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白石真理子は診療所の簡素な検査室で、瑞希のカルテをじっと見つめていた。彼女の瞳には疑念と困惑が交錯している。
「瑞希さん、あなたの話は信じたい。でも医学的には説明がつかない現象です」
白石は言葉を選びながら告げた。
「私も信じられません。ただ、検査はすべて正確でした。私もずっと戸惑っています」
瑞希は俯きながら答えた。
白石は何度も検査結果を見返した。
「こんなことが起こるはずがない……でも、データは揺るがない」
白石は小さくため息をついた。
「このことは島の人たちには、まだ話さないほうがいいと思う」
瑞稀が震える声で言った。
「噂が広まれば、あなたがさらなる孤立を感じるかもしれない。私もその気持ちはわかるわ」
白石は優しく頷きながら続けた。
「だから、今は私とだけでこの問題に向き合いましょう。誰にも話さず、慎重に調べる必要があります」
瑞稀は深く息をつき、うなずいた。
「わかりました。誰にも言いません。お願いです、助けてください」
二人は静かに約束を交わした。