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【完結済】モブの俺。クラスで1番のビッチギャルに告白される。警戒されても勝手にフォーリンラブでチョロい(挿絵ありVer)  作者: 白井 緒望


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第75話 そんな彼女は庇護欲が強い。

 「はい。コレ」


 一歌に、巾着に入った弁当箱を渡された。


 「え?」


 「今日から作るって決めたし」


 (今日は午前で終わりなんだけどな)


 


 今日から新学期。

 初日は始業式と掃除で終わりだ。


 だから、午後の授業はないのだが、なぜかお弁当を渡された。


 「2学期から、蒼くんとのこと隠さないって決めたし」


 ……と、言う事らしい。


 でも、少しだけよそよそしい。

 夏休みが甘々すぎてそう感じるのだろうか。


 「あ、そういえば、先生の後任はどうなるんだろうね」


 「……さぁ」


 やはり、今日の一歌はよそよそしい。



 始業式の様子は前と変わらなかった。

 相変わらずのグループにわかれ、1学期の続きを過ごす。


 中には、夏休みで変わったヤツもいるが。


 

 「よぉ。やっぱ、彼女がいるのって最高だよな」


 その中の1人が隆だ。


 夏休みに、美桜とヤッたからだろう。

 額がツヤツヤして、やけに自信に満ち溢れている。


 「早くお前らもセックスしろよ。なんていうの? 別の世界が見えてくるっていうか?」


 うぜぇ。

 ちょっと前まで、この世の終わりみたいな顔をしてたくせに。


 「いや、俺らは、急いでないし」


 俺らは、ゆっくり。

 順を追ってでいいと思っている。


 「いやさ、美桜の体、最高でさ。うまいし」


 (そりゃあ、間男と短期集中20発の強化合宿やってれば、上達もするだろうよ)


 でも、そんなつっこみは入れない。俺の優しさに感謝してほしいくらいだ。


 ま、何にせよ、凹んでるよりは良い。

 隆が絶好調すぎるのは腹たたしいが。


 「練習したいなら、美桜、貸してやろうか?」


 っっ。調子乗りすぎだ。

 有頂天になる気持ちも分かるが。


 「お前、冗談でも、そういうこと言わない方がいいぞ」


 「じ、冗談だよ。怖い顔するなよ」


 単純にムカついた。


 いや、気持ちは分かるんだ。

 ちょっと前までは女と無縁だったのに、急に可愛い彼女ができたのだ。自慢のひとつでもしたくなるだろう。


 だから、本当に貸し出そうなんてつもりは、毛頭ないのは分かっている。でも、美桜に聞かれたら……。


 「おまえさ、それ、美桜ちゃんに聞かれたら一発アウトだぞ?」

 

 そして、もし、そんなことになったら、一歌と俺にまで、とばっちりが来かねない。



 一歌は庇護ひご欲が強い。最近は、すごく実感している。美桜の件でもそうだが、要は「トラブルに首をつっこみたがる良い奴」なのだ。


 一見、冷めているし、本人も「そんなことないし!!」とか言っていたが。



 先日、なぎさ先生と話しができて、去年の一歌について教えてもらった。


 どうやら、一歌がクラスから爪弾つまはじきにされたのには、キッカケがあったらしい。


 電話口で先生は言った。


 「いやさ、僕があまり色々言うのもなんどけどね。僕は一年の時は担任じゃなかったから、あくまで聞いた話なんだけど……」


 「ってか、先生、同僚に友達いたんですね」


 「……。もう、電話きって良いニャン?」

  

 相変わらず、先生の声でニャンされるとキショいぜ。悪い人じゃないんだけどね。こう言うところなんだろうな。


 「いや、嘘です。続きを聞かせてください」


 「実は、一年の時、一歌くんと同じクラスの子がイジメられていたんだよ」


 それは、文字通りの露骨なイジメで、噂、暴力、陰口などのフルコースだったらしい。


 イジメのキッカケはよく分からないが、その子は容姿がよく、他の子とつるむのを好まなかったという。


 だが、それがある生徒の目障りになった。


 そして、気づけばイジメのターゲットになっていた。


 「でも、それがどうして一歌の話と繋がるんですか?」


 「その子はね、友達がいなかったから、守ってくれる人がいなかったんだよ。そこで、一歌君がかばったらしい」


 あぁ。

 なんかその場面が目に浮かぶようだ。


 「それで、その子に目をつけられたと?」


 「うん。しばらく学校は黙認していたんだよ」


 典型的な事なかれ主義だ。


 「しばらくは?」


 「そう。でもエスカレートして、ある時、その子のハメ……、……こほん、いや、卑猥な画像が出回ってね」


 「それはさすがにまずいでしょ」


 「ああ。大騒ぎになって、外部に漏れる前に学校としても介入せざるを得なくなった」


 「そいつら、今はどうしてるんですか?」


 そんな頭おかしいヤツらが、まだ同じ学校にいるってことか?


 「学校も相当に問題視してね。直接にイジメてた子達は、自主退学」


 「じゃあ、もう一件落着なのでは?」


 「それがね。背後で、その子達を動かしていた子がいるんだよ。その子は賢くて、巧みにクラスの空気感を扇動して、イジメが自然に起きるように誘導したんだ」


 「そんなことできるんですか?」


 「あぁ。藍良くんは、2:6:2の法則って知っているか?」


 「働き蟻の法則ですよね。アリンコを10匹箱に入れると、働き者2、普通6、怠け者2になるとかいうやつ」


 「そうそう。10匹とも平和じゃ収まりが悪いんだよ」


 「イジメにおきかえれば、人間は、本能的に、常にイジメられる2匹を求めているということですか?」


 「そうだね」


 「人間って最悪ですね。でも、もし、イジメる理由がなければ?」


 「「勉強できるからって調子にのっている」っていう感じで、適当な理由をこじつけられるのさ」


 さすが先生。攻撃される専門家だ。

 言ったら電話切られるから言わんけど。


 「で、それは誰なんですか?」


 「その一件で退学になったのは3人。でも、当初、調査の対象になったのは4人だった。しかし、処分を決定する前に、その中の1人の保護者が怒鳴り込んできて、残り1名は不問になったんだ」


 「あの。学校の決定って、そんな事で変わるんですか?」


 「普通はならない。だけど、その保護者っていうのが教育問題の専門家で、教育委員会……ひいては文部科学大臣にまで口をけるような人物ともなれば、話は別だ」


 あれ。

 どこかで聞いた事があるような話だぞ。


 「その保護者とは?」



 「北村 れい。……雅さんの母親だ」

 

 

 

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