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【完結済】モブの俺。クラスで1番のビッチギャルに告白される。警戒されても勝手にフォーリンラブでチョロい(挿絵ありVer)  作者: 白井 緒望


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第73話 そんな彼女はゲーム内でもしたくない。

 

 あいしゃは地面にいつくばった。


 「兄貴。ヤバい……。詰んだ」


 すると、一歌(キャラクター名:いちか)は、あっけらかんとした様子で言った。


 「これって、このおばさんに、やっぱやめますって、言えばいいんじゃないの?」


 そんな簡単にいくなら伝説のクエストにはなっていない。


 「試してみな」


 俺がそう言うと、いちかは、NPCに話しかけた。


 「そうくん、この人、やめますってしても、『そんなこと言わないで、もう一度考え直して下さい』ってなって、進めないの……」


 「受注したら最後、クリアするまで抜け出せないんだよ、このクエスト」


 このクエストは取りやめができない。

 運営会社は「仕様」と言っているが、十中八九は放置されたバグだろう。


 「えええーっ、どうするの? わたし、ずっとこの村から出られないの?」


 「だろ? だから、あまたの初心者を引退に追い込んだ伝説のゴミクエストなんだよ」


 しかも、このクエストには、この後、人生ハードモードな展開が待っているらしい。やめることすらできず、進んでも詰みなのだ。


 いちかは手を叩いた。


 「あっ、これはこのままにして、他のクエスト受けちゃえばいいし♡」


 あいしゃ(愛紗のアバター名)は、いちかの肩を叩いた。


 「それがの。新米冒険者は、クエストを一つしか受注できないのじゃ」


 「これを終わらせないと、どうにもならないってこと?」


 「そういうことじゃ。ただ、前衛2人と魔法使い、ヒーラーの組み合わせだったことは僥倖ぎょうこうじゃ」


 「ねぇ。蒼くん、あいしゃちゃん、どういうこと?」


 一歌にはネットリテラシーという概念はないらしい。この人、さっきから、俺を普通に本名で連呼してるし、俺が積み上げてきたネカマとしてのアイデンティティが台無しなんですが。


 あいしゃが割って入った。


 「いちかちゃん……まあ、そうた以外は、みんなキャラ名も下の名前だから問題ないじゃろ」


 みんな本名なら、なおさら問題かと。

 それに、そうたって誰だよ。


 「んで、なんだっけ? うちらのジョブの組み合わせならクリアできるの?」


 俺の問いに、あいしゃは答えた。


 「基本、このクエストは、ほぼクリア不可能なんじゃが、クリアできた数少ない者たちは、前衛2後衛2の組み合わせなんじゃよ」


 いちかは、くるりと回った。


 「じゃあ、余裕だし♡」


 いちかはそう言っているが、攻略情報があるにもかかわらず、みんなクリアできていない。それって、全く余裕ではないと思う。


 あいしゃは続ける。


 「ただし、問題があってな、にゃん娘ヒーラーがな……」


 「もしかして、わたしってば、ヒーラーなのに回復できないの!?」


 いちかは首を傾げた。


 「いや、できるんだがな。近接回復魔法なんじゃよ、百聞は一見にしかずというしな。自分のスキルの説明文を見るが良い」


 いちかは説明文を読み上げる。


 「ええと、ニャンコヒールは、ネコ達が怪我を癒し合うように、患部を直接ペロペロと舐めることで回復させます」 


 なにその無駄にリアルな設定。

 

 にゃん娘ヒーラーは、近接回復職なのだ。ちなみに、ここでいう近接は肉弾戦という意味ではない。回復するために対象と接近する必要があるということだ。


 なかなかに尖っている。  


 いちかは続けた。


 「ええっ。じゃあ、そうくんが股間を怪我したら、股間を舐めてあげないといけないのぉ??」


 「なんで具体例が股間なのか分からんが、……ま、そういうことだ」



 「ちょっと、恥ずかしい♡」


 俺の横にいる現実の一歌は、少し嬉しそうにしている。


 「ねぇ。蒼くん。あたし、平気だよ? ゲーム内のことだし」


 「ゲーム外はイヤなの?」


 「ん。ゲーム外なら、むしろ嬉しい♡ あのね。もし、そうなったら、すぐに終わっちゃうのイヤだからね?♡」


 ん、これって。

 股間の話が続いてるんだよね?


 だったら、童貞にそんなコントロールができる訳がない。


 「ちなみに、どれくらい我慢したらいいの?」


 「んと、30分くらい?♡」


 30から0を1つ減らしても無理そうなんだが……。


 「はやいとイヤ?」


 「蒼くんなら、それも可愛い♡ 本番で頑張ってくれれば♡」


 本番って……(笑)

 やけに生々しいな。


 ま、準備運動で頑張れない人が、本番で頑張れるとは思えんが。


 あれ。

 俺、一歌とこういう話をしても、前ほど妬いていない。


 もしかして、おれ。

 将来は、色々と聞き出してよろこべる、立派な紳士になれるのだろうか。


 

 「……こほん。目の前であまりイチャコラされても困るのじゃが」


 愛紗にたしなめられてしまった。

 今の愛紗は少しだけ大人っぽい。


 愛紗は続ける。


 「それよりも、攻略上の問題があるじゃろ?」



 そうだ。

 この仕様には、現実的な問題があるのだ。



 「でもな……」


 俺がそういうと一歌は首を傾げた。


 「ん?」


 「愛紗が怪我をしたら、舐めてあげられるか?」


 一歌は右手の人差し指で唇に触れた。


 「んー。蒼くんの妹ちゃんだし、いずれ家族になる子だもん。できるっ」


 さて、問題の核心のお時間だ。


 「じゃあさ、なぎさ先生♂は? 見た目だけは、にゃん娘の女の子だぞ? 舐めれるか?」


 「えっ。でも、中身、思いっきり男の人じゃん。しかも、おじさんになりかけ……。そういう対象じゃないっていうか、ゲーム内でもちょっと……」 

 

 一歌は、真顔で続けた。


 「ちょっと、無理かもっ」

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