1/84
1-1
初めての投稿です
よろしくお願いいたします
妊娠、出産、流産などの話が含まれています。
読む際はご注意ください。
自分の中に、もう一つの鼓動がある――。
そのことを瑞希は、診察室の薄暗い光の中で知った。
「妊娠しています」
医師の口から放たれたその言葉は、乾いた空気の中で重く沈み、瑞希の耳を鈍く打った。
頭の奥で、理性が否定を繰り返す。
ありえない。
私は……そんなこと、していない。
椅子の背にもたれたまま、呼吸が浅くなる。医師はカルテを閉じ、同情とも困惑ともつかない目で瑞希を見つめていた。
「間違いじゃないんですか」
やっとの思いで口を開くと、医師は静かに首を振った。
「血液検査も超音波も、すべて一致しています」
その瞬間、窓の外で海鳥が甲高く鳴いた。
瑞希は目を閉じた――。
なぜ、こんなことが起こるのか。
この鼓動の正体は、何なのか。