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バス停でコンビニスイーツ

 夏休みが3分の1過ぎた頃、数学の補習があるのでバスに乗って学校へ向かっていた。

私の中で一番遅れてるのが数学だから、少し憂鬱だった。でも、出来のいい真田さんは補習には来ないけど、西尾さんは来る筈。話す時ちょっと緊張するけど、前のような気持ちとは違う。

 いじめられていた時、一度立ち向かった事がある。強くなろうと、変わろうとした。でもダメだった。

 先生に言っても一時は収まったけど、また違ういじめ方をされただけだった。そのいじめ方が私を転校へと決意させた。

 お父さんは次の中学ではいい友達ができるよ、と言ってくれたけど、私はもう友達とかいらないから、無事に毎日を過ごせたらいいと思って生活してきた。でも、今は、傷つくことを恐れないで勇気を出したいと思っている。ゆっくりゆっくり……お母さんみたいに……。


 補習にはなぜか真田さんも来ていた。そして、その横には村木くんがいた。

「何か言うことあるでしょ?」

 と、真田さんが私の前に立たせた。

そしてとても小さく呟くように「悪かった……」とだけ言って、逃げる様に教室を出て行った。

「は? あれだけ? ムカつく! ちょっと行ってくる!」

 真田さんは即効で村木くんの後を追った。

 西尾さんの話によると、村木くんはどこか真田さんに頭が上がらないとこがあるらしい。

 幼稚園から一緒で、塾も一緒で、2人しか知らない何かがあるんだろう、と意味深に西尾さんは言う。

「あれがあいつの精一杯らしいわ!」

 戻って来た真田さんは呆れてたけど、村木くんは絶対に謝ったりしないって思ってたから、ちょっと驚いた。

「真田さん、もういいから……」

「小谷さんがそれでいいなら……ま、いいけどさ……」

 不満そうだったが、真田さんは納得してくれた。そして、私と西尾さんの補習が終わるまで待っていてくれた。

 帰り道、やっぱり村木くんの事を話していた。塾で最近成績が上がり、ちょっと調子が戻ってきたらしい。

「お前の志望校、俺レベルなら楽に受かりそうだわ、とか言うのよ、あいつ!」

「マジで? じゃあ今日やっぱり小谷さんに土下座させるべきだったね!」

 誰かと並んで帰るなんて、どれくらいぶりだろうか。帰り道が楽しかった記憶は、小学4年生くらいで止まっている。仲の良かったサキちゃんが引っ越して、最初は手紙でやりとりしてたけど、そのうち途絶えた。どっちが返事を出さなくなったのかは覚えていない。

「聞いてる? 小谷さん」

「えっ?」

 西尾さんが何か話していた。

「だからさぁ、小谷さん、めっちゃ勉強してない? 今日の小テストすっごくよかったじゃん!」

「あのファイルのお陰かな……ありがとう」

 とお礼を言ったら、真田さんは照れてこう言った。

「友達じゃん!」

 ドキッとした。

 そして、バス停でバスが来るまで一緒に待ってくれた。次のバスが来るのは15分後だった。

「そうだ! 忘れてたー」

 と西尾さんはカバンからコンビニの袋に入った、ロールケーキやチーズケーキ、カップケーキなど、いろんなスイーツを出した。

「うわっ! おいしそう!」

「3人で食べようと思って買ってきた! あっ、懸賞で当たったクオカードで買ったからお金はいらないよー」

 「3人で」という言葉に、やっぱりドキッとする。

 バス停のベンチに、西尾さんを挟んで3人並んで座った。

「どれがいい? あっ、カップケーキは前に食べた時おいしかったよ」

「じゃ、じゃあ、カップケーキ……」

 カップケーキは、チョコチップが入っているのと、クリームが乗っているのと二種類あって、見た目も凄く可愛いかった。

「私もカップケーキにする。小谷さんどっちにする?」

「どっちでもいいけど」

「そういうのダメだよ! じゃんけん!」

 勝った方がクリームで負けた方がチョコチップに決めて、真田さんとじゃんけんをした。私が負けたのでチョコチップを貰った。

「いただきます……」

 ちょっと畏まって一口食べた。

「あっ、美味しい!」

 思わず声が大きめになった。しっとりしていて美味しかった。中のチョコチップの甘さがいいバランスで、好きな味だった。

「クリームも美味しいよ。ちょっと一口あげる!」

「じゃあ、私も一口……」

 結局、分け合って食べた。

「ズルい! 私もちょうだい!」

 西尾さんにも一口あげた。西尾さんの食べているチーズケーキも一口もらい、3人で試食会のようにしていたら、お爺さんが、「若い子らは、楽しくていいのぉ」と言って、通り過ぎていった。

 私、楽しそうに見えるんだ。何だか少し安心した。

「ねぇユズ、喉乾かない? 美味しいけど水分を奪うー」

「しまった、麦茶飲んじゃった」

「私も飲んじゃったよー」

「アイスティーでよかったら……」

 今日は暑いからと、伯父さんが麦茶とアイスティーを両方持たせてくれた。麦茶は飲んじゃったけど、まだアイスティーは飲んでいなかった。

「いいの? じゃあ、貰うね!」

 真田さんが飲むと、すぐに西尾さんも飲んだ。

「あれ? このアイスティー超おいしい! 甘い物にぴったり」

「カフェの味だねー」

 私の水筒を3人で回し飲みした。こんな事、初めてかも……。

「志保、飲み過ぎじゃない?」

「そんな事ないよ」

 水筒を取り合う2人を見ながら、凄く平和な気持ちになった。

 バスが来たけど、次のバスに乗る事にした。結局、一時間後のバスに乗った。黙ってふたりの話を聞いていただけで、ちょっと緊張したけど、とても楽しい時間だった。

 いい加減話を切り上げて、私がバスに乗ると、外から手を振って「またねーバイバイ!」と、2人で変顔をして見送ってくれた。なぜか真田さんの変顔は私にとってツボで、バスの中、思い出し笑いをしてしまった。

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