ノブナガは資産家~ドーザン、本気になる~
結局。
俺ら四人――ゼヘクに戻ることになった。
のの字屋ゼヘク店で作戦会議だ。
「自前で宇宙船用意するルートもあんねん。茨の道やけど」
「合法ルートと非合法ルートか……」
「どっちもスゲー金かかるっすね……」
「……一応、アテはなくもないねん」
「なんすか?」
ノブナガはそこで迷うように視線を泳がせ――言った。
「ツクモちゃんを売ると資金が――」
「よーし分かった。歯あ食いしばれ」
「冗談やん!! 冗談冗談」
あわあわと手を振るノブナガ。
次言ったら殺す。
「あとは――のの字屋を売る」
「却下」
「無しっす」
「それはねえ」
自分はツクモを売るのがイヤだってのにノブナガに店売らせるわけにはいかねえ。
仁義ってモンがある。
「ただなあ……船だけ用意しても、俺らが弱いまんまじゃなあ……」
「そうなんよねえ」
「そこだな」
「そうっすよね」
すろら!!のスキルは木の実で覚える。
が、電脳攻撃するアプリはアプリをインストールすることで覚える。
最低限――操縦系のスキルかアプリを手に入れないと宇宙にはいけない。
「どっかに寄生するんも違うよねえ」
「違うな」
「違うっす」
「違う」
ノブナガはイベントリを忙しく操作する。
「――一応、かき集めれば五千万ぐらいは用意できるわ」
「大金だけどなあ……」
「なんすけどね……」
「なんだがな……」
宇宙船は安いものでも一億からスタートだ。
あと五千万足りない。
正直ノブナガの資金力はゼヘクまでを根城とするプレーヤーとしては異常と言っても良い。
流石に店三つ持ってるだけのことはある。
しかし、それだけに――この辺りが限界というのもある。
このゲームはレート変動制だ。
市場に同じものが大量に出回れば値崩れを起こす。
やっぱり無理なのか。
俺たちがラスボスに挑むことなんて――
「……考えてもしゃあない。とにかく銅貨一枚でも稼ぐんや」
「それしかねえな」
「そっすね……」
「……」
重い――重い沈黙がずしりと落ちた
* * *
そして現在。
俺はひたすら木の実をすりつぶしている。
金策も大事だが能力も底上げしなくてはならない。
これぐらいになると木の実を乾燥させてすりつぶし油に溶かして成分を抽出濃縮して混ぜ合わせるぐらいしないと効果がない。
片手間ではとても出来ないので何故か俺が指名させれた。
「みゃうみゃう♪」
まあ、ツクモが可愛いから全部許す。
ああ、ウチの子可愛い。可愛すぎる。天使か!? 天使なのか!?
「うーん、宇宙船売っても良いって話は結構あるんだけどなあ……」
ぶっちゃけ。
安く譲っても良いですよという書き込みはあるにはあるのだ。
どうやらスペースオペラ世界を越えると粗大ゴミになるらしく――欲しいなら譲って良いという話はある。
ただし。
「自分で取りに来てください。少なくとも宇宙まで」という但し書きがつく。
……いや、それが出来ないから困ってるんだろ!? という突っ込みに関しては、じゃあどうやって帰れと!? という切り返しが付いてくる。
スペオペ世界から先はポータル的なものが無いらしい。
少なくともまだ見つかってない。
移動には宇宙船必須とな。
宇宙船複数持ちはまだ現れてないと。
「ポータルがどっかにありそうな気がするんだがな……」
「みゅう……」
あるいは物質転送システム、的なもの。
「ただフィールドそのものが広がるからな……」
「みゅみゅ」
星間戦争――フィールドは宇宙そのもの。
星々の間を駆けめぐり――宇宙海賊や敵性宇宙人と戦うのだ。
あと、入植のお手伝いとか本星からの物資輸送とか。
やることは龍人ヶ原と何も変わらないのだけど。
「ポータルを探すってもな……アテもなにもないし」
「みゅう……」
うーん。うーん。と唸りつつ。
抽出した液体を試験管に詰めてコルクで栓をする。
ラベルをぺたりと張って試験管立てに立てる。
これで終わりではない。
これに乾燥した木の葉から抽出した成分と「ポルトの根」から抽出した成分を混ぜ合わせないといけない。
ツクモは邪魔しないで良い子に見守ってる。
ウチの子が良い子すぎる。泣ける。
混ぜ合わせるのは駒込ピペット片手の精密作業である。
『理系やからこういうの得意やろ?』と言われたが俺は情報系だ化学系じゃない。
まあ、一般教養としてこれぐらいは出来るが! 一般教養だからな!!
「アプリとデバイスも買いに行かないといけないんだよな……」
アプリの譲り渡しは同一パーティー内だけで可能である。
転売が可能になると違法コピーを推奨してると言われかねないからな。
だから正規品を何とかして手に入れないといけない。
安全だが高いグリーンエリアか。危険だが安いイエローエリアか。
レッドはない。レッドはない。何度でも言おう。レッドはない!!
「金策次第か……」
「みゅん……」
ノブナガはとにかく他二人は不安だよなあ……。
* * *
「……ただいま」
「おかえり、ドーザン」
どうだった?と聞くと無言で小さな袋を放り投げた。
しゅぱっと取りに行くツクモ。お利口さんである。
「金貨二十枚ってとこか……まあ、ドーザンならこんなもんじゃね?」
「……どういう意味だ?」
「そのまんまの意味だけど?」
ドーザンは金銭系かなりアレだ。
アレだ。察してくれ。
「そう言うお前は何を――っ!!」
「どした?」
「……思いついたぞ」
ドーザンの目がギラリと光る。
目線を辿ると――皆さんから提供されたアイテムの山。
その中でもネタ系・便利系と呼ばれる戦闘には役に立たないアイテム。
首を傾げるツクモと俺を置いて。
悪人然とした不適な笑みでドーザンは高らかに宣言した。
「五千万稼ぐ方法をな――!」




