3:次の目的地は? その2
まずは名前でも聞くかと思ったしたところで、魔王が顔をしかめてこう言った。
「ううむ、さっきからどうも臭い」
「近くにトイレでもあるのか?」
「その臭さではない。あえて言うならば……勇者臭い」
「勇者って臭うのか!?」
「ボクは臭くない」
「くんくん……。セイルちゃん臭くないよ?」
「その勇者ではない。その勇者は肉体がないからな。臭くはない」
「じゃあ、他の勇者? ローネじゃないのか? 初代勇者の血を引いてるんだろ?」
「血が薄まってるから臭いはしない。ほとんどな」
「もっと濃い臭いってことか? 勇者の子孫?」
「いや、それはない」
「なんでセイルじゃないゼフィレンが自信満々なんだ?」
「オレの子孫はいないと言っただろう」
「あ、女になりたかったってあれか」
「そうだ。だから子供はいないのだ」
「じゃあ、兄弟姉妹とか?」
「親族はいないはずだから子孫がいたとしてもかなり傍系だな」
「じゃあ臭くないか」
「すると、もっと新鮮な勇者?」
自分で言っといてなんだが、凄い言葉だな。生で食っても大丈夫みたいな。
「はーい、勇者!」
いきなり声を上げたのは一角族少女だった。
「おまえが?」
「じゃなくて、あたしの実家が勇者の湯をやってるんです」
「勇者の湯? なんで勇者?」
「100年前の勇者がお爺ちゃんなんです」
「勇者ってそんなちょくちょく現れるもんなんだ」
「うむ。刈っても刈っても生えてくる雑草レベルなのだ。酷い時など毎年のように我を殺りに来たぞ」
「そんなに? どこから湧いて出るんだ?」
「異世界から来たって言ってましたけど、誰も信じてないんです」
「異世界からどうやって?」
「白い車に跳ね飛ばされて、気がついたらこの世界だったって」
「白い車とはなんだ?」
「さあ? お爺ちゃんは『ちいとすきるもないし、魔王もドラゴンもいねぇ! 死ぬ前にせめてドラゴンと戦いたかった』って言いながら3年前に死にました」
「残念だったな。もう少し長生きしてたら正真正銘の偉大なる魔王と出会えたというのに」
魔王はさほど残念そうでもない顔で言う。
「異世界から勇者ねえ。なんか何でもありになってきたな」
しかし、魔王もいないのに誰が召喚したんだか。召喚された勇者にも同情したい。
「で、その勇者の湯って今もやってるのか?」
「父ちゃんと母ちゃんがやってるよ」
「よし、勇者の湯へ行くぞ!」
「ジェイくん、そんなにファミの裸見たいの?」
「ジェイト、ボクの裸は高くつく」
「わ、私ならいつでもいいぞ」
「おまえらの裸が見たいわけじゃねーの!」
「あたしの見るの?」
そう尋ねられて、初めて一角族少女をじっと見る。なかなか発育具合はよろしい。
「やっぱりジェイくんの浮気者ーっ!」
ファミの叫びがまた響き渡った。




