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わたし魔王の生まれ変わりなの、と幼馴染みは言った。  作者: 神代創
11章 村人Aは本山に乗り込む
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3:聖都潜入 その2

 が――


「遠いな……」

「解せぬ。街に入ってからが遠いのはなぜだ?」

「この階段のせいだろうな。結構きつい」


 緩やかな上り階段が延々と続く大神殿への道に、俺たちは切れ気味になっていた。

 ようやく半分ほど登ったところで、横に続く巡礼服の集団に気づいた。


「ちょっと待て。この行列は何だ?」

「わかったー! 名物神聖団子の待機列!」


 ファミの食い意地発言に噛みついてきたのは、横で列に並んでいたおばさんだった。巡礼者なのは格好でわかる。


「罰当たりなことを言うでないよ! これは大神殿に入る列に決まってるだろう」

「げ……。入るだけでこの列なのか」

「横入りは出来ないからね!」


 おばさんに釘を差されて、俺は列の最後尾を探す。登ってきた階段の半ばに看板を持った人がいる。最後尾と書いてあるようだ。


「えっと、ちなみに、最後尾から並んだら入れるのはいつ?」

「明日か明後日だろうねぇ。運がいいね、あんたたたち」

「運がいい?」

「催事のある日なら5日以上かかるんだよ」

「俺の中で何かが折れた……」

「ファミも折れたよぉ……」

「セイル折れた……」


 いまさら戻って最後尾に並んで1日以上待つのは無理だ。


「仕方がないな。宿を探そうか」

「宿はあっちの方」


 セイルがにぎわっている方を指さす。


「セイルはしっかりしてて助かるよ」

「ジェイトのため」

「セイルちゃん、ちゃっかり売り込みするなんて卑怯だー」

「売り込みしないおまえが悪いんじゃないんか?」

「いつも売りこんでるのにー」

「胸を押しつけるのを売り込みとは言わないの」

「セイルちゃんにないものを売ってるだけだよー」

「ん。ないことない」


 セイルがないことはないものを強引に押しつけてくる。


「だからどうしておまえらはすぐにそっちに走るんだ?」

「どうしてジェイくんはそっちに走らないの?」

「男の子はみんなそっちに走る」

「セイル、それは凄い偏見だぞ」

「ジェイくん、おっぱい嫌いなの?」

「おっぱいは好きだが、おっぱいの安売りは嫌いだ!」

「えー、おっぱいに上下はないよー」

「おっぱいに貴賤なし。大きさに優劣なし」

「なんか名言っぽくまとめたな、セイル」

「ん、名言」

「嬉しそうな顔をするな」


 とにかく、今はおっぱいは脇に置いておこう。両腕に押しつけられているが、気にしない方向で。

 情報がない。まずは情報を得る必要がある。正攻法では大神殿に入るだけでも2日かかる。裏情報が必要だ。


「よし、こういう場合、情報収集するのは酒場だと相場が決まってるな」


 というわけで、俺たちは酒場を探して歩き出した。

 両脇のおっぱいのせいで歩きにくいぞ!


「酒場がないね、ジェイくん」


 小一時間ほど歩き続けて酒場が1軒も見つからなかった。異常事態だ。


「これだけ大きな街なら酒場くらい歩けば見つかりそうなもんだが」

「おおっと!」


 と、その時、セイルがいきなり声を上げて立ち止まった。いや、これは勇者の方だな。


「そうだった! あいつ、酒が嫌いだったな」

「あいつってメディア?」

「そういえばそうだったな。臭いとか酔っぱらいが嫌いとか言っておったな」

「女神の趣味で俺の邪魔をするなー。というか、酒が嫌いとかそう言う情報は先に知らせろよ! 使えねぇ魔王と勇者だな」

「そう言うな。全てを一気に思い出せるわけではない」

「そうそう。急がない急がない」

「お前らが本当に魔王と勇者かどうか怪しくなってきたな。実はファミとセイルが隠し芸をしてると言われても驚かねーぞ」

「それを言うならば、おまえが本当にジェイトなのかどうかも不確かになるがな」

「は? 俺は俺だろ」

「自分の実存に疑義を持たぬか」

「何をワケのわからんことを」

「よいか、魔王と勇者という存在は周囲に対する影響力もまた大きい。その真っ直中に放り込まれた貴様もまた通常では考えられぬほどの影響を受けているのだ。つまり貴様の存在もまた一般人とは次元が異なっているということだ」

「魔王のおっさん、酔っ払ってくだ巻くには時間が早いぞ」

「飲んでおらぬわ! だいたい酒程度で意識がぶれるほど魔王は脆弱ではない!」

「そもそも酒がなくてくだを巻いてるんだよな」

「外から見てると、酒が飲めなくてわめき散らしてる少女にしか見えなくて辛い……」

「美少女ふたりだよね!」

「事実だとしても自分で言わない方がいいぞ、ファミ」

「事実なんだ~! ジェイくんが認めてくれたよ」

「事実だとしても、と断ったぞ」

「だから事実だよね~」


 上機嫌でさらに胸を押しつけてくるファミに、それ以上言う気力がなくなった。


「仕方ないな。宿に行って、そこで情報を当たるか。それ以上は明日だな」

「異議なしー」

「賛成」


 賛同を得て歩き出した時、背後から声をかけられた。


「そこのおまえたち!」


 屈強そうな教兵が5人、俺たちをにらみつけていた。


「なんです?」

「敬虔な信者複数から通報があった。昼間から酒を呑んで迷惑を掛けているとな」

「飲んでませんよ?」

「酒がないからぶうぶう言ってるだけですよ」

「なに? 飲んでもいないのに大声で騒いでいるのか?」

「大声じゃないし」

「だいたい、メディアが酒禁止にするからだろ」

「ろくな女神じゃないな、あいつは」


 勇者と魔王が文句を言ったのが悪かった。


「メ!? 女神様を呼び捨てにするだと! 不敬も甚だしい!」

「ああ、悪い悪い。古い知り合いだから」

「め、女神様を友人のように言うなど、もう勘弁ならん! 引っ捕らえよ!」


 教兵が一斉に襲いかかってきた。

 反射的に勇者の鎧を呼び出そうとした。が、声が出ない。

 おや? これはマズい状態では?

 何もできないまま、あっという間に縄で引っくくられてしまった。担がれて引きずられて暗い地下に入れられるとガチャンと鉄格子が閉ざされる。


「しばらくそこで頭を冷やしていろ」


 あれ?


「ジェイくん、宿が見つかってよかったね!」

「こんな宿に泊まりたかったわけじゃねぇ!」


 俺の叫びが冷たくて硬い牢屋に響いた。


クリフハンガーになっちゃいましたが、今回の更新はここまで!

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