第57話 そんな彼女の親友はツンデレなのだ。
「お待たせ」
愛が戻ってきた。
俯くと、自然に腕を組んでくる。
ぷにっ。
膝に胸が押しつけられる。
Dくらいはあるのかな。弾力があって柔らかい。
女性の胸って、すごいと思う。
なんだか触れているだけで、安心するし癒される。エロを超越した存在だ。
ま、エロ界隈のメインディッシュでもある訳だが。
愛は、前髪を掻き上げると、桜色に染まった頬を露わにした。そして、小声でボソボソといった。
「さっきのありがと。純粋にすげー嬉しい。アタシ、ドキドキしてる」
愛は俺の右手首を握ると、自分の胸の谷間に持っていった。
本当だ。
外から触れても分かるくらい、ドキドキしている。それに汗ばんでいる。
「あのさ、空のやつまだ納得してないと思うし、まだ終わらせたくない。もう少し一緒に……、もう少しアタシといてくれないかな」
やばい。可愛い。
俺はツンデレの定義を間違えていたようだ。
『わたし、別にアンタのために試着した訳じゃないし!! ドキドキなんてしてないんだからっ!! 勘違いしないでよね!!』
俺はこんなのがツンデレだと……思ってた。
しかし、俺は養殖物のツンデレに毒されていたのかも知れない。口数少ない少女が、低めの声で不器用にデレてくれる。これこそ、天然物の真のツンデレなのではないか。
愛の攻撃力、ハンパないな。
これで処女なの?
世の中の男、バカばっかりだろ。
心臓がドキドキする。
油断したら、好きになってしまいそうだ。
「……聞こえてるんだけど」
すると、愛がそう呟いた。
愛は真っ赤な顔をして、潤んだ瞳で俺の方を見ている。愛と俺の身長差は10センチ程しかない。だから、ヒールの高い靴を履くと、俺と愛の唇の高さは、ほとんど同じだ。
やばい。
いつのまにか、思ったことが口から出てたっぽい。
どこだ?
どこから聞かれた?
……自分でも分からない。
愛の唇が近づいてくる。
俺の歯に、愛の吐く息があたっている。甘ったるいピーチの香りがする。
ぷるんとした唇が、目の前で開くのが見える。
「ねぇ。あんたも、アタシを処女のまま放置するバカなの?」