無表情美少女~さて、俺はどこにいるんでしょう?~
少女はまだ動かない。
黒服Aとドーザン、黒服Bとセイメイが交戦中だというのに――無表情のまま倉庫の中心に突っ立っている。
ぎゅっと蜘蛛のぬいぐるみを抱き抱えたまま。
カバー役としての黒服Cは優秀だ。
今のところ少女まで届いた攻撃はない。
それ故に――少女のプレイスタイルが見えない。
純支援役なのか、軽戦士型なのか、あるいは魔法火力型なのか。
防ぐのか、かわすのか。
そこが見えない。底が分からない。
その結果――攻めあぐねている。
だからこそ――動くのはこの男だった。
「炎嵐」
ほんの一言――その一瞬後。
その倉庫の中を――赤き炎が埋め尽くす。
ノブナガの味方を巻き込んでの識別不能魔法。
今度は先にコンセンサスをとっている。
『あ、とりあえず一発目は巻き込むな』
『『『おい!?』』』
……こんな感じだが。
「――っ!」
しかし。
動いたのは――黒服C。
体を張って覆い被さるように――少女を守る。
ノブナガは一瞬眉をひそめ――逆光を背負って言う。
「炎矢」
入り口から堂々と歩くノブナガを先導するように――赤き炎が走る。
「障壁」
少女の細腕が障壁をはる。
「氷弾」
「障壁」
ノブナガは足を止めない。
一定の速度で真っ直ぐに少女の元に進んでいく。
少女もその場から動かない。
必然としてどんどんと――縮まる二人の距離。
「風刃」
「障壁」 「雷槍」 「障壁」 「石礫」 「障壁」 「鋼針」「障壁」「砂鞭」「障壁」「雪華」「障壁」
距離を詰めながらの――魔法の撃ち合い。
飛び交う魔法。
風の刃が空間を引き裂き――雷の槍に迎撃される。
石の礫が降り注ぎ――鋼の針が打ち砕く。
空気を打った砂の鞭は虚空より生まれた雪の華に絡め取られた。
生じる余波を障壁で防いで――響く足音。
かつん。かつん。
最早、どっちが攻撃しているのか分からないほど入り乱れながら――両者の距離は確実に近付いていく。
十歩の距離――いや、五歩の距離。
既にそれは魔法使いの間合いではない。
「――なるほど」
「……?」
少女が言って――ノブナガの足が止まる。
「そこ――ですか」
蜘蛛のぬいぐるみの中から抜き放たれたのは暴力的なまでの大口径の拳銃。
少女は迷いなく引き金を引く。
――天井に向かって。
「うわあああああ!! うわあああああ!!」
崩れた天井からなす術もなく付与術師が落下してくる。
かろうじて障壁だけは張ったようだが――足りない。
ドンガンドン!!
三連の銃声は迷いなく飛んでいき――射線上に飛び出したノブナガに吸い込まれた。
「ひ、回復!!」
「何、ぼさっとしとんのや!! 早よ上行き!!」
「ふ、飛行!!」
ふよふよと頼りなく浮かび上がる影を黒服達は見逃しはしなかった。
機銃の掃射が。
ぶっちぎれられたソードブレーカーが。
炎の矢が。
飛ぶ。
――その一瞬前。
「はい。チェックメイト~♪」
軽く――軽く。
どこまでも気安く。
俺は少女の首を薙いだ。




