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診療所の外、柔らかな潮風が頬を撫でる夕暮れ時。
白石真理子は島の住民が集まる小さな商店に足を運んだ。
「こんにちは。白石です。瑞稀さんのことを少しお伺いしてもよろしいでしょうか?」
年配の女性店主に声をかける。
女性は一瞬目を伏せたが、やがて慎重に口を開いた。
「瑞稀さんか…静かな子じゃ。最近、何かあったのかね?」
「何でもないとは思いますが、体調が変わったと聞きまして」
白石は穏やかな声で続ける。
女性は小声で言った。
「島ではあまり話さないほうがええ。噂はすぐ広まるからのう」
「わかっています。私も慎重にしています」
白石は微笑みながら答えた。
「でも、もし何かあれば、私たちも力になりたいと思っています」
白石はその言葉に、島の人々の優しさと同時に深い警戒心を感じ取った。