ちゃぷたーⅣ オオカミ男、襲われる R-15注意
注意
このちゃぷたーでは、R-15と思われる性的な表現が含まれています。
そういったものが苦手な方はバックしてお戻りください。
大丈夫! どーんとこーい!! な方はスクロールどうぞ。
千夏さんも休憩時間に入ったらしく、せっかくだから皆で遊ぼうということになった。葵さんは土佐犬のバスターくんのリードを持って「もう帰る」とひたすらに繰り返していたけど、千夏さんが、最近バスターくんのお肉がぶよぶよしてきたと言うと、葵さんはバスターくんの前に屈んで、下から上へバスターくんのほっぺのお肉をぶにいと引き上げた。た、確かに、ちょっと、うーん…。ここからは葵さんの背中しか見えないんだけど、明らかに少し怒っている様な空気が葵さんから漂い出した。
「ほら! ここにアタシという犬のエキスパートも要るんだから! 運動させるわよ!!」
「お前、俺が留守にしてる間勝手に餌箱漁ったやろ。なあ」
「わ、わふぅ…」
「ちょっと聞いてんの? 肉引き上げすぎてバスターの顔わかんなくなっちゃってんじゃん」
葵さんの手によって色んな顔に変形させられていくバスターくんを見ていると、昨日のワンくんとのやりとりを思い出した。ワンくんの方をちらりと見てみると、ワンくんも思い浮かんでいたのか、少し小馬鹿にしたような顔でわたしを見てフッと鼻を鳴らした。
「千夏さあああん!! こっちですこっちですううう!!!」
「わふう!! わふー!」
まーやちゃんとバスターはアタシが投げたフリスビーに向かって身体を飛び跳ねさせたけど、一人と一匹のどちらもキャッチすることが出来ずに転がって行くフリスビーをひたすら追いまわしていた。
「……なんでまーやちゃんがフリスビー追いかける側になってんの?」
「バスターの顔見ながら自分の顔いじくり回した後、ああいうことになった」
「はあ? …っていうかワン! あんたも参加しなさいよ。これじゃどっちがご主人様かわかったもんじゃないわ」
飼い主であるまーやちゃんが居るはずの位置で、この鋭い目つきをしたウルフドッグはアタシの言葉を無視してあくびをしていた。主人の言うこと以外は聞かないワンオーナードッグらしいといえばらしいけど、こいつの場合どっちかっていうと性格の方が前に出てる気がする。でも…。
「…」
欠伸をしようが何をしようが、ワンの目線がまーやちゃんから外れることは一切なかった。はーん、これはいつ何があってもまーやちゃんだけは助けられるようにしてんのか。ぱっと見は気付きにくいけど、ご主人様への忠誠心はご立派なモンね。そういうところはさすが狼の血を受け継いでいるというか何と言うか。
ともかくアタシはウルフドッグの特徴のひとつである高い身体能力をぜひとも拝んでおきたいのだ。ほらほらともう一つ用意しておいたフリスビーをワンの前で煽って見せるけど、やっぱり何の反応も見せない。
しかし、突然ワンの目の色が一瞬にして変わり、すばやく立ち上がってまーやちゃん達がいる方に向かって勢いよく走りだした。
は、はやっ!!? なんだあれ!! 何事かとワンが走って行った方を見たけど、アタシの視力はそんなに良くないので、様子がぼやけてよく見えない。しばらく葵も、ワンとその向こうにいるまーやちゃん達の様子をうかがっていたけど、何かわかったのか葵も勢いよく走って追いかけて行った。な、なんだなんだ。ていうかさすが弓道部だな!! よく見えるな!! …とにかくアタシも行ってみないと。
「は、はうう。も、もうダメ…。もう走れないよう…」
「わふっ!」
今までにないほど全力で走ったので、もうわたしの足は限界を訴えていた。明日筋肉痛になってるんだろうなぁ。で、でもこれでちょっとはほっぺのお肉も落ちたはず、はず。フリスビーをくわえて「もっかいもっかい!!」と言わんばかりに大きなしっぽをぶんぶん振っているバスターくんはとってもごまんえつのお顔だ。やっぱりワンちゃんの体力には敵わないなあ。
ちょっと休憩したいというアピールも兼ねて、バスターくんからフリスビーを受け取り、頭を撫でてあげていると、バスターくんはわたしの体をあちこちふんふんと嗅ぎだした。
「へ、へあっ。くすぐったいくすぐったい!」
「わふぅ?」
昨日のワンくんみたいなことをするので、まだ何か変な匂いが残っているのかと腕をくんくん嗅いでみたけど、自分の匂いがわからないだけなのか、汗の匂いしかしなかった。
バスターくんはずっと不思議そうなお顔をしてわたしの体中を嗅ぎ続けた。かなりくすぐったい。
「はう!? ば、バスターくん!! 待って待ってそこはちょっと、は、はうううう!!?」
わたしはバスターくんの行動にこの上なく慌てた。スカートの中にまでお顔を近づけようとしてきたのだ。だっ、だめだめだめ!! それはさすがに恥ずかしいからだめえええ!!
やんわりと止めようとしたけど、力では敵わなくてぽてんと簡単に後ろに体を押し倒されてしまい、不思議そうな表情をしたままのバスターくんはそのままスカートの中にお鼻を侵入させようとしていた。ひいいやああやあめえてえええ!!! 遠くに居る千夏さんに助けを求めようと大声を出そうとしたら、聞き覚えのある勇ましい鳴き声が徐々に聞こえてきた。
わ、ワンくーーーーん!!! ものすごい形相でこっちに走ってきたワンくんに気付いたバスターくんは、向かってくるワンくんを見て、何故か納得した様に嬉しそうに笑った。そして、バスターくんはわたしの上から退いてそのままワンくんに向かって突進していった。ワンくんはそれを挑発と受け取ったのか、唸り、吠えることを止めず、スピードも緩めることもなかった。お、怒ってる!! かつてないほどワンくん怒ってるううう!! や、やめてー! 喧嘩は、やめてええええ!!!
「ママーあのワンちゃん達なにしてんのー?」
「み、見ちゃいけません!!!」
「…ほんで、何でこうなっとるんや」
「あ、あおいざああん、…わ、ワンぐんが、ワンぐんがああああ…!!!」
結果的に言うと、体格差のせいでワンくんは負けた。というか、ワンくんは戦い方を間違えていた。敵対心丸出しで向かっていったワンくんだったけど、バスターくんの目的は決して戦いなどではなかった。バスターくんは勢いをつけて突進してきたワンくんの前をするりと抜け、不意を突かれたワンくんの背後に周り、そして……―――
そして…ワンくんは現在、何故か発情してしまったバスターくんに、マウンティングされている。ちなみにワンくんは、ウルフドッグさんのときでも人のときでも男のひとだ。そしてバスターくんも男の子だ。
わ、わたしには止められない。目の前の光景が迫力ありすぎて壮絶すぎて、もうワンくんが、ワンくんが不憫で、不憫で…!!! あああごめんなさいワンくんあああ!! ごんな情けない飼い主でごめんなざいいい!!
顔を真っ青にしているワンくんは、そ、その、こ、腰を振っているバスターくんを、全力の抵抗で押しのけようとするけど、ポニーぐらいの大きさのバスターくんを振り払うことは叶わなかった。
走って駆け付けてくれた葵さんはその光景を目にして、すごく嫌そうな顔をしたあと深いため息をつき、がしがしと頭を掻いて、ワンくんの上で興奮し続けているバスターくんの首輪を遠慮なく、ぐいっと力強く引っ張った。
「おいアホ」
「わふっ!」
「そいつは雄や。そんなイキって腰振ってもなんも孕まん」
「わふぅ?」
「わ、ワンくん!」
葵さんがバスターくんを引き寄せてくれたおかげで、ワンくんはなんとか解放された。ワンくんはよろよろと立ち上がろうとするけど、あまりにもショッキングな経験だったのか、すぐによろめいてしまった。地面に崩れ落ちる寸前に何とか受け止めたけど、わたしからすればワンくんも十分おっきいので、また押し倒されそうになるところを慌てて駆け寄ってきてくれた千夏さんが支えてくれた。
「ちょっとちょっと! 公衆の面前でなんちゅーことしてんの! オス同士で!!」
「ヒート(発情期)なってる雌犬がどっかにおる。それに当てられたんやろ」
「ええ!? うちではちゃんと期間チェックして、ヒート中の子はお断りしてんのに…」
「ワンくんしっかりしてええ気を確かに持ってえええ」
ワンくんはげっそりしていて、力が抜けたのか全体重をわたしに預けた。




