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【完結済】モブの俺。クラスで1番のビッチギャルに告白される。警戒されても勝手にフォーリンラブでチョロい(挿絵ありVer)  作者: 白井 緒望


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第72話 そんな彼女はゲーム内でもいたしたい。

 バイブス上がりまくりだが、両サイドの女子が暑くてベタベタする。


 先生を放置しすぎたらしく、通話がきた。


 「先生を放置しないでにゃん」


 ドス低い声で繰り出されるニャン語は、パンチ力が半端ない。おかげでテンションだだ下がりで、平常心に戻ることができた。


 「先生、にゃん語には本気で気をつけた方がいいですよ。彼女さんに聞かれたら、100年の恋も冷めますから。まじで」


 先生がうるさいから、とりあえず、一歌のキャラを作ることにした。


 「種族は何がいいの?」


 すると、一歌は首をかしげた。


 「種族って?」


 そうだよな。


 エルフだったり、ドワっ子だったり。

 そういうのって、俺は、知っていて当然な気がしていたけれど。本来はRPGに慣れてる人の共通語なんだもんな。


 大体は、ワールドで実際に他のプレーヤーを見かけて好きになるもんだし。


 さて、どうしたものか。


 「あ、これ、可愛い♡」


 俺が迷ってると、一歌が適当に決めてしまった。


 「一歌、これ……」


 「可愛いでしょ?」


 画面に映し出されていたのは、獣人族のにゃん娘(猫娘)だった。


 「蒼くん、ジョブってのは、どれにしたらいい?」


 俺と先生は近接戦闘職、愛紗はウィザード。足りないのは回復か。


 「バランス的にはヒーラーだけど、にゃん娘のヒーラーは……ちょ、待って」


 次の瞬間、一歌はヒーラーを選択していた。


 このゲームでは、種族ごとに基本ステータスが変わる。そして、獣人族は、総じて魔力が低い。その代わりに、力や俊敏性が高いから、近接戦闘職向けだ。


 また、ヒーラーはいずれかの神を信仰しなければならないが、人間にしか信仰を許していない宗派も多い。


 にゃん娘ヒーラーは、魔力が低い上に、信仰神が、かなり限定される。そして、にゃん娘ヒーラーが信仰できる神が登場するのは、獣人国……、ある程度、ゲームが進んでからなのだ。


 それまでは、一種類のヒールのみで切り抜けなければならない。つまり、たとえパーティーのお荷物になっても居座り続けるタフさと要領のよさが要求される。そして、あまりの少なさ故、攻略情報もほとんど出回っていない。


 ……このゲームでは、やらかしNG例に出るような組み合わせ。いわゆる絶滅危惧種なのだ。



 愛紗の方を見ると、爆笑していた。


 「おねーちゃん、それ可愛い♡ にゃん娘ヒーラー最高♡♡ 気に入らなければ、作り替えればいいし♡」


 愛紗がそう言うと、一歌が答えた。


 「えへへ。わたしネコ好きだし」


 愛紗は嘘をついている。


 キャラは愛着がわくので、そうそう作り変えられるものではない。軽い気持ちでキャラを作り、文句を言いながらも、ずーっと何年もそのキャラで遊んでいる人を、俺は何人も知っている。


 「あとは、一歌。そのステータスシャッフルを押して」 

 

 一歌のキャラにランダムにステータスが付与される。


 「おおっ」


 すごい。神がかったステータスだ。ほぼ全ての項目が種族内でMAX。ま、知力は低いが。


 これ、回復魔法つかうよりも、杖で敵を撲殺した方が役に立つんじゃないか?


 「わたしのキャラ、すごい?」


 一歌が聞くと、愛紗がベタ褒めした。


 「す、すごいぞっ! 我も◯△オンライン歴はそれなりじゃが、一歌ちゃんと同じニャン娘ヒーラーさまは見たことがない。びっくりにゃ」

  

 そりゃあ、俺だって見たことないよ、こんな絶滅危惧種。たしかに、ある意味、すごいキャラではある。


 一歌も気に入っているし、ま、これでいいか。そんな本腰を入れてやる訳でもないだろうし。


 この時の俺は知らなかったのだ。


 この数年後、◯△オンラインで、ニャン娘ヒーラーのカリスマプレイヤーが誕生することを。



 ワールドにログインする。

 すると、風光明媚な眺めが眼前に広がった。


 タブレットを見つめる一歌の横顔はキラキラしていて、自分が初めてMMORPGゲームをした時のことを思い出した。


 「蒼くん、すごいぃ」


 一歌が手を握ってきた。

 たまには、ゲーム内デートもいいのかも知れない。


 一歌もなぎさ先生♂の話し方にはドン引きしていたが、なんとか合流して、ゲームを始めることができた。


 まずは、チャットチャンネル開放のためにも、クエストか。


 「愛紗、最初はどのクエストがいいとおも……」


 すると、一歌は、道ゆくNPC全員に話しかけて、ソーシャルアクションのお辞儀をしていた。


 「蒼くん、この人、無口なんだけど……。やっぱ、違う世界の人だから人見知りされてるとか?」


 いや、さすがにNPCは人見知りしないんじゃないかな。この人たちいないと、ゲーム進まんし……。


 そして、次の瞬間。

 一歌は迷子になっていた。


 「蒼くん、ここどこか分からないぃ」


 やばかった……。

 隣でやっていてくれなかったら、初心者村で今生の別れになるところだった。


 また迷子になっても困るし、4人でパーティーを組んでおくか。パーティーを組めば、クエストも同時受注ができて便利なのだ。



 気づけば、また一歌がいない。


 「蒼くん、この人、可哀想。お子さんが、お使いから帰ってこないんだって? いいよね? このクエスト受注というの押しても」


 「ちょ、待てぇぇぇ!!」

  

 3人で一斉に一歌を止めに入る。


 「え? もう受けちゃったし」


 そのNPCから受注できるのは、◯△オンライン史上、もっともクソと言われるクエスト。あまたの初心者を引退に追い込んだ、伝説の迷子クエストだった。

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