表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

4. 復讐

 その日も天気は曇りだった。雨が降りそうな感じはしなかったが、晴れる気配も無かった。

 俺はホテルでゴロゴロしていた。何をするでもなく、ただスマホで動画を見ていた。最近嵌っている旅をする三人組の動画を見ていた。これを見て次に何処へ行こうかと考えていた。

 子供はいつも通り俺の事など気にせずに何処かに遊びに行った。夜迄には帰ってくるように言ったので、適当に切り上げて帰ってくるだろう。

 そんな何も生み出さない時間を過ごしているとホテルの職員がやって来た。職員は俺に封筒を渡して来た。名前を名乗らない正体不明のガラの悪い男がこの封筒を俺に渡せと言って何処かに行ってしまったようだ。


「中身、知らない内容だったらフロントまで持ってきてください。忘れ物として預かります」


 そう言って職員は部屋を後にした。俺は封筒を眺めた。コンビニでも買える茶色い封筒だった。

 放っておこうかと思ったが、仕事の話だったら困ると思い職員が封筒と一緒に持って来てくれたハサミを封がされた部分に当てる。久しぶりなので上手く開けれるか不安だったが、ハサミの切れ味が良いのか、スッと切れた。

 中身は三つ折りにされた紙が入っていた。俺はその紙を取り出した。紙を開いて中身を確認する。仕事の話では無かった。

 子供を人質として誘拐したから指定された場所まで一人で来いという内容だった。恐らく先日絡んできたガラの悪い奴等の仲間が報復しようとしているんだと思った。この手の奴等はメンツを大事にする。カタギに負けたのが我慢ならないのだろう。


「はぁ…」


 俺は窓の外を見る。外は小雨が降り始めていた。外に行くのは億劫だった。俺はスマホを取り出し、ある人物に電話を掛けた。相手は直ぐに電話に出た。流石社会人という感じだ。


「というわけで、反社の居場所が分かった。後は頼んだ」


 俺は一方的に事情を話して電話を切った。相手もいつものことなので特に慌てた様子は無かった。

 これで子供は無事に救出されるだろう。救出されずとも反社が一つこの世から消える。良い事なんだろう。

 俺はテレビを付けてベッドに横たわった。そのまま封筒が置いてある机を見た。そこに置いてあるハサミをホテルに返さないとなと考えながらテレビを見た。

 テレビは平日の昼間なので情報番組がやっていた。国内の出来事を放送していた。

 俺はつまらない内容だった為か、いつの間にか寝てしまっていた。部屋のドアをノックする音で目が覚めた。その音を聞いて俺は何となく状況を把握する。面倒事が、どういう終わり方か分からないが、解決したようだ。子供ならここの鍵を持ってるだろうし恐らく死んでしまったのだろうと予想した。

 俺はドアを開ける為に立ち上がって伸びをした。そしてドアを開けた。ドアの前には久しぶりに見た顔があった。心労で歳の割に老けた顔の男だった。軍服を着ていて、良く鍛えられた肉体が分かった。男は静かな声で言った。


「面倒事を急に押し付けるな。子供はこの通り無事だ」


 子供は浮かない顔をしていた。誘拐された恐怖で元気が無くなったのかと思った。


「ああ、ありがとう。助かった」

「良く言う…」


 それだけ言って男は去って行った。俺は子供に部屋に入るように促した。子供はそれに素直に従った。俺は再びベッドに横になってテレビを見た。こういう時はいつも通りに振る舞うのが良いと俺は思っている。


「あの人達は悪い人なの?ご飯もくれたし親切にしてくれた」


 それを聞いて俺はどちらだろうと思った。誘拐した側か助けた側か。どちらにしろ無難に答えることにした。


「見る人に依って違うんじゃないか」

「見る人?」

「俺は傍から見ればクズだ。でも自分ではそうは思っていない。お前も自分の感じた通りに思えば良い。そういうことだ」


 子供は理解出来ていない顔をしていた。俺はドラマの再放送の方が気になって、そちらに意識を向けた。刑事物のドラマだ。現実ではあり得ない設定が気に入っていた。


「そう言えば、先生は何で来なかったの?」

「雨降ってたからな」


 雨の日は何をやっても上手くいかない。昔からそうだ。そう思っているからそうなっているのかもしれない。雨の日に俺が何かすればそれは最悪な方に進む。その度に後悔してきた。

 だから上手く立ち回るだろう彼に全てを託した。それだけだ。


「飯食ったんだよな。俺は食ってないから行ってくる」


 俺はそう言って子供を残して部屋を出た。


(暗い雰囲気はどうも苦手だ)


 何があったのかは知らないが、子供に何時もの元気が無かった。俺は逃げるように部屋を後にし、レストランがある階へエレベーターで移動した。

 夕食時と言うこともあってかなり混雑していた。その為か、ルームサービスを利用しないかと勧められた。俺はそれを断って順番を待った。


(今日は酒を沢山飲もう)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ