太陽
私はぴーちゃん。『高峯 雛』だからぴーちゃんと呼ばれている。
小鳥がピヨピヨと囀るところから連想したのだろう。
私の毎日の日課は、友達の南ちゃんの話を聞くこと。
窓の外を眺める事しかできない私と違い、南ちゃんは毎日のように出掛けては、その日あった出来事や悩み事を話してくれる。
私は世間知らずだから、うんうんと頷くだけ。
それでも南ちゃんの話を聞く時間は楽しかった。
私は南ちゃんが大好きだ。
南ちゃんも、「こんな話するの、ぴーちゃんだけだよ」と言って笑ってくれる。
私たちは一番の友達だった。
だが、そんな関係も終わりに近づいていく。
南ちゃんは高校生になった頃から、あまり話しかけてくれなくなった。
たまに、ふと目が合えば、「ぴーちゃん、あのね」と、悲しそうな顔をした南ちゃんが悩み事や愚痴をこぼしたが、楽しそうに話す南ちゃんの姿はどこにも見つからなかった。
ついには、いつ最後に、南ちゃんの話を聞いたか分からなくなるほどだった。
とても寂しかったが、どうしたらいいのか分からない。
私はというと、時の流れに身を任せ、ゆらゆら揺れる事しかできない。
南ちゃん。私の大事な南ちゃん。
このまま、私の事、忘れていってしまうの?
寂しい月日を過ごしたある日、南ちゃんが突然、久しぶりに、話しかけてくれた。
「ぴーちゃん、久しぶり。昔はよく、2人で話してたよね……と言っても、私が一方的に話しかけてただけな気もするけど……。私、ぴーちゃんには沢山救われたよ」
ああ、南ちゃん、私の事、忘れていなかったんだね。
嬉しい。私も、南ちゃんのおかげで外の世界を知れたんだ。
「けどね、ぴーちゃん……。私、もう、疲れちゃった」
うんうん、南ちゃんは頑張り屋さんだもんね。いつもそばで見守っていたから知ってるよ。
「だからね、ぴーちゃん……。私、もう、楽になってもいいかな……?」
うんうん、頑張り過ぎるのは良くないよ。ゆっくり休んで。
「……ぴーちゃんはいつも、私の事、肯定してくれるよね。そんなところに救われた……大好きだよ、ぴーちゃん」
嬉しい!私も南ちゃんのこと大好きだよ。
私たち、ずっと一緒だよね。
南ちゃんは今、私と同じように部屋でゆらゆら揺れている。
私もいつものように、太陽の光を吸って、窓辺でゆらゆらと揺れている。
同じで嬉しいはずなのに、南ちゃんが話しかけてくることは二度となかった。




