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【完結済】モブの俺。クラスで1番のビッチギャルに告白される。警戒されても勝手にフォーリンラブでチョロい(挿絵ありVer)  作者: 白井 緒望


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第47話 そんな彼女の校内捜索。


 空気感は怖い。

 ソレは、目に見えずに形もないが、人を簡単に圧死させるほどの重量を持っている。


 俺は怖いのだ。

 ソレはいつか、優しく美しい俺の彼女に嫉妬の牙を剥くのではないか。


 …………。


 

 「わたし、職員室にいってヘルプ呼んでくるっ、蒼くんは探すのをお願い」


 一歌に言われ、俺も席を立った。


 「北村さん、俺も探してくるから、北村さんは反対側をお願いします」


 すると、北村さんは、黙って頷くと、優雅な動きで筆記用具を片付けはじめた。



 俺は教室を飛び出した。


 (あの緊迫感のなさ。北村さん、お嬢様ってホントなんだな)



 夏休みの学校は、汗ばむほど、ひんやりしていて、誰もいない。


 今日に限って、部活のやつらもいない。


 階段裏、屋上、体育館裏。

 俺はあてもなく学内を探したが、先生を見つけるのことはできなかった。


 (クソッ)


 すると、ふと自分の時の記憶が蘇った。

 俺も昔、辛い時は……たしか。


 

 トイレだ。

 先生は、きっと、トイレにいる。


 「はぁはぁ……」


 くそ。普段、運動不足だからな。

 簡単に息があがる。


 「せんせー、いますかー?」


 男子トイレを探したがいなかった。

 残ったトイレは、女子用と来賓用のトイレだけだ。


 ガラッ


 俺は来賓用トイレの引き戸を開けた。

 来賓用のトイレは男女共用で中には個室がいくつかある。中に入ると、扉のひとつが閉まっていた。


 トントン。


 ノックをしたが、出てこない。



 「せんせー、いませんかー?」


 すると、中からすすり泣くような音が聞こえてきた。


 「せんせー?」



 ドンッ。ドンッ。ドンッ。


 個室の中から何かを打ち付けるような鈍い音が聞こえてきた。


 (ヤバいんじゃ)


 「せんせー、入りますよ」


 俺は、パーテーションの上端に手をかけると、一気に自分の身体を持ち上げた。


 (これ、中に女性がいたら、俺、普通に捕まるやつだよね)


 上半身を乗り上げるようにして、中を覗いた。

 

 すると、先生が頭から血を流しうずくまっていた。壁には何かを引きずったような血の跡が残っている。


 俺はすぐに、スマホで一歌に連絡した。


 

 「先生。何があったんですか? とにかく、ここから出ましょう」


 先生は何も答えない。


 俺は無言の先生の両脇に腕を入れ、無理矢理に引き出した。


 「先生。何かあったんですか? 俺、秘密にするんで、話してくれませんか?」

 

 先生は何も言わない。

 先生は体育座りのようになり、俯いて、ただ歯を食いしばっている。


 俺には分かった。

 これは男の意地だ。


 壁に血痕をつけるほど辛くても、弱音は吐けない。これはそういう類の意地なのだ。


 だから、無理に聞き出すことができなかった。

 事情は分からないが、気持ちは痛いほど分かる。


 (とはいえ、このまま放置はできない。それに出血がひどい。……どうする?)



 

 「蒼くん、ダメ。他の先生いない。救急車呼んだから」


 一歌の声だった。

 一歌は、先生の様子と個室の血痕をみて言った。


 「蒼くん、ごめん」


 「え?」


 ごめん?

 どういう意味だ?


 次の瞬間、一歌は先生の正面にたち、膝を折ると、そのまま抱きしめた。

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