4:王女の死 その1
「……なんとか、なったな……」
走り通して、ようやく用意していた場所に倒れ込んだ俺は一息ついた。
まあ、近くの納屋に待機していたソーコちゃんの中に駆け込んだだけだが。
「予定と変わった」
セイルがつぶやいた。いつものように無表情だが、これは不満そうな顔だ。
「まあ、許容範囲内じゃないか?」
「ファミ頑張ったよー、ジェイくん」
「魔王の方がな」
「ずいぶん変更したな」
「予想外のことが色々起こって。あ、ニャオウにも礼を言っとかないとな」
「この格好、なんとかしたいのだが……」
そう言って血まみれの死体が起き上がった。
「ローネ、お疲れ」
「死体のマネをするのがこれほど辛いとは思わなかったぞ」
死体以上に疲れ切った様子で、顔色も青い。
「ずっと片腕で抱えられていたからな……。腹が圧迫されて。おまけに走り回られたせいで、酔いが……。馬より酷い……うぷっ……」
ローネは胸と腹を押さえて呻き、えずく。
ファミがそれを見て太いため息をついた。
「仕方あるまい。治癒してやる」
「魔王、治癒魔法なんか使えるんだ」
「魔王優しい」
「誤解するでない。ここで吐かれては倉庫が困るからな」
「優しいなぁ」
「優しいわけではない!」
「バミちゃんは優しいもんねー」
「バミちゃん?」
「魔王の愛称」
「ああ! そんな設定あったな! 忘れてたわ」
「ちなみにオレはゼフく――」
「……すまんが、治癒出来るなら早めに頼む……うぶっ……」
ローネが口を押さえ、魔王は慌てて呪文を詠唱した。
「……なんとか、収まってきた」
ローネの様子を見て、俺はまだそのままの服を示す。俺の方は甲冑を外しているので楽だが、ローネはそうもいかない。
「動けそうなら、着替えた方がいい。ファミ、セイル、手伝って」
「ジェイくんはやりたくないのー?」
「やるってなにを?」
「ローネちゃんのお着替えー!」
「おれじゃマズいだろ?」
「ジェイくんも見たいでしょ? ローネちゃん、すっごいよ?」
「なにがすっごいんだ?」
「押してもねー、指が弾かれるのー」
「色も綺麗」
「お、おう」
「ジェイト、前屈み」
「おれは腰の悪い爺さんじゃないぞ!」
「じゃあ、あっちでお着替えするねー」
「ジェイト、こっそりのぞく?」
「のぞくか!」
「えー、もったいないなー。こんなに綺麗なのに」
「こ、こら! どこをさわっ――あんっ!」
奥に引っ込んだ3人はなにをしてるんだか、バタバタと騒々しい。
しばらくして、用意しておいた服を着て、ローネがやって来る。ファミとセイルが買ってきた服だ。冒険者という感じの軽装の鎧だが、なんだか肌の露出が多い気が……。
「どうだ?」
「甲冑姿じゃないローネも新鮮だな」
「なにを言っている? 夜中に私室に来た時は甲冑ではなかったろう」
「え? あ、そうか」
「見ていなかったのか」
「どうやるかしか考えたなかったからな。それに暗かったし」
「せっかく気を引こうと薄手の物を身にまとっていたというのに……」
「え? なんだって?」
「いや、なんでもない!」
ローネはなぜか顔を赤くして、慌てた様子で否定すると、脱ぎ捨てた血染めのドレスを示す。




