サイバーパンクのお約束~いや、グのつくあれではありません!!~
「――どう? 気に入ったかしら」
「「「「……」」」」
少女につれられてやって来たのはちゃんとした正規の発着所――しかもグリーンエリア!!――だった。
白銀の機体がライトを受けて輝いている。
凹み一つない流線型のフォルム。武装はレーザー兵器がメインだがミサイルなんかもちらほら見える。
そして――デカい。
俺らがやっとのことで買った船の十倍――長さで、だ――はある。
――ただ一つ。
問題があるとするなら――
「蜘蛛……」
「ええ。綺麗でしょう?」
船体にデカデカとプリントされた金色の蜘蛛の巣と蜘蛛の紋章。
アラクネの傘下にあるゴールデンウェブ社のものであることを示すものだ。
「……中見ても良い?」
「どうぞ」
ハッチから中に乗り込むと意外に狭かった。
まあ、こんだけ大きければ燃料も酸素も莫大な量になる。
「武装は……っと」
コンソールに指を走らせ装備をチェック。
……ふむ、物理一辺倒かと思いきや魔法装備も積んでやがる。
隙のない構成と言って良い。
続いてシステムのメインOSとアプリをチェック。
うお、操縦補助じゃなくて自動操縦じゃねえか。
自動修復も入ってやがる……。
くっそ、容量多いな。クロックも速え。
「お気に召しまして?」
「お気に召しすぎるな」
いつの間にか背後に立った少女にそう切り返す。
振り返れば余裕の笑み。想定の範囲内ってか?
「こりゃあいくらアラクネとはいえ一介のギャングに用意出来るもんじゃねえだろう。いったいどこからパクってきやがった?」
「あらあら。私達そんなお行儀の悪いことはしませんよ」
くすくすと笑いながら少女はすたすたと外に出る。
ついてこいと言わないばかりのその態度に軽くムカつきつつついていく。
ハッチからさっきとは反対側に降りる。
そこで少女は振り向いた。
「こういうこと、ですわ」
白銀のボディ。
そこに描かれていたのは白黒の獅子だった。
* * *
巨大企業っていやあサイバーパンクではお約束だ。
最近じゃラノベでも出てくるか?
いわゆる世界を支配するほどデカくなった企業体。
グのつくアレとかアのつくアレとかを想像するんじゃねえぞ。あくまでフィクションだ。
影で政治に介入したり非人道的な実験を繰り返しているのもお約束だ。
その中の一つ黒白の獅子レーヴェ社とアラクネの傘下ゴールデンウェブ社の共同開発によって出来た機体がこれであるという。
宇宙海賊対策の奥の手として。
なるほど、アラクネの人間を乗せるわけにはいかないわけだ。
ゴールデンウェブは表向きはアラクネとは関係ないことになっているのだから。
かといってそんな危険な貧乏くじをレーヴェの人間が引くわけがない。
「……誰でもいいと言うわけにもいきませんの。ご覧になったかしら?」
「ああ、こりゃ魔法使いが必要だな」
魔法使い。つまり適合者=PCだ。
NPCにいないこともない――レーヴェ辺りには多分いる――が、かなり珍しい部類なのは間違いない。
「募集をかけたのですが何故か潮が引くようにいなくなってしまって……」
そしてPCは俺らや一部の攻略組を除いて絶賛引きこもり中だ。
ぶっちゃけアラクネに選択の余地はなかったのだ。
「……なるほどねえ。せやけど――ウチらもそんなに安うあらへんよ?」
「ふふ、もちろんですわ。必要なものは用意しましょう――それだけの実力があるのなら、ですが」
少女は微笑む。
「まずはお手並み拝見と参りましょう?」




