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すろら!!  作者: 的菜何華
二日目
12/72

アメリカ製はアメリカン~残念ながらこれがイエロー~

結局ところ。

癖だ何だといったところでそこまでわかりやすいパターンがあるわけではない。

レトロゲーじゃねーんだ。それなりに工夫されてるさ。


それでも。

何かしら現れてくるものはあるもんだ。


コイツは俗信に近い何か何だが。

AIにもお国柄ってのがあるらしい。

アメリカ産のはアメリカンに。

ドイツ産のはジャーマニーに。

中国産はチャイニーズに。

韓国製はコリアンに。

日本産のはジャパネスクに。


無論どの国もニュートラルな人間ってのをデジタル化してるはずなんだが。

どこかしら癖ってのは出てくる……らしい。


まあ都市伝説に近い何かだが。


それでも。

国ごとにAIに期待されるものは違う。


AIとは結局のところ機械だ。人間じゃない。

人間らしさを期待するなら人間使った方が安くて速い。

心の交流? 温かみ? 血の通った? そんなのは人間がやればいい。

一ドルで一日雇われてくれる人間が世界にはあふれているのだから。


だから、人間よりも人間らしい動きを期待されるのはゲームの中だけだ。


こういう話がある。

あるVRMMOの話だ。

その会社は高いライセンス料払うのを嫌って全NPCにバイトを付けた。

人間らしい動きは人間にさせれば良い。

一見筋の通った理論だったんだが――上手く行かなかった。


一番の原因は待遇問題。

コンピュータの良いところは設定とメンテナンスさえやっちまえば無休で働いてくれるところだ。

バイトたちにそれは期待できない。


だが、それだけじゃない。

演劇や文筆で鍛えたはずの演技力が――全く通用しなかった。


結局のところ。

人間らしさとNPCらしさってのは別モンだったという話。

ダンジョンズ&ドラゴンズから始まったRPGの系譜は人間でもない機械でもない第三の分類を生み出した。


それがNPC。

人が創りし人間のイデア。


 * * * 


「……マジ勝てたし」

「うっそやろ……」

「……」


「俺大学じゃAI専攻してたし」

「何年前の話やねん!!」


うん。

まあ、そこは重要ではない。


「『すろら!!』は結構特徴的な作りしてんだよ」

「特徴的?」

「モンスターのAIに人間用のAIを使ってる」

「???」


基本的にモンスター用のAIと人間用のAIは別だ。

犬と人間じゃ脳の作りが違うだろ? あれだ。

こういう作りにするにはライセンス契約段階で特例ねじ込まなきゃなんねえ。

その代わり、モンスターに人間らしい動きをさせることが可能になる。


「典型例はミュミュだな」

「あ……! だから前にAIがどうとか……!」

「ザッツライト」


ミュミュのAI調整は一級だ。

人間らしい感情制御と猫らしい身体制御。

これだけでもゲームが出せるレベル。


神の美技ってやつだ。

SEなら誰もがシビレる。


だが逆に言えば癖の出やすい構成だと言うこと。

契約的に通常のパッケージ契約よりもバリエーションも少なくなるだろうし。


「AI調整はゲーム技術者なら誰もがあこがれる花形なんだよ。目指したことの無いSEはいないと言っても良いぐらい」

「「「へ、へえ~」」」


まあ、それは言い過ぎだが。

SEは玉石混淆の職だ。文系のSEというのも存在するぐらい。


「人間らしさってのは結局のところ人間にしか分からなねえってこと」


しかも、時代によって変わる。

去年通じた法則がもう通じなくなってくる。


最終的には職人芸(ヒューリスティック)だ。


「とりあえず、装備買いに行くぞ。こんなビックリ芸何度も通じるもんじゃねえ」

「……了解」

「イエッサっす」

「ほな、行こか」


そんなこんなで――買い出しである。


 * * * 


イエローエリアの買い物はトラップ探知が必須。


と言うことに俺たちは五分で気がついた。


店頭に何気なく置いてあるものに即死トラップがかかってるとかマジである。

中古品は基本トラップ付き。

保証書? ちり紙の仲間か?


「イエローなんすよね? イエローなんすよね?」

「残念ながらこれがイエローや」

「フフフ……鮮血の剣(ブラッドカッター)か」

「ドーザンはブレねえな!!」


コールしてベットとか。

このステージ用に作られたルールじゃねえかと思う。

不意打ちありだと無理ゲー過ぎる。

タコ殴りにされて身ぐるみ剥がれて終わる。


「情報もどこまで回ってるか分からへん。……今日はイエローで稼いだ方が良いかもしれへん」

「でも、それぐらいなら電脳化しちゃったほうがよくねっすか?」

「そこだな。問題は」


ドーザンの外装型サイバネッティックアーム。

ノブナガと俺の外付けメモリとチューニングしたアプリ。

セイメイのスマートブレード。


稼いだ金で用意できたのはそんなもんだった。

圧倒的に足りない。


特に問題なのは立ち上がりの遅さだった。

アプリを起動するにも、殴りかかるにも、斬りつけるにも、魔法を使うにも――向こうは圧倒的に速い。

電脳化――その恩恵である。


「もうなんや――レッドとか人の形しとるかどうか怪しいねん」

「そこからっすか!?」

「そこから――だろうな。AIの組み方からして人間型に拘る理由がねえ」

「刃が通るか怪しい、か」


四重のため息がイエロータウンに落ちる。

どう考えても詰んでる。




「……もう、これ自前で宇宙船買った方が速いんじゃないっすかね?」




言ったセイメイも期待はしていなかっただろう。

しかし、この男は違う。


「……それや」


広域商人――ノブナガ。


そのエンジンに火がついた。

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