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父の初恋、母の初恋、それぞれの初恋とその後。  作者: さんまぐ
刻まれた温もりと尊いキス。

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フォトブック。

今目の前にたくさんの写真がある。

どうしてもお爺ちゃんはスマホ派ではなく写真派でお父さんは「亀川のオヤジの為だからプリントして来い」と言って一万円を持たせて来た。

その時、プリント屋さんで「プレゼントでしたら本にした方が喜ばれますよ」と言われてやり方を聞いた私は作業を2度に分ける事にした。


1度目は良さげな写真を選んでプリントして帰り、お母さんに選んでもらって2度目に本にする。

こうして出来上がった一冊はお爺ちゃんに大好評で「麗華はすげぇな」と言ってくれた。


「凄くないって。皆やれるんだよ」

「皆?俺は出来ねぇぞ?」


その後もお爺ちゃんはフォトブックを見て「麗華はすげぇ」「パソコン使えるとかすげぇ」「俺はテレビのリモコンでも命懸けだ」と褒めてくれて、なんとなくそれが忘れられなかった私は就職先にそう言うパソコン操作ができる仕事を探す事にした。


学校の先生は「それなら専門学校に行く方がいい」と言ってくれたが、行って働いてもコレジャナイと思ったら私は平気でやめる。

その時に支払った何百万のお金は無駄になる。


それはお母さんの話を聞いていてもそう思えていた。

お母さんは美容の専門学校に行ってエステティシャンになったが一年でやめた。


お母さんが女社会に馴染めずにやめた理由はなんとなくわかる。



こうして私にはお爺ちゃんにフォトブックを渡す為に用意した剪定用の写真と進路先が残った。



机の上で写真を整理をしながら眺めるとそれは中3の夏の写真だった。


鶴田 薫君の二十歳のお祝い。

笑っちゃうくらい盛大だった。


本気で鷲雄叔父さんはマグロを買ってきて戦っていた。

だがガサツな鷲雄叔父さんはマグロを捌けずに結局はひばりおばさんの旦那さんが「昔、アルバイトでスーパーの鮮魚コーナーにいたから少しなら」と言って華麗に捌いていた。


そして昴ちゃんさんも美空さんも、鷲雄叔父さんに気を遣って薫くんとはお酒を飲まずにお祝いの日を迎えた。

その事に感涙した鷲雄叔父さんは「同じ日ってだけでも感謝しかねぇです!さあ!最初はご両親とだ!おめでとう薫くん!お前は俺のファミリーだ!」とはじまって、またお母さんが全身筋肉痛に苦しみながら大掃除をした亀川家で宴会が始まった。


薫くんは可哀想に潰されて二日酔いに苦しんでいた。


最初は昴ちゃんさんと薫くんが日本酒を小さなコップに入れて「薫、二十歳のお祝いだよ。おめでとう。今日は皆さんのお陰で盛大なお祝いになったから感謝をしてね。後は何処までなら飲んで平気かを確かめるんだよ?外で飲んで倒れたら大変だからね」と言葉を送ってから「乾杯」と言ってお酒を飲む。

薫くんは「変な味」と言って飲んだ後で「薫、そのまま飲むんじゃなくて何か食べるんだよ」と言われて食べたお刺身に喜んでいた。


その後は水をひと口飲まされてから美空さんが「薫、私とはこれね」と言われてビールを飲み交わした。


「やり直して一年半、全部あなたのおかげよ。ありがとう薫」

「いいよ。それに一年半って俺のこと放ってない?」


そんな事を言ってビールを飲み交わすとお母さんが「薫くん!ビールにはソーセージだよ!焼いたよ!食べて!」とお皿を出して食べた。


そしてお母さん。

お母さんは「わぁ…嬉しいよ薫くん。二十歳おめでとう。私は昴ちゃんと同じ日本酒ね」と言って乾杯をして早速泣いた。


「ありがとう薫くん。薫くんに会えたから今こうしてるよ。麗華も学校で嫌な事がなくなったし勉強も順調だよ。ありがとう」

「俺の方こそ勉強少しなのに教えた日はおかず分けてくれてありがとうございます貴子さん」


そのまま泣きスイッチの入ったお母さんは美空さんに「いつも来てくれてありがとう美空さん!」と泣きながら感謝を告げていた。


そして鷲雄叔父さん。

鷲雄叔父さんは焼酎だと言って「薫くん、お前は亀川家の救世主だ!これからもよろしくな!」と言って酒を飲む。

この時には、薫くんはちょっとおかしくなって来てて「俺こそ肉とか魚とか虎徹くんとかありがとうございます」と言って飲んだ。


その後はお父さんの前に薫くんから行って「龍輝さん!よろしくお願いします!!」と言った。


「お?俺かよ…」

「はい!嫌ですか?」


「いや…嫌なんて無いけど、俺はカッとなってお前の事を殴ったし」

「揺さぶり返しました!」


「蹴ったし」

「角煮ラーメンチャーシュートッピングでチャラです!」


「お前…、鷲雄のアニキからアザが酷かったって…」

「肉のコラーゲンで消えました!」


何を言っても溌溂と返す薫くんに負けたお父さんは「…仕方ねえ、今飲んだ中でどれが良かった?」と聞くと薫くんは「ビールでお願いします!」と言う。


お父さんは「本当敵わねえな」と言った後で「貴子、注いでくれよ」と言う。


お母さんは今日1番の笑顔で「いいよ」と言って注いで泣いた。

そして早速更新された今日1番の笑顔で「昴ちゃん!嬉しいよ!薫くんと龍輝が2人で乾杯したよ!!」と報告している。


困った顔のお父さんはこの日まで名前呼びが無くて凹んでいた。

名前呼びは嬉しいが鶴田家との絡みで出てきた名前呼びなので微妙そうにしてると薫くんが「良かったですね龍輝さん。俺と龍輝さんの仲がいいと貴子さんは嬉しいんですって」と言って笑う。


「お前…シラフか?」

「いえいえ、なんかホワホワしてダメです」


「敵わねえな、麗華の事は本当に感謝してる」

「お肉のお礼です!」


そうして飲んだ薫くんはこの後で酔い潰れるまで皆に付き合わされた。

私達も列に並んで「乾杯!」とやって飲んだ。

私はサイダーで薫くんはビールだった。


「薫くん、塾のない日にしてくれてありがとう」

「ううん。麗華さんは頑張ってるし、皆で会う日に自分だけ夏期講習なんて嫌だよね?残り半年、今のペースなら選べる学校は増えるからね」


私の後は虎徹で「薫くん!麗華の次は俺だからね!」と言ってオレンジジュースで乾杯した。


そして酔い潰れた薫くんは「下手に起こして吐くと可哀想だから気にしないでくだせぇ」という鷲雄叔父さんのひと言で昴ちゃんさんと美空さんは帰って行った。


そして昴ちゃんさんを見送ったお母さんは限界を突破して薫くんの横で寝た。

怒りかけるお父さんに「今連れ帰って二日酔いになると勉強にならないから置いて帰ろうよ。ご馳走分けてもらって家帰って夕飯にすればいいし、早く帰って勉強したい」と声をかけて帰る。

お父さんは不服そうだったが「この状況で酔って何かってありえないし。黙っていた方がプラスになると思うよ?」と言った言葉を信じて帰った。


その後はお婆ちゃんとひばりおばさんに任せたが寝ぼけたお母さんは「あれ?昴ちゃん?タバコ臭くてごめんね」と薫くんにくっ付いて寝て、薫くんは「亀川、ごめん無理」と昴ちゃんさんの真似を寝ぼけながらしていたらしい。


そして夜中に2人して飛び起きて二日酔いに苦しんでお婆ちゃんのお味噌汁と胃薬とたくさんのお水を飲みながら「ごめんね薫くん!」「俺こそ寝てしまってすみません」とやっていたとお婆ちゃんから連絡が来た。


お母さんは怒らないお父さんに「酔い潰れてごめんなさい。なんでか昴ちゃんや薫くんのいる日は寝ちゃうんだ」と謝りに行って「んなもん徹夜で支度するからだろ?麗華の付き合いの飲み会は気をつけろよな」と言われて「うん…、怒らないでくれてありがとう龍輝」となった。


この日からまた名前で呼んでもらえたお父さんはなんとなくだがお母さんと鶴田家の人達との付き合い方がわかって来た感じだった。

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