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不滅のティアラ 〜狂おしいほど愛された少女の物語〜  作者: 白銀一騎
〜シンデレラガール編〜
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9.アスペルド信仰教団の陰謀③

 私はクロノスの町の中心部にあるアスペルド教会に到着した。


 私は首に巻いていたストールを取るとポケットに仕舞って教会に入った。教会に入ると親切な牧師から部屋へ通された。そこには牧師の格好をしたロマノフがいた。私はそこでロマノフが教団の関係者であることを初めて知った。私がびっくりした顔をしているとロマノフが話しかけてきた。


「やあ。ティアラさん。先日はお世話になりました」


「こんにちは。ロマノフさん。お体の具合はどうですか?」


「貴方のおかげでこの通り回復できましたよ」


 私は以前クリスの紹介でロマノフと会っていた。ロマノフは脚気(かっけ)で死にそうになっていたのを私が助言をしたおかげで回復できたと思っていた。実際にあのままだったら死んでいたかもしれない。私はロマノフが回復できて本当に良かったと思ったので、それは良かったです、と言った。


 なぜここにロマノフが居るのだろうと私が思っているのを察知したらしくここにいる理由を説明してきた。


「実は私はアスペルド教団の司祭をしているのですよ」


「ええ? 司祭様だったのですか。ごめんなさい私何も知らなくて」


「いいえ。謝る必要はありませんよ。私こそ命の恩人に素性を明かさないで帰してしまい申し訳ないことをした」


 ロマノフはそう言うと私に頭を下げた。私は恐縮してロマノフに再度謝ってしまった。ロマノフはそれが面白かったのか声に出して笑うとお茶菓子と美味しそうな紅茶を私の前に置くともう少しこの部屋で待つように言うと申し訳なさそうに部屋から出て行った。


 私は紅茶に手を伸ばすとそれを飲んだ。


 私がアスペルド教会で覚えているのはここまでだった。


 ◇


 私は気がつくとどこかわからない地べたに転がっていた。ぼんやりと目を開けると目の前に鉄格子があった。鉄格子の先に柄の悪そうな男たちが椅子に座ってカードゲームに興じていた。私は状況を整理すると、どうやら鉄格子の向こう側が外で自分は鉄格子の内側の牢屋に入れられているのがわかった。しかも手足が動かなかった。どうやら手足をロープで縛られているようだった。


 私はどうしてこうなったのかわからなかった。確か教会で紅茶を飲んで……。あの紅茶に薬が入っていたとしか考えられなかった。どうして?、私はこれから自分がどうなるのか心配になった。


 私がまだ薬の効き目が完全に切れていない、虚な目で男たちをみているとその中の一人の男が私に気がついた。


「おっと。聖女様が起きたようだぞ」


「クルトガさんを呼んでこい!」


 男がそう言うと仲間の一人が部屋から出て行った。私は男にどうしてこうなっているのか聞いてみた。


「こ……ここは……どこですか?」


「そんなことを知ってどうする? お前はここで死ぬんだ」


「どうして? 私が何をしたの?」


「そんなことは俺は知らない。俺たちは金で雇われただけだ。かわいそうだがお前には死んでもらうしかない」


 私は男の言っている意味がわからなかった。多くの人を助けたことが罪になるのか?、私が絶望していると誰かが部屋に入ってきた。


「おお。ミリアどうした? クルトガさんはどうした?」


「もうすぐここに来るわ。それより……目が覚めたの?」


「ああ。そこで寝てるよ」


 男はミリアという女の人と暫く話し込むと私を見た。ミリアは咄嗟に男の背後に回ると、長い(はり)のようなもので男の後頭部を刺した。途端に男は気を失って倒れた。私はミリアと呼ばれていた女の顔を見てびっくりした。私が収容所の獄中に収監されていた時に牢屋の中にいた女の人だった。ミリアはすぐに倒した男の腰から牢屋の鍵を取ると牢屋の扉を開けて私に近づいて来た。


「ティアラ。私よ覚えている?」


「ミリアさん? どうしてここに? 私は?……」


「話は後で……、早くここから出るわよ」


 ミリアはそう言うと私の手足のロープを外して私たちは牢屋から出た。私たちが廊下に出るとすでに数人の男たちが廊下で倒れていた。おそらくミリアがやったのであろう。倒れている男たちの腕にはそれぞれサソリの入れ墨があるのが見えた。何かの組織の者かどうかを区別しているように思った。

 

 私たちは倒れている男たちを跨いで階段を駆け上がり扉を開いて建物から出た。辺りを見回りしてみたが教会らしい建物はなかった。おそらく眠っている間に教会から遠くのこの建物に連れてこられたのだろう。


 私たちが路地裏を早足で走っていると私がいなくなったことに気づいた男たちが建物から飛び出してきた。男たちは辺りを見回すと私たちに気づいて追いかけてきた。私とミリアは急いで走ると表通りにでた。


「こっちよ!」


 私はミリアの後を必死でついて行った。


「あれに乗って!」


 ミリアが指さした先に馬車があった。ミリアは馬の手綱を杭から外すとすぐに乗り込み馬車をいつでも動かせる体制になった。ミリアは私が馬車に乗るのを確認するとすぐに馬車を走らせた。私はこれで男たちから逃げきれるだろうと安心して後ろを振り返ると馬に乗った男たちが私たちの乗った馬車を追いかけてきた。


 ◇


「何! 本当か? それは!!」


 レンは仲間の一人の襟首を掴むと自分の顔の近くまで寄せていた。


「もっと詳しく聞かせろ!!」


 レンに睨まれた男はヒィ!、と小さく叫ぶと震えた声で「わ……わかったから手を離してくれ……」、とレンに頼んだ。レンはすぐに手を離すと男はレンに捕まれてくしゃくしゃになった襟首を元に戻して話し始めた。


 男の話によると何者かがティアラをさらって殺害しようとしていると言うことだった。レンは自分の妹を救ってくれたティアラを殺そうとしている者がいることに心底腹が立った。絶対に阻止してやると強く心に誓ったレンは仲間の一人にティアラを殺そうとしている者がいる場所に案内させた。


 レンたちは敵のアジトがよく見える近くの店の二階に集まって、どうやってティアラを助け出すか作戦会議をしていると仲間の一人が声を上げた。レンがアジトを見ると建物から女とティアラが出てくるのが見えた。レンは咄嗟に店の二階から飛び降りると急いでティアラの元に走っていった。


 ティアラたちは表通りに出ると馬車に乗り込み走り出した。それを追いかけるように柄の悪い男たちが馬で追いかけようとレンの脇を通り抜けていった。レンは馬で追いかけていた最後の一人が自分の横を通り抜ける瞬間、男の脚を掴んで馬から引きづり下ろした。


 レンはすぐに馬の手綱を掴むと馬に乗って男たちを追いかけた。

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