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1:王女を追って その1

すみません! エタりそうでしたが、7ヶ月ぶりに復帰しました!

忘れてますね? 忘れてましたよね?

とりあえず、1章分連投予定です。GWの引きこもりにどうぞ!

「で、連中はどこに向かってんだ?」


 俺はローネを掠った連中が消えた方向を見渡した。


「その前に服着ようよー。ファミはそのまんまのジェイくんが大好きだからいいけど」


 ファミが背後にピトッと胸を押しつけながら言う。いや、俺以上におまえが恥ずかしがれよ。


「俺が素っ裸でも誰も喜ばんし、文句も言わんだろうからどうでもいいことだ」

「さすがジェイト。恥という概念がない」


 セイルまで遠回しに俺を非難する。そんなに俺の裸は毒なのか。


「まあ、毒にも薬にもならん、そこそこな体だな」


 勇者が冷徹に批評する。おまえの前世がどんな屈強な体だったのかわからんが、多分筋肉ダルマだったのだろうな。


 仕方なく、一旦脱衣場に戻って服を着る。風呂でほてった上に動き回って汗をかいた体はなかなか冷めない。なんとか着替えて外に出ると、騒々しかった。勇者の湯が破壊されてどうしようだとか、犯人は誰だなどと声が上がっているが、俺は知らない。被害の弁償は王家でも刺客にでも言ってくれ。


「で、ローネはどこに連れていかれたんだ?」

「それだが、王都に戻るのかと思ったのだがな……」

「違うのか?」


 魔王の返事に驚いた。てっきりローネを狙っているなら王都に戻ると思っていたのだが。


「刺客が去った方向は我が向かうはずだった方向だ」

「え? って、ブルンブルン帝国?」

「胸を揺らすな! ヴァレンドルン帝国だ」


 魔王の答えにセイルが何か言いたそうに胸を左右に動かす。うん、セイルの胸はどうやっても揺れないな。


「ただ、その中にある――」

「胸の中にか!?」

「その中ではない!」

「ボクの胸にはたいしたものは入っていない。ジェイト、知ってるはず」

「知らねーし! セイルの胸を見てたから、つい連想しただけだし!」

「見たいなら夜に見に来ればいい」

「いや、行かないから」


 いつもこいつらの脱線で話が進まないのい、今回は俺が脱線してしまった。湯あたりしたせいか。


「帝国の領土内にある我が――」

「あー! 魔王の城とかなんとか言うアレ?」

「その物ズバリの我が魔王城だ」

「生意気にも自分の城なんか持ちやがって」

「魔王が城持ってどこが悪いのだ!」

「いや、人間の形してなかったんだろ? 城なんか暮らしにくいだろ」

「人間ぽい姿にもなれたからな。それに我が配下は魔物だけではない。魔族には人間型も大勢いたからな」

「なるほど」


 魔族を理解してなかったな。

 いや、今は過去の勉強の時間じゃなかった。


「で、ローネはどこに連れ去られたんだ?」

「ローネを掠った連中が向かった方角というのが、我が魔王城のある方角と一致している。それがイヤな予感がすると言っている」

「偶然じゃないのか? 帝国に向かう最短コースとかな」

「可能性はあるが……」

「魔王、自意識過剰だぞ」

「なんだと?」

「なんでもかんでも魔王に関係して動くなんて思ってるところがさ。世界は魔王を中心に回ってるわけじゃないぞ」

「忌々しい人間め……」

「明日明日しい魔族め~!」

「今今じゃないの、ファミ」


 わかりにくいボケをかましたファミに突っ込んでいるうちに、温泉村の外れまで出てきた。

 村を突っ切っている街道がそのまま真っ直ぐ伸びている。行き着く先は帝国領だ。


「帝国まで街道を通って行くのはマズいか。魔法でパッと飛べないのか?」

「それなのだが、魔王城までなら転移の魔法で跳べるはずなのだ」

「じゃあ、それで」

「はずなのだと言ったであろうが」

「できないのか?」

「以前試したことがあるのだが、何かに邪魔されてな。跳べん」

「なに? 家を留守の間に荒らされた? まあ、1000年も留守にしときゃ空き巣も入るよな。なにかめぼしい物はあったのか?」

「いや、武具や魔書の類は倉庫に入れておいたから無事だが」

「そのソーコちゃんにも忘れられてたけどな。城からも忘れられてるんじゃね?」

「く……否定はできん」


 魔王もあの一件にはショックを受けたんだろう。ファミの顔とは思えないくらい歪んだ顔をしている。


「ファミル、酷い顔」

「セイルちゃん、ひどーい!」

「事実を言ったまで」

「ますますひどくない?」

「魔王のせいだから気にするな」

「えー! ヴァミちゃんってそういう呪いがあるの!?」

「魔王というだけあるからな」

「やだー! 呪い落とすー!」

「こら! ワレは油汚れではない!」


 またややこし方向に脱線してきたぞ。こういう時は別の話題を振るしかない。


「しかし、魔王のくせにあっさりと意識を乗っ取られたな」

「うむ、あそこまで上手く魔法を使えるとは感心したぞ」

「何をのんびり感心してんだよ。魔王だろ? 魔族の王が魔法でやられてどうするんだ」

「がっかりです~」

「うむ……」

「ヘタレでしたね」

「もっと言ってやれ、セイル」

「ヘタレ」

「貴様に言われると勇者に言われているようで、なにやらむかつくな」

「オレが言っているんだから当然だ! ハッハッハ!」

「貴様……」


 魔王と勇者が取っ組み合いになりそうな雰囲気になったが、俺はふたりを無理矢理引き剥がした。


「ようし、行くぞ!」


 風呂上がりでさっぱりした俺たちは銭湯を出る。そこで、ふと気づく。

 そう言えばニャオウが静かだ。


「ここに転がってる黒い毛玉ではないのか?」


 床に突っ伏しているニャオウを魔王が爪先で突く。

 さすがにネコだ。湯あたりでバテていた。仕方なく回収して荷袋に詰め、改めて村を出発――

 いや、嘘だ。出発は翌朝。

 出ようとしたら、ファミがお土産を買うーと言い出したのだ。


「誰にお土産をあげるんだよ?」

「え? え? ファミが食べるんだよ?」

「おまえな……。せめてローネに上げるとか答えろよ」

「う、うん! そうだよ! ローネちゃんにあげるんだ~。掠われちゃって食べられなかったし」

「絶対、今考えたろ」

「えへへ~」

「えへへじゃない!」


 ガツンと一発お見舞いしたが、とっさに魔王がバリアを張ったのか、俺の拳の方が痛かった。


「こんなことで魔力の無駄遣いをするな」

「だって、ジェイくんのゲンコツ痛いんだもん~」

「痛くしてるの!」


 口をとがらせるファミに赤くなった拳骨を突きつける。


「うう~、痛そう」

「痛いの!」

「まあ、自業自得だにゃ」


 憂さ晴らしにニャオウをしばき、歩き出す。

 出発を延ばしたのは、このせいじゃない。セイルの方が体力的に問題ありそうということで、戦いに備えて鋭気を養うことにしたのだ。


同時に新シリーズ『異世界召喚が多すぎる!~おかげで僕の仕事が減らないんだけど』を開始しました。

こちらもGW中連投しますので、お楽しみ下さると幸いです。

https://ncode.syosetu.com/n2756gx/

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