第4話 そんな彼女は疑問がわく
「蒼。わたし、テレビみていい?」
そういうと一歌はリモコンを手に取った。
一歌をみて思った。ついこの前まで他人同然だったのに、今は、こうして一緒にベッドでゴロゴロしている。
少し不思議で、少し楽しい。
一歌がリモコンを操作すると、画面いっぱいにAVが映し出された。女優さんが、リップサービスしていらっしゃる。
無言の部屋に、女優の嬌声が響き渡った。
すぐにチャンネルを変えるのかと思ったが、一歌はジーっと見ている。おれも興味はあるが、さすがに気まずい。
俺が席を立とうとすると、一歌が言った。
「ねっ、蒼もああいうのして欲しい?」
画面を見ると、女優が口技で男優に奉仕していた。
ごくり。
俺は唾を飲み込んだ。
して欲しいに決まっている。
その様子を見て、一歌はペロッと舌を出した。
「わたし、皆んなに言われるし、多分、うまいよ? 蒼のなら、飲んであげるし」
皆んなって、誰だぁぁ!!
なんか皆んなを集めたら、野球チームの1つや2つできそうなんだけど。
気になるけど、聞けない、
知りたいけど、知りたくない。
飲まれたいけど、飲んでほしくない。
人間って、矛盾だらけの生き物だ。
まあ、何でも上手いのは良いことだ。
でも、これは、生々しくて悲しい。
俺ならって、他の男にはしないってことなのか? 特別扱い? うーん……。
一歌、もしかして、他の男にもこんな話をしてきたのかな? だったら、たぶん、すぐ飽きられてフラれるぞ。
こんなに顔が整っていてスタイルもいいのに、一歌が付き合った相手と長続きしないのって、もしかして、フラれてるのか?
一歌は、急に何かに気づいたようだ。
「わたしまた、変な話して……ごめん。もう何も話さないから」
いやいや。この密室で無言になられても困るんだが。むしろ、なんでも良いから話してくれ。
しばらく沈黙の時間が流れる。
俺は耐えかねて、話しかけた。
「一歌」
一歌は眉をさげ、口を尖らせた。
「よびすて」
「あ、ごめん。じゃあ、一歌さん? うーん。いーちゃんとかは?」
一歌は、なぜかつま先を擦り合わせて、下を向いた。耳まで真っ赤だ。
「いーちゃん。。。なんかラブラブすぎて恥ずい。まだ早いっていうか、無理」
「じゃあ、なんて呼んだら?」
「……呼び捨てでいい」
なんだよ、結局いいんじゃん。
「じゃあ、一歌って呼ぶね。何か俺に聞きたいこととかある?」
一歌は少し間をおいて口を開いた。
「さっき、口でしてあげるって言ったらイヤそうな顔したじゃん? それって、やっぱわたしみたいなの汚いって思うとか?」
「いや、そんなことはないよ。ただ、緊張するっていうか。俺、初めてで。きっとうまくできないし……」
すると、一歌はニヤッとして、四つん這いで俺に近づいてきた。
「ふぅん。そんなこと気にしてたんだ。早くてもいいよ? またすぐにできるようにしてあげるから」
ごくり。
またすぐにって、どうするの?
気になる……。
「いや、そういう問題でもないし」
「そっか。やっぱ、わたしみたいなの不潔だよね。生理的に無理って思われてるのかな」
一歌は外見はいい。
顔も身体もつややかで、むしろ清潔感がある。不潔な印象なんて、皆無だ。
「いや、むしろつるつるしてて綺麗だよ」
「……そっか。まあ、いいけど」
なんだか微妙に拗ねてしまったようだ。
この子、斜めの方向に面倒臭いな。
その後は、またゲームをして過ごした。
一歌は下手なので、手を抜いても俺が勝ってしまう。しかし、何度もしているうちに、俺は眠くなってしまい、あくびをしている間に、一歌が勝った。
「やったあ!!」
一歌は嬉しそうに叫ぶと、俺に抱きついてきた。寝そべりながら、何度も俺に身体を擦り寄せてくるのだ。
このスキンシップ、……童貞にはしんどい。
「あっ!!」
一歌はビックリしたように声を上げた。
「どうしたの?」
「硬くなってるの……当たった……し」
あっ。
ガウンを覗き込むと、俺の暴れん坊は、すっかり臨戦体制になっていた。
コイツが一歌の身体に当たったらしい。
「ごめん!!」
俺が謝ると、一歌は後ろを向いた。
少し見える耳の裏が真っ赤になっていた。
「べ、べ、べつにいいし……むしろ嬉しいっていうか、生理的に大丈夫みたいで良かった……」
そう言う一歌の口元は、綻んでいるように見えたのだが。
……気のせいだろう