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最悪な再会

 もうすぐ伯父さんの誕生日なんだって。寝る前にお母さんから聞いた。

 何かプレゼントをしようと、2人であれこれ話し合った結果、スマホケースに決定。今使っているヤツはかなり年季が入っているから。

 お母さんと一緒に買い物へ行くはずだったけど、前に来てくれた俳句の会のお客さんがまた大勢で来てくれた。私も手伝おうとしたけど、お母さんと2人で大丈夫だというので、私はお昼過ぎに一人で出かけた。伯父さんは、私が誕生日プレゼントを買いにいくなんて勿論知らない。


 電車で30分程の場所に、大型ショッピングセンターがある。昔、お父さんとお母さんと3人で行っていたのを思い出す。そういえば、お父さんはここのフードコートのカレーが好きだったっけ。今日はここでカレーを食べる? お昼ご飯食べて来たし、一人で食べるとか無理だし。


 ここの二階にお気に入りの雑貨屋さんがある。自分のカバンや財布は殆どここで買っていた。お母さんの誕生日にポーチ、お父さんの誕生日には定期入れを、それぞれ買ったっけ。でも引っ越してから、家から遠くなっちゃったからあんまり行かなくなった。ていうか、心にゆとりがなくなって、こういう所で買い物をしようとすら思えなくなっていた。


 あれこれ見ていたら、ビーズでキラキラ光る髪留めや文具雑貨とかが気になった。髪留めは西尾さんの髪で揺れたら可愛いし、動物の形の付箋やクリップは真田さんが好きかな、なんて思って見ていた。おっと、いけない、今日は伯父さんのスマホケースを買うんだった、とお母さんと話し合って決めた色、黒いケースを探した。伯父さんは黒とかグレーが好きみたいで、普段の洋服もダーク系が多い。

 ズラッと並んだスマホケースは、プラスチックのカバーや手帳型の物や色々あった。伯父さんにあげるのは手帳型の黒……と、割と無難な物があったので手に取った。でも、その隣にあった群青色のような紫のような……一見黒だけど、そう、夜空のような色。私から見た伯父さんのイメージはこんな色だった。青空ではない。夜空。

「これに決めた!」と直感で決めて、即レジへ向かった。

 プレゼント用に包んでもらい、リボンはキラキラ光る、シルバーにした。


 ブラブラしようと思ったけど、すぐにそんな気持ちは打ち消した。お店が忙しいといけないし、勉強もしなくちゃいけないし……。早く帰ろう。


「明日香でしょ?」


 何だかザワッとした……。

 雑貨屋さんを出てすぐその声がした。

 ゆっくりと振り向くと、そこには大崎マリナがいた。


「久しぶりぃー」


 私はこの子にいじめられていた。

 だから固まったし、声が出なかった。

 怖かったからじゃない。彼女が微笑んでいたからだ。まるで久しぶりに、親しかった友達に会った、みたいに。

「ひとり? ひとりならアイスでも食べよ」

 無視して行こう。嫌だ。喋りたくない。

「待ってよ。何で無視すんの。確か引っ越したんだよね?」 

 帰ろう。こんな子知らない。どんどん無視してエスカレーターに乗ったけど、何でついてくんの?

 しつこいよ! 暇か! 正面玄関まで付いてきた。仕方ない。私は玄関を出たところで強めに言った。


「あ、あんたとアイスなんて食べる訳ないじゃん!」

「ちょっとなにキレてんの?」

「よく声なんてかけてきたね。散々ひとのこと……」

 いじめておいて……という言葉が出て来なかった。すると、何か思い出したように、ハハハと笑った。

「ああ、そだよね。ああ、そうそう!」

「どうして? 私、何かした?」

 面と向かって聞きたかった。

「何でこんな事すんの?」って聞いた事あるけど、「別にぃー」とか言って何も答えてくれなかったから。

「なんも」

「えっ……」

「まぁ、面白かったから? かな」

「は?」

「きっかけは分かんない。でもさ、仲間外れとか無視すんじゃん。そんときの明日香、超悲しそうな顔するの。ちょっと面白くてね」

 仲間外れ、無視、靴を隠されたり、教科書の落書き。定番のいじめ。毎日繰り返された。

 この子はスタイルが良くて、顔も綺麗だ。勉強は凄く出来る訳じゃないけど、クラスの中では悪くない方だったと思う。そして何よりも、堂々としていて、なぜかこの子には逆らえないオーラのようなものがあった。

「だってみんな私の言いなりだったでしょ。明日香庇う子いたじゃん。でも、次あんたね、なーんて言うとビビるんだもん。だから面白くて。だから、大して意味ない」

 ケロッとしていて、私何も悪くないでしょ的な顔をする。

「学区分けでさ、中学一緒じゃなかったじゃん。だから知らないと思うけど、私もいじめられてたんだよ。上級生にね。生意気だとか言われてさぁ」

 そんなこと知るか! それが何?

「まっ、うちのお兄ちゃんに言ったら、ちょっとシメてくれたから大丈夫だったけどさぁ……もう私の事いじめてた奴ら、ブスでバカっぽくてダサくって、もう最悪だった」

 もう聞きたくないって思ったから、そのまま歩き出した。

 でも、モヤモヤした。

「じゃ、アイス食べないならバイバイ」

 そう言って、行こうとしたけど、私は「ちょっと待って」と、引き止めた。

「何?」

 ちょっとイラついているのが分かった。

「あのさぁ……い、今更「ゴメン」て謝ってほしい訳じゃないよ。だって、いじめていたというより、からかっただけ? そっちにとっては、きっとその程度だったんでしょ?」

 そうだ、もう会うこともない。全部言ってやろう! 最悪、殴られようと蹴られようと、もう構わない。

「私がずっと辛かったのは、いじめられてた事だけじゃなくて、理由が分かんなかったからだよ。そっちは上級生に、生意気だから? そんな理由でいじめられてたんでしょ? それだけでいじめるなんておかしいけど、悲しそうな顔を見るのが面白いって? そんな理由ってある? そんなのって絶対におかしいよ!」

 噛まずに言いたい事だけ、ばーっと言った。

「明日香、顔、真っ赤。笑える」

 ほら、人を馬鹿にしたように笑うだけ。どんなに言っても、多分無駄。でも、黙っていられなかった。

「だから……そっちがやった事って、バカっぽくてダサい上級生と同じだよ!」

「はぁ?」

 怒って睨んできた。負けるもんか!

 でも、もういい……帰ろ。


「あっ! こっちこっち!」


 マリナが急に誰かに手を振った。ふと見ると、佐藤優子が駆けて来たから驚いた。

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