1:目的地不明 その2
というところで、目的地の話に戻って来た。
「その帝国に行くのもいいかもな。ローネのことを知らないだろうし」
「それは確かにそうだな」
「では、転移術で魔王城まで行くか」
「大丈夫なのか? 1000年も前の城がまだ残ってるもんかね?」
「我が城がたかだか1000年でどうにかなるものか。しばし待て」
魔王は目を閉じて。が、いつもならパッと魔法が働くのに、今回は何も起こらない。流石におかしいと声をかける。
「どうした?」
「術が……働かぬ」
魔王が悔しげな声を出したのは初めてだ。
「やっぱり城がなくなってんじゃ?」
「いや、城がなくとも術そのものは働く。その場合は出現した位置に他の物があれば融合してしまうが」
「え? それ死ぬんじゃ?」
「我以外はそうであろうな」
「冗談じゃねぇ」
「それすら働かぬということは、向こうで何かが起こっているということだな」
「何かって?」
「わからぬ。何かが邪魔をしておる」
「真の魔王とか?」
「我以外に魔王がいるわけがなかろう!」
「いやー、1000年の間にどこかからやって来たとか」
「古き者どもか外なる神々か……あり得ぬ話ではないが……」
「え? マジな話だったの?」
「世界は人間が思うよりも複雑で混沌に満ちあふれておるのだ。メディーナ神など雑魚よ、本来はな」
「なんかわからんけど、魔法が使えないなら歩いて行くしかないのか」
「では、シュノバの町に行くか」
「そうだな。ローネは顔を隠しておくか」
「仕方ないな」
そんなわけで、一番近い町に向かうというだけで長々と時間を掛けてしまった。効率悪すぎだろ、俺たち。
「で、そのシュノバってのはどんな町なんだ?」
ローネは言いにくそうにうつむくと、考えながら答えた。
「えっと、その、私は行ったことがないのだが、歓楽街だと聞いている」
「なんか歯切れが悪いな。自分の国の、しかも王都から一番近い町のことを知らないのか?」
「……色街なのだ」
ローネはうつむいたまま短く答えた。気のせいか頬が赤い。
「あ、そういうことか。お姫様じゃ関係ない話だもんな」
「だから、私はできれば行きたくなかったのだ」
「そっか。しょうがないな。誰でも苦手な物があるよな」
「ん~、そうだ!」
珍しく考え込んでいたファミがいきなり声を上げると、セイルと共にローネに近づいた。俺も近づこうとしたら、セイルが冷たい目で見る。無言の圧力に負けて、俺はすごすごと3人から距離を置く。女の子特有の問題でも発生したのか?
「……色街……色々置いてあるから……」
「なるほど! ……いや、しかし、私にそんな……似合う……」
「……鈍いから……迫って……」
「……上手くいったら……3人で……」
「いいのか!? ……いや、それでふたりはいいのか?」
「……このままでは進展……」
「う、うむ……そうだな……」
ほとんど聞こえないが、なんの話だ?
しばらくして解散すると、ローネが真っ直ぐ俺に歩み寄ってきた。
「よし、シュノバに行こう!」
「え? いいのか? 無理しなくてもいいんだぞ?」
「無理はしていない! 私が行きたくなっただけだ! さあ行くぞ!」
「いやいや、顔くらい隠せよ!」
妙に張り切って歩き出したローネを追って、俺たちはシュノバに向かって出発した。
なんの話をしてたんだか……。ファミもセイルも黙ったままだ。
うーん、なんか起こりそう……。




