2:決行の日 その2
王都メディーナ教会の周辺はすでに人だかりが出来ていた。
近衛兵と教会兵が警護にあたり、招待客以外は近づけないようにしていた。近衛兵は王室を、教会兵は教会と神官の警護だ。
「メディーナ教って兵士もいるんだな」
「ふん、昔からそうだ。魔王だの魔族だのは神の敵だと問答無用で殺しにかかる。勇者の方がマシなくらいだ」
「勇者の方がマシって?」
「少なくとも、勇者は話が出来たからな」
「そうなのか?」
「そういえば、何か話した記憶はあるな。なんだっけ?」
セイルこと勇者が1000年前の記憶を思い出している間に魔王に訊く。
「ところで、魔王って教会に入っても問題ないのか?」
「この前入ったであろうが」
「いや、神の前に立つと苦しいとかないの?」
「神といっても本体が来るわけでもない。本体でも問題ないだろうがな」
「本当にいるんだ」
「見たわけではないがな」
魔王はふんと吐き捨てた。忌々しいのは確からしい。
「おおっ!」
いきなりセイルが低い叫びを上げて、周囲の視線を集めた。慌てて咳払いをして誤魔化したところを見ると、声を上げたのは勇者だろう。
「なんだよ? セイルが恥ずかしがってるだろうが」
「すまんすまん。いや、魔王と話したって話だが、確かになんか話した記憶はあるんだが、はっきりしないんだよな。他にもうひとりいたような記憶もあるんだが」
「む……そういえば、そうよな。誰だったか……」
「耄碌だけはしたくねぇな」
「年のせいではない!」
今度はファミがダミ声で叫んで、周囲の視線を集める。慌ててけふんけふんと咳をする。
「ファミ、年じゃないもん!」
「それはわかってる。おまえがバアさんなら俺はもうゾンビだ。で、なに? 魔王は忘れっぽいのか?」
「うむ、我としたことが記憶に封印をされているとしか思えぬ」
「は? 誰かが魔王と勇者の記憶をいじったってことか?」
「そうとしか考えられぬ」
「ヤベーな、それ。そんなヤツがこの世界にいるってことかよ。神ってヤツ?」
「いや、それはないだろう。俺まで封印される理由がわからん」
「まあ、勇者って神寄りだよな」
と、そこで教会に動きがあった。参列者を中に入れるようだ。
「お、そろそろだ。打合せどおり頼む」
「わかったー!」
「了解、ジェイト」
ファミとセイルが教会に向かっていくのを確認すると、俺は荷物を担いで歩き出した。
ふたりはローネに手配してもらった一般向けの参列者として教会に入る。まあ、最後列だけど。
さて、俺も用意しないとな。
教会前から離れて、隣にある尖塔に向かう。この辺りにある教会よりも高い建物はあれしかないからだ。
先に調べて塔の鍵は開けておいた。見られていないか確かめてからこっそり中に入る。後はひたすら螺旋階段を上る。まあこの程度の階段など村で鍛えた俺にはたいした行程じゃない。
ちょっとだけ息が切れたがな!




