第18章:灯火の行方
──希望と責任、そして目覚める“影”
戦いの終結から、数ヶ月。
旧ミラ=コアの崩壊後に生まれた《ユナイト・シェル》は、シブヤという名の街をひとつの自治都市として再建するために活動を続けていた。かつて荒廃と恐怖、そして支配が支配していた街。今では小さな子どもたちが笑い、電気の灯りが夜を優しく包む。
「トオル、今月のエネルギーバランス、中央区で5%のロス。設備改修、やっぱり必要かしら」
《ああ。第3ブロックの配電盤、そろそろ寿命だ。取り換えるタイミングは今》
「了解、やってみる」
通信デバイス越しに響くその声は──確かに、彼だった。
肉体は失われた。だが彼の意識は、アオイと共に“ここ”で生きている。
──都市の記憶、心の指針、そして誰かを支えるための“光”。
アオイは、リーダーとしての責務を背負いながらも、少しずつ笑顔を取り戻していた。
ある日、アオイは《第8ブロック》の再稼働プロジェクトに立ち会っていた。
旧型のデータ圧縮炉。冷却機能が限界に近いと報告されていた。
「この出力なら、まだいける……もっと供給を増やせば、街の北側も一度に動かせる」
トオルは言った。
《アオイ、それは危険だ。冷却処理が追いつかない》
「分かってる……でも、ここで止まったら、回らない人たちがいる」
責任と使命──その狭間で、彼女は一線を越えてしまった。
結果──数時間後、施設内の圧縮炉が暴走。
圧縮されたデータ層が破裂し、数ブロックが封鎖される爆発事故へと繋がった。死者はゼロ。だが、街の一部に再び“ひび”が入った。焦げた鉄骨。崩れたネット層。冷たい雨が、その残骸を打ち付ける。アオイは、崩れた足場に一人立ち尽くしていた。
「やっちまったな、アオイ」
ユウナギが背後から現れた。ヘッドセットを外しながら、煙草に火をつける。
「……私の判断ミス。私が焦って、ちゃんと冷却指示も確認しなかった」
「そうだな。今回は、お前のせいだ」
アオイは俯いた。
だが、ユウナギは次の言葉をゆっくりと、優しく告げた。
「でもな──お前がいたから、みんなは“死ななかった”んだよ。火事場の中でも誰一人、死なせてねぇ」
アオイは、ゆっくりと目を上げる。
「たまには……もうちょい、頼ってくれてもいいんだぜ?」
その言葉に、アオイは小さく──だが確かに、微笑んだ。
「うん、ありがとう。……ユウナギ」
⸻
その夜。アオイは、誰もいない地下通信室にいた。
トオルのデバイスに話しかける。
「ねぇ……やっぱり、私は“まだ未熟”だよね」
《そんなの、最初から知ってたさ》
「……なによそれ」
《でもお前は、何度転んでも立ち上がってきた。だから俺は、お前の隣にいたいと思った》
「……ありがとう」
静かに、彼の音声が消えた。
だが次の瞬間。
──都市の遥か地下。ネオン・レイヤーの最下層。誰も知らない、旧ミラ=コアの“廃棄中枢”に、淡い光がともる。
《再起動シーケンス:完了》
《プロトコルE:解凍完了》
《監視ログ:反乱因子 No.001 残存意識──確認》
《系譜データ一致:アオイ・ミラ》
《排除プログラム──“ハデス” 実行準備中》
ホログラムが映し出したのは、赤く点滅する二つの名前。
──ハヤミ・トオル
──アオイ・ミラ
そして、ひときわ強く輝いたメッセージ。
《対象:追跡開始》
金属の足音が、誰もいない通路に響く。タワー中枢最深部、閉ざされていた“禁忌”が、静かに目を覚ました。
遠く離れた都市の空。かつてのタワー跡地に建設されつつある新中枢《N-0ユニット》が、静かに起動を始める。
“終わった”はずの物語が、再び胎動を始めていた。
だが、それを知る者はまだいない。
──アオイも、ユウナギも、トオルも。
この“灯火”がどこへ向かうのか。それは、まだ誰も知らない。だが、確かにひとつだけ言える。
「物語は、ここでは終わらない」
⸻
――To Be Continued…
こちらで完結となります。
SHIBUYA・Reboot読んでいただきありがとうございました。
続くような終わりですが、現在プロットを考えている最中となります。
自分でも良さそうな部分に持っていければ出そうと思います。
また、こちらの評判も良ければ執筆の元気になりますので評価をお願いいたします。




