表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】モブの俺。クラスで1番のビッチギャルに告白される。警戒されても勝手にフォーリンラブでチョロい(挿絵ありVer)  作者: 白井 緒望


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/107

第35話 そんな彼女の祭りの後。


 一歌は答えなかった。


 花火がドンドンと絶え間なくあがる。

 でも、俺らは無言だった。


 一歌は、何度も両手を揉む様に握り合わせた。



 (もしかして、やらかしたか?)


 そう思うと、胸が苦しい。


 でも、やがて、一番大きな花火がドーンとあがり、その余韻に周りが静まり返った頃。



 突然だった。

 一歌の唇が、俺の唇に押し付けられた。


 柔らかて、甘くて、温かい。


 チュッ、チュッっと、小鳥がついばむように、何度も唇をくっつけてくる。


 その度に俺の頬は、一歌の涙で濡れた。


 やがて、少し落ち着いたのか。

 一歌は身体を離した。


 「あのね。わたしもス、ス……。ハァハァ。ス……」


 一歌はギュッと胸の辺りで拳を握っている。


 「ス……、ごめん。うまく言えない」


 今日の一歌は、他の言葉に言い換えたりしなかった。


 俺こそゴメン。

 急かすようになってしまった。


 でも、これは聞きたい。


 「……んで、告白の答えは?」



 一歌は恥ずかしそうに俯いた。


 「そんなの。……OKに決まってるし」



 俺は一歌と両手を重ねる様にすると、頷いた。

 胸があたたかくなる。

 

 一歌は彼女なんだから、これはただの確認だ。でも、そのOKは、俺自身がビックリするくらいに嬉しかった。


 「よかった。あ、チュウしちゃったよ? まだ3ヶ月経ってないのに」


 「すごく幸せで、気持ちが溢れたから良いの。わたし、蒼くんとチュウしたいと思った」



 幸せな気持ちが落ち着いた頃、俺は聞いてみた。だって、こんな盛り上がってる若いお2人さんが、これから同じベッドで寝るんだよ?


 男と女が2人で一夜を過ごす。

 することは、決まっているではないか。



 「もしかして、ゴムとか買って帰った方がいいかな?」


 俺はニヘラニヘラしていたらしい。

 一歌に頬をつねられた。


 「調子にのるなだし!! それにゴム要らないし」


 それって、前に愛に聞いたピルのことかな。

 俺に会う前から飲んでたんだもんな。


 ……少し複雑だ。


 「それって、ピル飲んでるとか?」


 一歌は首を横に振った。


 「ううん。飲んでない。蒼くんと付き合いだしてから、副作用とか色々読んだんだ。そしたら、ガンとか病気になるリスクあがるし、シミとかもできやすくなるって」


 「うん」


 「わたし、蒼くんとずっと一緒に居たいし、ずっと可愛いって思って欲しいから、飲むのやめたの。マッサージとかしたら、生理痛も軽くなったし」


 「じゃあ、なんでゴムなしでいいの?」


 「蒼くんの赤ちゃんほしい」


 これは、責任重大だ。

 おいそれと押し倒せないぞ。

 

 すると、一歌は続けた。


 「いや、いつもは外でいいよ? でも、もしできたら、嬉しいっていうか」


 何やら、表現が妙に生々しいのだが。


 「な、一歌。キス、いや、チュウか。俺からしてもいいの?」


 すると、一歌は頷いた。


 「そんなの当たり前だし。彼女だもん」


 

 宿に帰ると、オーナーさんが軽食を用意してくれていた。ここのペンションは規模が小さく、アットホームな雰囲気だ。


 俺らがサンドウィッチを食べていると、キッチンカウンターで作業していたオーナーさんが言った。


 「花火大会はどうでした?」


 俺と一歌は目を見合わせた。

 色んなことがありすぎて、正直、よく覚えていない。


 でも、感想はある。


 「最高の花火大会でした」


 「それは良かった」

 オーナーさんは笑った。



 「うん。よかったし♪」


 俺は、そう言う一歌の声に違和感を覚えた。妙に明るい。


 一歌は鼻歌を口ずさみながら、パクパクとパウンドケーキを口に運んでいる。


 んっ?

 俺までブランデーの匂いが漂ってきているぞ。



 「オーナーさん、これは?」


 「それね。自家製ブランデーケーキ。うちの自慢のデザートだよ。高校生には少し強かったかな?」


 「あ、いえ。大丈夫です……」


 一歌はフラフラしてる。

 この人、お酒に弱いのか。



 一歌の腕を支えて部屋に戻った。

 

 部屋に入ると、一歌をベッドに寝かせた。

 俺がシャワーを浴びようと立ち上がると、一歌に袖を掴まれた。


 「1人だけシャワーとかズルいし」

 

 「えっ」


 「わたし、そのままがいいし。早くちょーだい♡」


 ちょっとぉ。

 それ以上刺激されると、理性が吹っ飛びそうなんだけど。

 

 「いいの?」


 「うん。はやくぅ……」


 俺はキスをした。

 一歌の唇は、さっきより少しだけ熱かった。


 しかし、顔を離すと。



 「スゥスゥ」


 一歌は寝ていた。


 (ほんと、可愛い寝顔だよ)

 

 今日はハードだったもんな。

 俺も疲れたよ。もう寝ようかな。


 ベッドに入ると、一歌が身体をすり寄せてきた。無意識の割には、俺の腕の上に、ちゃっかり頭をのせている。


 生まれて初めて、俺の腕の中で女の子が寝ている。腕枕……、思ったよりも重いんだな。


 顔を少し持ち上げると、一歌の胸元がはだけて谷間が見えた。


 (揉んじゃおうかな……、いやでも、起こしたら悪いかな)


 しばらく葛藤したが、一歌の体温が心地よくて、俺もいつの間にか寝てしまった。




 ……ん。

 なにやら、くすぐったくて目がさめた。


 顔に一歌の息がかかる。

 どうやら、一歌は先に目覚めたらしい。


 目を開けづらくて。

 俺は、そのまま様子をうかがうことにした。


 「蒼くん。起きてる?」


 「……」


 すると、一歌は俺の手の方に移動した。

 左手の甲をなでなでしている。


 一歌、俺の手の傷をなでるの好きだよな。


 「痛いの痛いの飛んでけ♪」

 一歌は言った。


 なんだかいつもよりも、口調が優しい。

 やっぱり、俺の手の傷のことを気にしているんだろうか。


 今度は手のひらだ。

 触れられると、こそばゆい。


 一歌は、指先で俺の手のひらをツンツンしている。


 一歌がそのまま何か書きはじめた。

 子供の頃、手のひらに色々書いた伝言ゲームを思い出した。


 手のひらに神経を集中する。


 絵?

 いや、文字だ。

 これは……、カタカナかな。


 「ス」


 一歌は指先を離すと、また手のひらに別の文字を書いた。


 「キ」


 俺には、その2文字に思えた。


 少しすると、一歌がベッドから降りた。ガサガサと荷物から何かを出している。戻ってくると、また俺の手のひらに何かを書いた。


 冷たくて金属質のものが俺の皮膚に触れる。どうやら、今度はペンで書いているらしい。


 またスキって書いてくれたのかな。

 明日、手のひらを見るのが楽しみだ。



 すごく眠くなって、俺はそのまま寝てしまった。




 ん……。

 もう朝か。


 俺は、起きてすぐに手のひらを見た。

 昨日のは、やはり文字だったらしい。


 俺は読み上げた。

 それは、カタカナ5文字。


 彼女が俺に宛てたメッセージ。




 「イクジナシ」



 …………。



 ちょっとだけ、思ったのと違ったみたいだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランキングサイトに登録しました。 面白いと思っていただけたら、クリックいただけますと幸いです。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ