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101/107

第101話 そんな彼女の義妹の決意。


 家に帰ると、いつもより豪華な夕食だった。


 「とんかつに、寿司まであるじゃん!!」


 俺が感想を述べると、父さんはビールを飲みながら返事をした。


 「娘の晴れ舞台だからな。愛紗、かわいかったなぁ。な、ママ?」


 「ええ。本当に。愛紗ちゃん、学校で一番、可愛かったわよ」


 愛紗は胸を張った。


 「当然じゃな」


 俺も晴れ舞台だったんだがな……。

 俺の存在は、完全に忘れられているらしい。


 今日は両親ともライブを観に来てくれたらしく、それでお祝い会となったようだった。


 両親はエンドレス晩酌なので、俺は先に自分の部屋に戻った。


 「今日は、よく眠れそうだ。ここ数日、休んじゃったからなぁ。明日、リンネちゃんに嫌味を言われそうだけど」


 ベッドに入ろうと部屋の電気を消すと、ドアがノックされた。


 愛紗だ。


 挿絵(By みてみん)



 愛紗は、テーブルの前に座ると、何が言いづらそうにしている。愛紗らしくない。


 「なに? 用事?」


 俺が聞くと、愛紗は、少しおどおどした様子で答えた。


 「あの、……今日はありがとう。すごく助かった」


 そんなこと、明日でもいいのに。


 「え、なに? なんかしおらしい態度だな」


 「わたしだって、お礼くらいは、ちゃんと言うよ。お兄ちゃんは、いつもわたしを助けてくれる。あのさ……」


 あれ、今日の一人称はわれじゃないのか。こんな時は、決まって真面目な話がくるのだ。


 「ん?」


 「わたしのこと、どう思う?」


 意味不明な質問だ。


 「どうもなにも妹じゃん」


 「そうだよね。でも」


 「でも?」


 愛紗は手のひらで胸のあたりを押さえた。


 「もし。兄貴。おにーちゃん。蒼。いや、蒼くん」


 「どうしたの? 改まって」


 愛紗の顔は真っ赤だ。

 目も虚ろな気がする。


 「もし、……もし、わたしが本気で頼んだら、蒼くんは、わたしのこと、妹じゃなくて、ひとりの女の子に見れる?」


 愛紗は、何か言葉を続けようと口を開いた。だが、俺は割り込んだ。


 「おまえ、酒でも飲んでるのか? ……いや、なんて言われても、妹は妹だろ」


 すると、愛紗は俯いてしまった。


 「うん。そうだよね。……今日はありがとう。あはは。間違えてママのお酒、少し飲んじゃったのかも。用事はそれだけだから」


 そういうと、愛紗は目を擦って駆けるように、部屋から出て行った。


 愛紗がなにか真剣な話をしようとしていたのは分かった。でも、その先を聞いてはいけない気がした。話をさせないのは卑怯なのかな。


 愛紗は、俺と違って出来がいい。美形だし、なんだかんだ言っても優しいと思う。だから、そんな愛紗が周りに褒められているのを見るのは、鼻が高いし痛快だ。


 でも、それはどこまでいっても、妹に感じるソレであって、恋人に感じるソレではない。


 まあ、もし。将来、愛紗が良い男を連れてきたら、「お前なんぞに妹はやらん!!」と言ってしまうかも知れないけれど。……これでいい。



 「……はぁ」


 ……なんだか、やるせないな。


 俺も酒が飲める年齢だったらなぁ。こんな時に、酒を飲んで紛らわすことができる大人が羨ましいよ。

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