21.ダンジョン攻略試験
本日はあと3回投稿する予定です。
12:00頃→22話
15:00頃→23話
18:00頃→24話
私達三人は町外れにあるダンジョンの前に到着した。近くの森では騎士科の生徒が演習を行っていてレンもその演習に参加していた。
私はダンジョンに入る前から少し疲れていた。それというのもレンが私達のメンバーに加わって一緒にダンジョンに入ると言って聞かなかったからだ。
私はレンに騎士科の生徒と一緒に入ると魔法試験に失格となってしまうと必死に説得してようやく納得して先程別れたところである。
「レンにも困ったものだな、この俺が付いているんだ何も心配することはないのに」
アルフレッドが残念そうに去っていくレンの背中を見ながら言った。
「そうですね、とても心強いですね」
私は皮肉交じりに言ったつもりだったが、アルフレッドは素直に受け取ったらしくそうだろう、そうだろう、と言って喜んだ。やはりこの王子様は少し天然が入っているように思った。
「そう言えば、エリカ。ここのダンジョンで私達は何をすればいいのかしら?」
私はエリカに聞くとチームに配布された書類を見ながら丁寧に説明してれた。
「えーと、そうですね……、ダンジョンの地下5階に石版があるのでそこに書かれた文字を覚えて試験官に伝えればミッションクリアになります」
「この洞窟の中のモンスターの強さはどうなんだ?」
「えーと、中のモンスターはスライムと大きなコウモリがでる程度で、超ビギナー向けのダンジョンと書かれています」
「スライムとオオコウモリだけだと? ウオーミングアップにもならないな、期待して損した」
アルフレッドは落胆した表情を浮かべてここで話しても始まらないから行くぞ、と言ってダンジョンに入って行った。私達もすぐにアルフレッドについて行った。
「どうしてそんなに不機嫌なんですか?」
アルフレッドに追いついたので、質問すると私の顔を覗き込んで小さく囁いた。
「お前に俺の強いところを見せたかったんだ……」
「な……何を……」
私は恥ずかしさで顔が真っ赤になってしまった。
私は道具箱から灯油の入った瓶を取り出して松明に染み込ませて火をつけた。
あたりは昼間のように明るくなり煙もあまり出なかった。二人は松明の明るさに驚いていた。
「こんなに明るいくて煙が出ない松明は見たことないです」
エリカがびっくりして叫んだ。
「不純物のない燃料を使っているからね」
「やっぱりティアラさんはすごいです」
「そ……そんなことはないよ」
私が謙遜するとアルフレッドは勝ち誇ったようにエリカに言った。
「そうだティアラはすごい女なんだぞ、それが証拠に見てみろティアラの道具箱を変なイラストが書いてあるだろ」
アルフレッドが急に道具箱に書いたイラストを茶化してきた。それを聞いてエリカは本当だ、と言いながら私の道具箱のイラストを見た。
「この絵は誰ですか?」
「ああ……埴輪のハーちゃんと言って私が考えたオリジナルの子なの」
「へえーー。ティアラさんかわいいです」
「そ……そんなことないわよ。昔から持ち物にハーちゃんを書くのが癖なのよ。気にしなくていいから」
「そうだよ。こんな変なイラストは気にしてもしょうがないぞ」
アルフレッドの言葉に少しイラッとしながらも気を取り直して二人に言った。
「ふたりとも気を引き締めましょう。魔物がこの光に寄って来るかも知れません」
アルフレッドとエリカに気を引き締めるように言って私達は洞窟の奥に入って行った。
私達はしばらく洞窟の中を進んだが、魔物は全く居なかった。
「何だよ、スライムぐらい居ても良さそうなのに?」
「変ですねかなり奥まで入って来たのに魔物の痕跡すらないなんて」
二人は不思議そうに言った。
「いいじゃない楽にクリアできれば、こんなにいいことはないわ」
私が言うとアルフレッドはこれではいいところを見せられない、と言って一層不機嫌になった。不機嫌王子になったと思っているとエリカが何かを発見して叫んだ。
「あれは? 何か前方にいます」
ゆっくりとそのなにかに近づくと魔物が横たわっていた。近づいても動く気配がなかったのでソロリソロリと近づくと魔物はすでに死んでいるようだった。
「この魔物は? 何かしら?」
「イージウルフですね。ここのダンジョンのボスです」
エリカが資料を見ながら答えた。
「ボス? ボスって? このダンジョンで一番強いって意味ですよね」
「そうですね……?」
「なんで死んでるんだ? だれにやられたんだ?」
アルフレッドは不思議そうに魔物の死体を見ながら言った。
「ボスより強い魔物ということになりますね」
「ボスより強い魔物?」
言いながら嫌な予感がした。
「すぐにここから出ましょう。何か嫌な予感がするわ」
そう言って三人でダンジョンの出口に引き返そうとした時、奥から魔物の咆哮が聞こえてきた。
「グオオォォオオオオーー!!」
魔物はゆっくりと近づいてきた、松明の光で魔物の姿が見えた時、私は全身に鳥肌が立つのを感じた。
ダンジョンの奥から出てきた魔物はゴブリンソルジャーだった。
「え? う……うそ………」
エリカの声は震えていた。自分もこの前の惨状を思い出して気がつくと足が震えていた。隣のアルフレッドを見ると呪文を詠唱していた。
「ファイアーボール!!」
アルフレッドの呪文の詠唱が終わると野球ボール程の大きさの火の玉がゴブリンソルジャーに飛んでいった。火の玉が当たる寸前でゴブリンソルジャーは持っている鉄棒で弾き返した。火の玉は洞窟の壁に当たると粉々に飛び散って消えた。
アルフレッドは何度かファイアーボールを放ったが、すべて打ち返されてしまいダメージを与えられない。アルフレッドは今の攻撃で魔力を消費したようで少し苦しそうだった。
「私もファイアーボールをやってみるわ」
「ああわかった。でも威力は抑えてくれよ」
私はわかったわ、と返事をして少し抑え気味の爆発をイメージした。青い光が集まってやがて赤い光に変わった。
「アルフレッド! そこをどいて!」
「お……お前それ……」
そう言うとアルフレッドは素早くその場から避難した。私はアルフレッドの体が視界から消えたのを確認すると火の玉をゴブリンソルジャーに向けて放った。
火の玉がゴブリンソルジャーに当たった瞬間『ドォオオオーーーン』と爆音とともに大爆発が起きて洞窟の壁と床に亀裂が入ったかと思うと大穴が空いて私は下の階層に落下してしまった。
◇
「お……おい!……ティアラ……大丈夫か?」
「う……うぅ……」
目を開けるとアルフレッドが心配そうに顔を覗き込んでいた。
「アルフレッド、エリカは? エリカは無事?」
「それがエリカの姿が見えないんだ」
「え? 本当に? ど……どうしよう」
私が焦っていると上からおーーい、無事ですか?、というエリカの声がした。どうやら私とアルフレッドだけ洞窟の床が抜け落ちて下の階層に落ちてしまったようだった。
私はエリカに無事なことを伝え、安堵して立ち上がろうとした瞬間右足に激痛が走った。落下したときに右足をひねったようで立って歩くことが困難になった。
「大丈夫か? 立てそうか?」
「ちょっと無理みたい、治すことはできる?」
「ああもちろん、お安い御用だ」
アルフレッドそう言うとすぐに右足に治癒魔法をかけてくれた。
「ゴブリンソルジャーは倒せたのかな?」
私は心配になりアルフレッドに聞いた。
「あの爆発だから生きてないだろ、粉々になっているんじゃないか?」
「それだといいんだけど……」
私は以前ゴブリンソルジャーと対峙してあいつの強さを実感していた。あの攻撃で本当に倒せたのか不安になった。
回復魔法のおかげで足の痛みが引いて少し立てるようになったとき、遠くの瓦礫が微かに動いたのが見えた。ヒャリと背筋に悪寒が走るのがわかった。
「グォオオオーーーーー!!」
咆哮を上げながら瓦礫の中からゴブリンソルジャーが出てきた。頭から血を流してはいるがダメージはあまり受けていない様子に全身から血の気が引いていくのがわかった。
「エリカ! この洞窟を出て助けを呼んできて!」
「そ……そんな二人を置いて行くことはできません!!」
「大丈夫よ私に考えがあるから、ダンジョンを出るとすぐ近くの森で騎士科の生徒が演習をしているから、誰でもいいから応援を呼んできて! 早く!!」
「わ……わかりました。すぐに呼んでくるのでなんとか耐えてください」
「ええ。任せといて」
私はエリカに心配かけないように精一杯元気な声で答えた。
エリカは立ち上がると走って行った。走る音が遠ざかるのを聞いてホットした。
「考えがあると言ったがどうする?」
アルフレッドが聞いてきたので、私は道具箱から気づかれにくくなるストールをお互いの首に巻いた。
「これは? 俺が以前にお前にあげたストールか? でも今となってはこんな物意味ないぞ」
「これは一応念の為に巻いてるの、本当のとっておきはこれよ!」
私はそう言うと道具箱からガソリンの入ったガラス缶を取り出した。
「これであいつを倒すことができるわ」
読んでいただきありがとうございます。
後少しで第一章が終了します。
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