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第6話「青い海の誓い」

 夏の陽光が眩しく降り注ぐ8月上旬、詩音と澪は約束通り、海へとやってきた。空と海が溶け合うように青く広がる光景に、二人の心は高鳴った。波の音が静かに響き、潮風が二人の髪を優しく撫でる。


 海の家の更衣室のカーテンが開かれた瞬間、詩音と澪の視線が交錯した。二人は互いの姿に息を呑み、一瞬時が止まったかのような静寂が訪れた。


 詩音は純白のワンピース水着を身にまとっていた。その姿は、まるで海から生まれた女神のようだった。長い黒髪が、白磁のような肌に美しいコントラストを描いている。すらりとした脚線美は、ワンピースの裾からのぞく程度に抑えられていたが、それがかえって見る者の想像力を掻き立てた。くびれた腰のライン、なめらかな肩のカーブ、そして胸元のわずかな膨らみ。すべてが完璧な調和を保ち、澪の目を釘付けにした。


 詩音の肌は真珠のように輝いており、夏の陽光を受けて僅かに桃色に染まっていた。その姿は儚くも美しく、まるで一瞬で消えてしまいそうな幻のようだった。長い睫毛が縁取る瞳は、澪を見つめて微かに揺れ、その中に戸惑いと期待が交錯しているのが見て取れた。


 一方の澪は、空色のビキニを纏っていた。その色は、澪の明るい茶色の髪と大きな瞳に不思議なほど良く調和し、まるで海そのものが澪を包み込んでいるかのようだった。華奢な肩から滑らかに続く鎖骨のライン、ほっそりとした腕、そして引き締まった腹部。すべてが若さと健康美に溢れていた。


 澪の肌は、日に焼けて少し小麦色に染まっており、健康的な輝きを放っていた。ビキニの紐が触れる肩や腰のあたりは、紐の跡が白く残り、そのコントラストが妙に艶めかしかった。しなやかな脚は適度に筋肉が付き、動くたびにその美しさを主張しているかのようだった。


 二人の間に漂う空気は、緊張と期待で満ちていた。詩音からは清楚な石鹸の香りが、澪からは夏の日差しを浴びた花のような甘い香りが漂い、それぞれの鼻腔をくすぐった。


「わぁ、詩音ちゃん、すっごく似合ってる!」


 澪が思わず声を上げた。


「澪こそ……とても似合っているわ」


 詩音も少し震える声で返した。


 二人は互いの姿に見惚れ、頬を赤く染めながらも、目が離せないでいた。その瞬間、二人の間に流れる空気が変化した。それは友情とも、恋愛とも言い切れない、微妙で繊細な感情だった。


 詩音と澪は、この瞬間が永遠に続けばいいと心の中で願った。互いの美しさに魅了され、時が止まってしまえばいいのにと思った。この夏の日、二人の水着姿は互いの心に永遠に刻まれることとなった。それは青春の輝きそのものであり、二人の関係に新たな章を開くきっかけとなるのだった。



 目の前には透き通るような青い海。白い砂浜。照りつける太陽。その光景は、まるで絵画のように美しかった。


「わぁ! 綺麗!」


 澪は歓声を上げながら、砂浜を駆けていく。その姿は、まるで解き放たれた小鳥のようだった。詩音はそんな澪の姿を見つめながら、ゆっくりと歩を進めた。澪の背中に輝く陽光が、詩音の目には眩しすぎるほどだった。


 澪は振り返り、詩音に手を伸ばす。その仕草に、詩音の心臓が高鳴る。


「ほら、詩音ちゃんも早く!」


 その笑顔に、詩音は思わず息を呑んだ。澪の笑顔は、この世界で最も美しいものだと、その瞬間、詩音は確信した。


 詩音は少しためらいながらも、澪の手を取った。その瞬間、柔らかな感触が詩音の心を揺さぶった。まるで、澪という名の蕾が、詩音の心の中でゆっくりと開いていくかのようだった。


 二人で海に入る。冷たい波が体を包み込み、詩音は小さな悲鳴を上げた。


「きゃっ! 冷たい!」


 澪が詩音に寄り添ってくる。思わず体が触れ合い、詩音は顔を真っ赤にして俯いた。澪の肌の温もりが、冷たい海水を通して伝わってくる。その感覚に、詩音は心臓が止まりそうになった。


「で、でも気持ちいいわね」


 詩音の言葉に、澪は嬉しそうに頷いた。その笑顔が、詩音の心に深く刻まれていく。


 波に揺られながら、二人は海の中でゆっくりと手を繋いだ。その瞬間、詩音の体に電流が走ったかのような感覚が広がった。澪の手の温もりが、詩音の全身に広がっていく。


 詩音は、この瞬間が永遠に続けばいいのにと思った。しかし同時に、この夏が終わり、二人が別々の道を歩むかもしれないという予感が、心の片隅をかすかに過ぎった。


 砂浜に戻った二人は、並んで座り、夕日を眺めていた。空が燃えるように赤く染まり、その色彩が海面に映り込む。まるで、二人の心の高鳴りを表現しているかのようだった。


「ねえ、詩音ちゃん」


 澪の声が、夕暮れの静けさを静かに破る。


「なに?」


 詩音は、少し緊張しながら澪を見つめた。


「私ね、詩音ちゃんと一緒にいると、自分が誰かになれる気がするの」


 澪の言葉に、詩音は驚いて顔を向けた。その瞳に映る自分は、きっと本当の自分ではない。でも、その自分でありたいと強く願ってしまう。そんな複雑な思いが、詩音の心を満たしていく。


「私もよ。澪と一緒にいると、新しい自分を見つけられる気がする」


 詩音の言葉に、澪の目が輝いた。二人の視線が絡み合う。その瞬間、時間が止まったかのように感じられた。


 ゆっくりと顔を近づける二人。心臓の鼓動が、耳元で大きく響く。


 唇と唇が触れ合った瞬間、二人の心に強い電流が走った。それは、言葉では表現できないほどの感覚だった。柔らかく、暖かく、そして甘美な感触。


 キスの後、二人は顔を真っ赤にしながらも、優しく微笑み合った。その笑顔には、これまでにない輝きがあった。


「これからもずっと一緒にいよう」


 澪の言葉に、詩音は静かに頷いた。その瞬間、詩音の心に、ある決意が芽生えた。


 "私は、澪と一緒に成長していきたい。そして、澪の笑顔を守れる人になりたい"


 その思いは、詩音の中で静かに、しかし力強く育っていった。


 夕陽に照らされた海辺で、二人は永遠の誓いを交わした。波の音が静かに響き、潮風が二人の髪を優しく撫でる。その瞬間、詩音は確信した。この夏の思い出は、永遠に自分の心に刻まれるだろうと。


 帰り道、二人は手を繋いだまま歩いていた。言葉を交わさなくても、二人の間には深い絆が生まれていた。それは、まるで目に見えない糸のように、二人の心を繋いでいた。


 星空の下、二人は静かに歩を進める。この夏の思い出と共に、二人の新しい物語が始まろうとしていた。それは、儚くも美しい、青春の輝きに満ちた物語。詩音と澪の心に、永遠に刻まれる夏の日の記憶が、静かに、そして確かに育っていった。


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