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伯父さんの過去

 店に戻ると、誰もいない店内で伯父さんが誰かとスマホで話している後姿があった。声はとても弾んでいて、「じゃあな、夏休みに」と言って、ピッと切った音までも弾んでいるように感じた。

「あっ、トシさんはどうだった?」

「元気ではなかったけど。あ、水ようかんごちそうになっちゃった」

「そうか、よかったな」

 伯父さんの口角がやけに上がっているのが気になった。どんないいことがあったんだろ?

「今の電話、超弾んでたね」

「聞こえてたか」

 そう言うと、とても嬉しそうに笑った。

「やっと修に会えるんだ!」

 シュウ……そうだ、伯父さんが離婚した時からずっと会えないでいる、修くん……てことは私のいとこだ。

「よかったね……でもさ、どうして今まで会えなかったの?」

 聞いちゃいけないかもしれないけど、誰も教えてくれないし、勢いで今なら話してくれるかもと思った。

「あ、ごめんなさい……言いたくないならいいよ」

 伯父さんは、結構くたびれたスマホケースを開いて私に見せてくれた。昔の写真を待ち受け用に撮った写真で、そこには2、3歳位の男の子が笑っていた。

「この時期から会ってないんだよ」

「そうなんだ……」

 その写真を眺めながら、さっきの笑顔とは一転して、寂しそうな顔をした。

「内緒でいろんな金儲けの話に乗ってさ、最終的にはいろんなとこから借金して……元奥さん怒らせて。しかもさ、一度ならずも二度も同じようなこと繰り返しちゃって。とうとう最後は信じてもらえなくなってな……」

 そう話すと、重いため息をついた。

 私が勝手に想像していた内容とは違っていた。ありがちな不倫とか? 伯父さんってよく見たらカッコいいし、もしかして女の人にモテたりするのかなって思ってた。前に言ってた「色々あって」は、お金の事だったんだね。

「元奥さんに、借金を払い終わるまで修には会わせないって言われてさぁ……」

「じゃあ、払い終わったの?」

「うん。もう二年前にな。だからすぐに会えると思ってたけど、親同士がそんな約束してたって、3歳から会ってないだろ? 修の気持ちはそんなに単純じゃなくて……で、半年前からやっとメールをし始めて……」

「伯父さん、よかったね」

「うん。ありがとう、明日香」

 見た事がないような嬉しい顔、でもどこか不安な感じもする。ずっと会ってなかったんだもんね。ドキドキだよね。


 家に帰ったら珍しく、お母さんが晩ごはんを作ってくれていた。チャーハンだった。サラダはなかったし、ちょっとベチャッとしてたけど、作ってくれただけで、もうそれだけで十分だった。

「セラピー、どうだった?」

「うん……お母さんはあんまり話さなかったけど、他の人の話を聞けて……行ってよかったと思う。また機会があったら行ってみようと思ったわ」

 穏やかな表情で、無理はしていない様だった。

「そうそう、伯父さん、修くんに会うんだって」

「電話で聞いた。嬉しそうだったね」

「借金とか、大変だったんでしょ?」

「聞いたの?」

「だって教えてくれないじゃん」

「ペラペラしゃべることじゃないでしょ」

「まぁ、そうだけど」

「大変な時期が何年も続いてたのよ。一度、過労で倒れて入院した事があったしね」

「あっ、覚えてるよ。私が3年生の頃お見舞いに行ったよね? お店がそんなに忙しかったの?」

「まさか。あの店を引き継いだけど、喫茶店経営だけでは借金も養育費も払えないでしょ? だから店が終わると肉体労働とか、知り合いの店の手伝いとか、とにかく常に働いてたわ。あの店だけでやっていけるようになったのはここ2、3年かな」

「そうなんだ……」

 おじいちゃんは、店を売って借金を返済すればいいって言ったらしいけど、やっぱり自分がしっかり働いて返済すべきだとそれを断ったそうだ。

「カッコいいじゃん、伯父さん」

「でも病院のベッドで、やっぱり店を売ろうかな、とか言ってたわよ、冗談なのか本気なのか」

「本当に?」

「でも、そんな父親じゃ修くんに会えない、とか言ってたからね」

「修くんっていくつなの?」

「離婚した時、確か、3歳だったから、今は18? かな」

 15年間も会えなかったんだね。逆に私は14年間お父さんと一緒にいたけど、これからはもう会えないんだ……。

「チャーハン、もうない?」

「お母さんの食べていいわよ」

 味はイマイチだったけど、やたらお腹が空いていた。お母さんは作っただけでお腹がいっぱいになった、とか言って伯父さんが持たせてくれたビシソワーズを飲んでいた。そうだ、トシさんも飲んだかな。

「今日は疲れてたのに……ご飯なんてよかったのに」

「ううん……ちゃんとしたかったの」

 私が高校へ行かないって言ってから、いろいろ無理してるよね? そんでまたパーンってなっちゃって、前みたいに薬飲み過ぎて救急車……なんて事にならないように。

 そんな夜、眠りについたらどこからか救急車のサイレンが聞こえた。あれからお母さんの部屋で寝ている私は、驚いて起き上がった。隣ではちゃんとお母さんが眠っていたから、ほっとした。

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