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すろら!!  作者: 的菜何華
一日目
2/72

RPGに対する根源的な疑問~いや、リョーマは良い奴なんです~

VR空間へのダイブにはタイムリミットが定められている。業界基準とかそういうんじゃない――法律の話だ。

通称ログアウト不能法。正式名称はググってくれ。


R18で6時間、R15で4時間、R12で3時間。それを過ぎれば問答無用で強制的にログアウトされる。

重要なのはソフトウェアベースの話じゃねえってこと。

ハードの中にそれ専用のチップがオフラインで埋め込まれてる。


VRゲーム機買うのに身分証の提示が必要なのはなんでだ?

対象年齢ごとにハードが分かれてるのは? 最初にユーザーデータを設定しないといけないのは?

――全てこのシステムのためだ。


コイツおかげでどっかのバカがVR空間を乗っ取っても6時間以内に確実に救出ができる。

コイツをどうにかしようとしたらハードの生産ラインを乗っ取らねえといけねえんだ。


「よーするに、あれやね」


ノブナガが言った。


「この一件はそこまでやない。ソフトウェアベースでいじくっただけや、と」

「そー言うこった。……掲示板見た限りだとログアウト出来てるのはタイムリミットにかかったヤツだけみたいだがそのうちエスケープボタン押された奴も出てくるんじゃね?」

「このゲームは社会人ユーザーがメインだからな。特に独身。押してもらえるかどうかはわからんが……」

「つーかフツー家族に自分がやってるゲームタイトルとか教えます? 俺は教えねえっすよ」


ちなみにエスケープボタンも不能法で設置が義務付けられたボタン。

押すと強制的にログアウトさせるっつーものでこれもハードウェアベース。


無論、それに対応してない古い機種も存在するが。

「すろら!!」対応機種には全て組み込まれていたはず。


それはさておき。


「とにかく、実よこせや実」

「あー俺の物攻!!」

「あー俺のやるから。その代り物防よこせ」

「みゅう……みゅっ!」


――ログアウト不能だろうがなんだろうがレベルアップど楽しいものはない。


* * *


レベルアップ、と言っても「すろら!!」にレベルはない。

このゲームをデザインしたやつ――俺の高校の同級生でリョーマってヤツ――はかつてこう言った。


『あの経験値ってシステムはどうにかならんのか!!』

『なんで雑魚狩ってるだけでレベルが上がるんだ!? おかしいだろう!』

『だいたい、最近のゲームはひょこひょこレベル上がりすぎだ! あんなポコポコ強くなってたまるか!!』


……ベロンベロンに泥酔してたがな。まあ、だからこそ本音だったんだろうとは思う。

アイツ酔うと人が変わるからな~。


まあ、冷静に考えてみればレベルアップの簡単さってのはRPGが受け入れられていく過程で仕方なかったものなのだろう。

初期のRPGってのは結構コアな層を対象にしてたからな。多少キツくても問題なかった。

RPGってのが国民的な娯楽になっていく上で難易度の調整は避けられなかった、んだろう。多分。


まあ、とにかく。

リョーマの美学を詰め込んだ「すろら!!」には経験値という概念がない。

じゃあ、どうやって強くなるんだって?

その答えがこの「木の実」だ。


「すろら!!」では「木の実」を食べて強くなる。

さくらんぼほどの大きさの赤い木の実。正式には「フォルスの実」。


「すろら!!」のPCは基本的に「フォルスの実」の適合者だ。

適合してないキャラが食べれば死に至る木の実を食べて人外の力を手にする超人達――それが俺らだ。


……雑魚狩って強くなるのはアウトなのに、こっちはセーフなのかって?

俺もそう言ったんだけどよ。リョーマ「理想のシステムが出来た!!」って言っててよ……。

その基準は俺には分からん。リョーマに聞いてくれ。


ともかく「フォルスの実」を一つ食べると能力値が一つ上がる。もしくはスキルを一つ覚える。

上がる能力値、覚えるスキルは事前に分かるから理想の能力値とスキル構成を目指せる。


能力値は物理・魔法共に攻撃、命中、防御、回避の四種類とバステへの耐性を表す特殊抵抗の九種。

初期ステはオール10。種族が人間一択でジョブもなんもねえから個性の出しようがねえのが難点だな。

種族に関しては将来的に改善するとかなんとかつー話はあるがどうなるんだろうか……。


「まー、割り振りポイントじゃないと全般的に上げたくなるっすよねえ」

「あー、確かにオールカンスト可能だが、総上昇値が一定を超えると加工しないと効果なくなるぞ」

「まじっすか!?」

「マジやね」

「みゅん♪」


そう言うノブナガの手には一枚の木の葉――これこそ加工の際に必要になる木の葉「クレの葉」である。


「僕はそんなでもないから二つ磨り潰して混ぜ合わせればええねんけど、もっと上の子はなんやかんやいろいろせなあかんのやて」

「成長は計画的にだな」

「みゅう……」


ざりざりと乳鉢乳棒で実と葉を磨り潰しつつノブナガとドーザンはしみじみと頷いている。

どうでもいいがフィールドのど真ん中で生産する絵は中々にシュールだ。


「まあ、成長すんだら次行こうぜ」

「セカンドボスやねえ」

「今度はシティ物だったか」

「狼王子っすねー」

「みゅみゅう!」


そう、次なる敵は交易都市マルクトの有名人――第三王子にして侠客、狼王子ヴォルフである。




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