるそうな。
そりゃメディアにも慣れてるし顔形にも気を使うだろう。
今でも声はイケボでカラオケは上手いしバク転ができる。
眠気MAXになると突如バク転しだす癖があるが――それはまあおいておこう。
メディアとしても取り上げやすい。
あの天才シナリオライターの知られざるアイドル時代……確実に局にテープがあるだろうし、同時期に訓練した仲間が一人も泣かず飛ばずってこたあないだろう。
奴自身有名人の小ネタをいくつか持ってるしな。
もっとも。
奴がアイドルしていたのは小四から中二までの短い(?)期間だけで――デビューすることも無かったのだが。
正確にはアイドル候補生と言うべきかもしれない。
そして、中二の文化祭。
奴は出会った。
――演劇に。
* * *
その出会いが奴を変えたと言ってもいい。
演じるものから演じさせる者へと舵を切ったのはその舞台がきっかけだった。
実際高校時代は名のある大会で優秀な成績を納め、大学時代は小さな劇団を率いそれなりの評価を得てはいたらしい。
……その辺に関してはセイメイは語りたがらないので謎だが。
俺がその時代の事で当人から聞いたのは――唯一。
奴の「~っす」という口調は――奴が主役兼脚本をつとめるはずで、公演される事の無かった最後の舞台――その主人公のものだというだけだ。
* * *
まあ、だから。
ツクモをツクリモノっぽいと言ったのも奴ならば納得できる感じだった。
演じるものとしての勘というか。
演劇出身者としても演技に関しては一家言あるだろうし。
技術者目線としては「演じる」とは若干ニュアンスが違うなというのはあるが、まあ。誤差の範囲である。
つーか、セイメイはこういう「可愛いもの」に関して毒舌になることがある。
何となく語りたがらない高校大学時代に起因する何かなんだろうとは思うのだが……。
「ツクリモノっぽい……つーか、完璧すぎるっす」
「……ああ、確かに聞き分けが良すぎる所はあるな」
こういうユニットを作る場合――まず注意しなければならないのがプレイヤーの邪魔にならないことだ。
フレンドリーファイアなど以ての外。
不規則な動きをするプレイヤーの未来を見て行動するぐらいでないといけない。
「つーか、イベントフラグでもねーのに反抗されてもなあ……」
「需要がないっすよね……」
一言で言えばそれに尽きる。
そういう裏方の思想が透けて見えるところが――AIだなあって感じなのだが。
道具としての都合の良さ――二次元的な都合の良さと言うべきか。
「……お前等夢なさ過ぎや。リョーマはミュミュ、善性の象徴やゆうとったんやで?」
「マジか」
「リョーマ先輩がロマンチストっす!」
「hospital」時代のの人間のドロドロしたものに迫ろうとしていた芸風とは百八十度違う。
やはり――『彼女達』がリョーマを変えたということか。
それだけに惜しいな。
あんな事さえ――なければ。
「……というか」
この間ずっと窓の外を眺めていたドーザンが口を開いた。
あのにゃんこ的スポ根時空をガン無視できるあたりドーザンである。
「……なんか、コロニー的なものが見えてきたんだが」
「! マサムネ!」
「おう!!」
俺とノブナガはコクピットに乗り込む。
流石に着陸はオートとは行かないのだ。
「面舵いっぱーい!!」
「それ違うやろ!?」
* * *
面舵いっぱいが違うのかどうかはさておき。
なんとか俺らはレーヴェ社のコロニーに着陸した。
「というか、お前ら特に何もしてなくないか?」
「何言ってんだよドーザン。宇宙船ってのは昔からコンピュータ制御と決まってんだぜ? 何しろコンピュータが生まれる前からコンピュータ制御だからな」
「明らかにおかしいだろう!?」
ところが嘘みたいだがホントの話なのだこれが。
真空管で出来た実にちゃちな演算機械をコンピュータと呼ぶのならば、ではあるが。
何しろ宇宙進出とはマッハ二桁は仕様ですみたいな高速移動である。
とてもとても人間に制御出来るものではないのだ。
必要は発明の母である。
「ドーザン、散らかったスーパーボールかたしといて」
「問題ない。ツクモとマシロがもう片づけた」
「うちのこのお利口さん度が留まるところを知らねえな!?」
「みゃ!」
「にゃ!」
えへんえへんと並んで胸を張る二匹である。
うん、ツクリモノだろうが何だろうが可愛いものは可愛い。
そして、可愛いは正義である。
「降りるぞー。忘れ物ないかー」
「ないっす」
「ない」
「あらんよ」
そうして――。
俺達はレーヴェ社のコロニーに降り立った




