第8話 そんな彼女の友達は頼もしい
俺は今日も、クラスで一歌を眺めている。
今日もギャル3人で集まって楽しそうだ。
ずっと縁のない世界だったけど、ああいうのもいいなあ、と思うようになった。
ま、聞いてる限り、〜が付き合ったとか、〜がカッコいいとか、そんな話ばかりなようだ。なかなかに薄っぺらい。
すると、クラスメートの相葉が話しかけてきた。
「あいつら、頭の中身、男のことしかないよね」
かつての俺も同じように思ってた。
でも、結構、いい子だぞ。
向こうでは、一歌の友達の愛が、一歌に色々と聞いているようだ。
「一歌、男できた? いつも待ち受けみてニヤニヤしてるし。最近、メイクも変えてるっしょ?」
待ち受けって、俺の寝顔なんだが。
一歌は言い返した。
「そんなんじゃないし。メイクも、飽きてきたから変えてるだけ」
「ふーん。でも、あんた、最近、男に誘われても全部断ってるじゃん。前は……もご」
一歌は愛の口を塞いだ。
一歌、まだナンパ男に声かけられてるのか……。仕方ないことだけど、少し胸がざわつく。
愛は一歌の手を外した。
「っ、何すんだよ!! でも、アタシは、最近、落ち着いてるみたいで安心してるの。んで、どんなヤツなの? ま、まさか、あっちでウチらの悪口言ってるモブ男みたいなのじゃないよね?」
正解は……そのモブなんですけどね。
一歌は、身振り手振りで訴える。
「そ、そんな訳ないし。全然、タイプじゃないし。でも、ああいうタイプも、少しは良いところがあるというか」
愛は目を細めた。
「ふーん。その人のこと、そんなに気になるんだ? ま、なんにせよ。親友としては嬉しいよ。ほれほれー」
愛は一歌をくすぐっている。
あの愛って子もいい子だよな。
一歌のこと、本気で心配してるのが分かる。
まあ、怖いけど。
昼休みに俺が1人で昼飯をしてると、愛に声をかけられた。
「ちょっと、話があるから体育館裏にきてもらえる?」
おれは購買のパンをかっこむと、体育館裏に急いだ。
それにしても、いったい何の用事だろう。
体育館裏に呼ばれるなんて、告白か恐喝に相場は決まっている。
ま、後者か。
でも、愛も、結構、美人だし。
もし、告られたらどうしよう。
ドキドキ。
体育館裏につくと、愛は先に待っていた。
(ギャルって言っても、みんな時間にルーズなわけじゃないらしい)
「おそい」
愛は俺に気づくと言った。
「すいません……」
ドンッ!!
(ひっ)
愛は壁ドンすると、俺を睨みつけた。
「お前。一歌と付き合ってるの?」
え。なんで知ってるんだ?
でも、言って良いのかな。一歌、さっき必死に否定してたし。俺みたいなのと付き合ってるとか、内緒にしたいんじゃないか?
「……お前には関係ないだろ」
「はぁ?」
愛は俺を威嚇するような声を出した。
おれ、死んだわ。
愛はドスのきいた声で続けた。
「関係あるから聞いてるんだろ!! まぁ、自分で確かめるからいいわ」
そう言うと、愛は唇を押し付けてきた。
愛は舌を入れてくる。
……生まれて初めての女の子の唇は、思ったより甘くて、優しい味だった。
くちゅ……。
って、満喫してる場合じゃない。
俺は愛の肩を押し返すと、身体を離した。
「はぁ。なにすんだよ!!」
なぜか愛の頬は赤かった。
「はぁ、はぁ。……いや、アタシも実はアンタ気に入っててさ。あそこの準備室、誰も来ないから。セックスしない?」