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白石真理子は、いつものように静かな休憩室で佐藤に事情を話した。
「先月から離島で診療している患者さんが妊娠しているんですが、性交渉の経験がないと言うんです。検査も正確で…どう考えても医学的には説明がつかないんです」
佐藤は一瞬、眉をひそめたが、やがて苦笑いを浮かべて言った。
「それって、もしかして誰かにからかわれてるんじゃないか?」
白石は驚いた顔で見返す。
「そんなことはないと思います。彼女は真剣ですし、検査結果も間違いありません」
佐藤は腕を組みながら軽く肩をすくめた。
「まあ、医学の世界でも不可解なことはあるけど、現実には起こりにくい話だよ。何かの誤解かもしれないな」
白石は心の中で静かにため息をついた。