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第4話 村の剣術指南役

今回は短いです。

アイザックとヴァールの戦いは表向きには両者拮抗の引き分けで終わった。しかし当然ながらやりあっていた本人はアイザックがそう見えるように動いてくれていることを理解している。それは途中から本気で挑んでいたヴァールを軽くいなせるほどの実力がアイザックにあるという証明でもある。

/////

「いやあ!いいものを見させてもらった!まさかこんな辺境の村にまだこれほどの達人が眠っていようとは!どうですか!今からでもダロン伯爵家の剣術指南役になりませんか!」

「それはぜひ俺からもお願いしたいですね!アイザックさんと戦っていると自分の弱点が浮き彫りになりどのように改善すればいいかがすぐにわかりました!俺はあの一戦だけで確実に実力が向上したのがわかります!ぜひ我々に指導してください!」


アイザックがダロン伯爵とヴァールから剣術指南役の勧誘を受ける。


「嬉しい申し出ですがお断りいたします。儂は農家という仕事を気に入っておりますし儂にはその役は分不相応すぎるかと」


アイザックは2人からの勧誘を断った。


「そうか。それは残念だ。だが不思議とアイザック殿ならそう言う気がしていた。 おっとそうだ!忘れるところだった」


そういってダロン伯爵が部下に持ってこさせたのはお金の入った袋だった。


「ガルザーグは危険度Bであり相当な懸賞金がかかっていますからな。念のために持ってきておいてよかった」


ズシリ


そういってアイザックに懸賞金を渡すダロン伯爵。アイザックはその中身を見て震え上がる。


「こ、こんなに大金を……」

「それほどの相手を討伐したということだ。アイザック殿は」


それから少しの会話で帰っていったダロン伯爵たち。残ったのはケガから回復した村人たちと懸賞金としてもらった大金だった。


「ほっほっほ。よかったのうアイザック。そのような大金は中々おがめんぞ?」

「いらんよこんな大金。 これほどの大金をもらったところで困るだけだ」

「まったく。欲のない奴だ」


結局はアイザックはその大金を信頼する村長に渡すことにした。今回の山賊の襲撃によって様々な問題が発生したのでそれにお金を使ってほしいという名目で。大金を持ったところで使い道のない己が持っているよりもこのほうがいいと判断したため。


「……ふう……」


貴族の相手で緊張していたアイザックは息を吐き自宅へと帰ろうとしたときに今まで我慢していた子供たちに囲まれた。


ダダダダダダダダ!


「アイザックじいちゃんすげえ!」

「アイザックさんかっこよかった!」

「俺にも剣を教えてくれよ!アイザックじいさん!」

「僕も僕も!」

「私も!」

「あ!ずりいぞ!俺が教えてもらおうとしたのに!」


アイザックを囲んでアイザックの取り合いで喧嘩をしだす子供たち。


「これこれ。そんなことで喧嘩をするでない」


子供たちを宥めるアイザック。すると、今度は子供だけでなく大人までやってくる。しかしその表情は覚悟を決めたような表情で。


「アイザックさん。ぜひ我々にも剣術を教えて欲しい」

「我々は分かっていなかった……この世界の危険性に……強さがなければ大切なものが守れないということに……」

「……あなた……」


その言葉に多くの大人たちが悔しそうに涙を流す。今までこの村は安全だった。山賊などはやって来ず魔物も狩人が討伐できる程度の強さと数のみ。

しかしそれはこの世界の治安の悪さからしたら奇跡でありだがそんな奇跡も今回で崩れ去った。


「アイザックさん……改めて娘を助けていただいてありがとうございます」

「ありがとうございますアイザックさん」

「ありがとう」


それはアイザックが助けたオーリーという女の子の家族だった。父親の名はサジェルで母親の名はエルル。


「サジェル……お前までか……」

「アイザックさんがいなければ娘は殺されていたと思います……本当は俺がオーリーを守らないといけないのに……」

「お願いします!私たちが剣術を習っても強くなれないかも知れません!でも!なにも出来ずに娘が目の前で殺されそうになってるのをただ眺めていることしかできないのはもう嫌なんです!」


周囲を見ると村の全ての大人たちがアイザックを見て頭を下げる。


「「「お願いします!アイザックさん!」」」


ここまで言われれば"まだ剣を握ってから1ヶ月も経ってない素人だから"とか"教えれるほどの知識がない"とか言えなかった。


「ふう……儂も素人……どれほど教えられるかはわからんが……それでもよければ」


結局は村人の申し出を受け入れたアイザック。これがキッカケで剣術チート村が誕生する。

読んでくださりありがとうございます!


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