4:王女の死 その3
と、そこでソーコちゃんからの報告が入った。
「まおうさま、まちからでたよ?」
「ご苦労だったな。周りは誰かいるか?」
「だれもいないです」
「よし。我らを出せ、下僕よ」
「はいです」
魔王の命令に応じていきなり出口が開いて、光が射し込んできた。
教会から逃げ込んだ後、ソーコちゃんはひとりで街の門をくぐり、人目につかないところまで歩いたのだ。おかげでローネも俺も無事って訳だ。
「あー、シャバはいいなぁ!」
逃げるように駆け出すと、青空に向かって思いっきり伸びをする。
「ああ、シャバはいいな!」
横に並んだローネも伸びをする。俺より身長がある分、豪快だ。
「ジェイくん、しゃばってなにー?」
ファミが伸びをする。ローネよりも胸がある分、たぷんと揺れる。
「シャバはシャバ」
セイルが伸びをする。俺よりもない胸がさらになさそうに見える。
「しゃばー!」
ソーコちゃんが伸びをする。一番ちっこいが、全員この娘の中から出てきたわけだが。
「シャバという名の監獄だにゃ」
ニャオウが……いや、猫に伸びは無理だった。やる気なさそうにヒゲを綺麗にし始める。
「さて、どこに行くのだ?」
「特に決めてないから、来た方向と反対側に行くか」
「えーっと、あっち?」
「うん、あっち」
「よし、あっちに向かって進むぞ」
「おー!」
そんな適当なノリで歩き出して大丈夫かとは思ったが、
「まあ、なんとかなるだろ!」
俺は肩をすくめて歩き出した。
ご愛読ありがとうございました!
ジェイトたちの冒険はまだまだ続きますが、
神代創の次回作をお楽しみに!
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暗い部屋には5人の姿があった。
蝋燭が周囲の壁に並べられたのみで、白い三角形の頭巾の奥にある顔は見えない。
「魔王ヴァルミドルグが復活した」
ひとりが口を開き、
「先行したと思われる魔族の軍は第1王女によって破られた」
「王女が勝つわけがなかったはずだが?」
「何者かの助力があったと報告を受けている」
「冒険者風情が我らの崇高な道を邪魔しおって」
「昨日教会に現れて王女を殺したのは、期せずして魔王が役に立ったな」
「しかし、1000年か。まさに予言通りということか」
「1000年前の失態だけは繰り返してはいかん」
「さよう。破戒神官ヤン・シャルートのような例はもう出すわけにはいかぬ」
「教会の権威に関わるゆゆしき問題だからな」
「あとは、魔王をどうするかだな」
「勇者を見出すしかあるまいな」
「しかし、1000年前以来、勇者の血脈は忘れられておる」
「探すか。それとも――」
「ご心配は無用です。あの魔王は本物ではありませんわ」
それまで黙っていた女が口を開いた。
彼女のみ頭巾をかぶらず、顔をさらしている。綺麗に手入れされた金色の髪は軽くウェーブがかかり、陽光の下であれば煌めいて見えるだろう。丸く幼く見える顔立ちだが、その目は鋭い光を宿していた。
「殿下、それは確証があることでしょうか?」
「私が確証もなく言うとでも?」
女が冷たい笑みを浮かべて問い返すと、4人は口を閉ざした。
「報告書が届きました。教会に残った血は豚の物であったと。さらに街の外で燃え残った布を発見したと。白いドレスの生地で、一部に血が付着していました」
「それがなにを?」
「魔王が教会に豚の血をまき散らすなんて嫌がらせをしに来たのでしたら別ですけれど?」
「なるほど……」
「いかが致しましょうか?」
「何もしなくてもかまいません」
「は? しかし、殿下!」
「お姉様は魔王に殺されたのです。それでかまわないと言うことです。わかりました?」
「御意に」
「では、お母様には私から報告しておきます。終わりですわね?」
無言の行程の後、5人は声を揃える。
「主神メディーナ様のために」
4人が一礼して去っていく。
「お姉様ったら、そんなにしてまで私から逃げたいんですのね。この私が豚の血と愛しいお姉様の血の区別がつかないなんて、本当に考えていらしたのかしら」
第2王女エリザベート・ル・ロンド=レンディアンは楽しげに笑うと、舌先で下唇をゆっくりと味わうようになめた。
「王女でなくなったのなら、どんな方法で愛をお伝えしてもかまわないのですよね。楽しみですわ、凄く……。ああ、メディーナ様、私にこのような機会を与えてくださって感謝に堪えませんわ!」
エリザベートは手を合わせると、メディーナ神に感謝の祈りを捧げた。




