第14話 そんな彼女のコーディネート。
一歌に隆のことを相談した。
すると、俺のスマホに、放課後に体育館裏に来いという指令が届いた。
愛といい、あんたら体育館裏が好きね。
放課後、隆と一緒に一歌を待つ。
どうせ、一歌は時間に来ないのだ。
俺は、隆の話を聞くことにした。
「隆、お前、なんで飯島(美桜)のこと好きになったの?」
正直、美桜と隆の接点がわからない、
俺も一歌のことがあるし、人のことは言えないが、この2人には、好きになるキッカケすらなさそうに思えた。
隆は、照れ臭そうに答えた。
「前に、カタルに掃除を押し付けられたことがあってさ、そしたら、飯島さん「大丈夫?」って言って手伝ってくれたんだ」
カタルとは、クラス一のチャラ男だ。
この話を聞いていて、一つ疑問が湧いた。
掃除班は、3人1組なのだ。
もう1人はどこいった?
「隆、班ならもう1人いるだろ? お前1人でやってたのか?」
3人1組なのに、2人に見捨てられたとか。
隆が可哀想すぎる。
カタルも大概だが、そのもう1人にも反省してほしい。
「うん。もう1人は片瀬さんだったんだけど、そもそも来なかった」
片瀬?
久しぶりすぎて忘れていたが、片瀬とは一歌の名字だ。
一歌のやつ、そもそも来ないって、……押し付けたカタルよりも酷いんだけど。
「隆、それっていつの出来事?」
「先週の金曜日だけど」
俺はスマホを開き、先週の金曜日の一歌とのやりとりを見返した。
掃除の時間……15時頃のやり取りだな。
すると、こんなことが書いてあった。
蒼:「ブタカフェに、新人ブタが入荷されたらしい。店頭に書いてあった。ブタリーヌちゃんだって」
一歌:「まじ? いま、すぐ行くから!!」
……。
色々と俺が原因じゃん。
俺は隆に言った。
「すまん。とにかく、すまん!!」
俺と一歌、2人分スマン!!!!
隆は訳がわからない様子で戸惑っている。
すると、俺の共犯者がやってきた。
一歌はやってくると、隆をマジマジと見た。
「ふーん。この人ね。美桜はイケメンしか反応しないからなー」
「……ハイ」
一歌は相変わらずの無愛想だ。
隆は萎縮してしまっている。
一歌は隆の周りをクルクル回ると、立ち止まって言った。
「身長もないし、無理」
おいおい。
……言い方。
あなたが掃除をおサボりしたから、こんなことになってるんだよ?
もっと優しくしてやってくれ。
そんな俺の様子をみてか、一歌は言葉を続けた。
「ま、でも。服は整えることできるからね。わたしが、美桜と2人になるキッカケまでは作れるからさ。美桜好みのファッションでせめてみるとか」
すると、隆は俺に耳打ちした。
「片瀬さんって、もしかして、良い子? 自分のことみたいに心配してくれてるし」
いやいや。
恋愛相談に「無理」って答える人、普通にダメでしょ。
わたしたち、アナタをトラブルに巻き込んだ張本人なんです。だから、これくらいして当然なのですよ……。
気づけば、一歌はスマホをいじっている。
一歌さんや。アナタ、元凶なんですから。自覚をもってくだされ。
すると、一歌が口を開いた。
「美桜、明日の土曜なら時間とれるって」
え。明日?
話が早すぎる。
準備期間、今日しか無いじゃん。
俺らは急遽、隆の服を見繕うことになった。
バイトがなかったらしく、一歌も来てくれた。
駅までの道を歩きながら、一歌の話を聞く。
「美桜はね。実は正義感が強いんだよ。子供の頃の理想のタイプは戦隊ヒーローだったらしいし。美桜が見てた戦隊ものの人間の時のオジサン、太ってて小さかったし。うん。大丈夫」
あなた、さっき自分でイケメン好きだから無理とか言ってたよ?
戦隊ヒーローの変身前とか、そんな根拠のないもので元気付けられても、不幸な人間が増えるだけっすよ。
隆はメモをとって頷いている。
真剣なんだな。
ちょっと親切にされて勘違いしちゃう我ら童貞特有の恋煩いかと思ったけれど、……本気なら、是非ともうまく行って欲しい。
とある店舗の前で、一歌が足を止めた。
「あ、ここ。手頃で男の子の服も多いんだ」
たしかに、マネキンが着ている服をみると、俺らくらいの歳に似合いそうだ。
「一歌、よく知ってるな」
もしかして、他の男と来たのかな。
俺が聞くと、一歌は気まずそうな顔をした。
やっぱり、俺には言いづらい事なのだろうか。
そんな俺の気持ちを察してくれたのか、一歌はちゃんと答えてくれた。
「蒼のプレゼント探しに来たから……」
「え、でも。俺の誕生日は5月だよ」
一歌はボソボソと何か言っている。
「え?」
俺が聞き返すと、一歌は口を尖らせた。
「いつも、幸せな気持ちにしてくれるお礼だよっ!! ばかっ!! もうサプライズできないじゃん」
あ、それはゴメン。
「イタタタッ」
一歌は俺の尻を蹴った。
ちょっと凶暴だけど、俺の初めての彼女は、やっぱ可愛い。




