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最後のいたずら

作者: 青魚岩太郎

 あなたもですか・・・。

 ニュートリノが、光よりも早かったことをそんなに驚きをもって見つめているのは。

 不思議?

 いえいえ、それは、ごくごく当たり前の事実。

 アインシュタインの理論はくつがえされるのか、って?

 いや、彼の理論は完璧でした。

 あなたの質問の声が聞こえてきますね・・・。

「じゃあ、時間は決してさかのぼらないという因果律、この宇宙を支配する絶対法則は、どこへ行ってしまうんだ?」

 ああ、正直に言いましょう。

 うらやましい、あなたが。

 これは失礼。

 おや?

 そんなに、怒らないでくださいな。

 私は決して、あなたを馬鹿にしているのではありませんから。

 思い出してください。アインシュタインは、時間を・・・?

 そう。

 伸び縮みするものだ、と、たとえたのでしたね。

「想像してごらん。きみたちがデートの相手を待っている時間の方が、楽しく過ごす時間よりも長く感じるだろ。それが、僕の特殊相対性理論さ」

 お気づきになられましたか?

 アインシュタインは、永遠の少年。

 少年は何の対価も労働もなしに、夢の寝床を得られる。

 でも・・・。

 お分かりいただけたでしょうか?

 そうです。

 ほとんどの大人たちは、労働の苦役なしに今日の生さえおぼつかないのです。

 労働のための能率、排除、疎外・・・。

 アインシュタインの理想とは裏腹に、彼の理論は、想像するのも恐ろしい放射性物質の開放を生み出してしまった。

 そして。 

 アジアの国で。

 60数年前、ふたつの原爆が炸裂し。

 半年前、繁栄の名の下に運転され続けた原子力発電所が爆発してしまったことは、あなたもよくよくご存知でしょう。

 実は、私も、天国の門番のはしくれにしか過ぎないのでよくは分からないのですが・・・。

 神は、最後のいたずらを、この世界になさったらしいのです。

 あくまで、聞いた話ですよ。

 神が、ニュートリノと呼ばれる物質に高速を超えさせたのは、つい最近。何と、あなたが夏休みの宿題に追われていた頃らしいのです。

 目的は、ひとつ。

 少年少女のあなたたちこそ・・・?

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 最初は全体の短さに物足りなさを感じたのですが、読めば読む程、話の奥深さに色々と考えさせられます。 最後の問いかけは、私達人間が進むべき道の提起…でしょうか。
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