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わたし魔王の生まれ変わりなの、と幼馴染みは言った。  作者: 神代創
6章 村人Aは王都を満喫する
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3:悪事の下見 その3

「ここでいいのか?」


 辺りが真っ暗なので不安になって聞く。

 陽が落ちてから魔王が宿とローネの私室を魔法でつなげてくれたのだ。王城の内部は魔王が調べていたせいで、ほぼ把握出来ているらしい。防犯なんて無理だな。

 人の寝息が聞こえて、俺は手探りでベッドを探し当てた。


「ローネ?」

「ん? ジェイトぉ? 私を掠いに来てくれたんだぁ」


 寝ぼけた顔で俺を両手で抱きしめようとする。慌てて逃げようとしたが、ローネの方が素早かった。そうだ、身長が高い分、手も長いし、騎士なんだから力も強かった。

 柔らかい胸に顔を埋めるように抱きしめられる。薄い寝間着越しにもふたつの突起の感触が頬に感じられる。

 じゃなくて、またおっぱいで窒息か、俺!?


「あれ? ジェイト? 本物?」

「もう少しで死体になるところだったけどな」

「ジェイトが夜這いに来てくれて嬉しかったんだ」

「ファミもいるよー?」

「ふたりきりにはさせない」

「ちっ……」


 ローネが舌打ちする。お姫様なのに下品だなぁなんて今さらだけど。


「それで、なんの用だ?」

「ローネ、手紙を一通書いて欲しいんだけど」

「代筆でもしろと?」

「いや、姫様からの手紙だ。正式なヤツを頼む」

「つまり、王室の紙に封緘ということか。誰宛だ?」

「デレク・アイオーンだ」

「デレク? 私に言い寄ってきた貴族か? 私があんな馬鹿になんの用があるのだ?」

「馬鹿って、もう少し言いようがあるだろ。頓馬とか能なしとか」

「かなり非道こと言ってないか?」

「ん? 柔らかく言ったつもりだが」

「で、何と書けと?」

「そうだな『お慕いしております』とか?」

「私はその手の冗談が嫌いだ」

「冗談じゃない。そのものズバリ、恋文を書いてくれ」


 ローネは俺のことを狂人を見るような目で見た後、


「む、無理無理無理っ! そんなの書いたことないし、ましてあんなヤツになんか! ジェイトに書くのなら……いや、もっと無理っ!」


 最後の方がよく聞き取れなかったけど、今は時間がない。


「しょうがない。文面は俺が適当に考えるから、それ書いて。後はこっちでやるし」

「そ、そうか? じゃあ、なんとかする」

「よし、いいか?」


 便せんと筆とインクを用意したところで、文面を考える。


「えーっと、『親愛なるデレク様』と」

「ううっ……書きたくないな」

「そう言うな。頭の中で好きな男でも思い浮かべて置き換えて耐えろ」

「わ、わかった。そうだな。ジェイトにする」

「ん? なんだって?」

「いや! なんでもない! 続きを頼む」

「それじゃあ、えーっと、『突然のお手紙失礼致します』」

「形式的なところは大丈夫ですよ。目をつむっていても書けますから」

「なるほど。じゃあ適当に書いてもらってっと。続きは『ご存じの通り、私は婚姻の儀に臨みます。しかし、これは私が望むものではありません』」

「本当のことだからね」

「『お相手の方は好色で特殊な性癖があると噂されてます。そんな方よりも私はデレク様と添い遂げたい』」

「ぶっ! それを書けと!?」

「どうせ殺されるんだ。そのつもりで書け! じゃあ、続きは『デレク様と添い遂げることを思って身も心も清いまま通してきました』」

「なっ!? なんで知ってる!?」

「え? デレクのために?」

「そうじゃないっ! わ、私が、その身も心も……」

「いかにも慣れてない感じだし」

「それはファミルとセイルに比べれば誰だってそうだろうが」

「あのふたりも全然経験ないぞ?」

「嘘をつけ! あんなことをしているくらいなのだ。絶対もっと色々やっているはずだ!」

「いや全然」

「その白々しい顔が信じられん!」

「信じてくれないなら、この話もダメだな」

「う……容赦ないな、ジェイトは」

「じゃあ、信じてもらったところで、続きいくぞ。『デレク様とならどこまでも参ります。例え火の中水の中――』」

「さすがにそれは嘘くさいセリフだろう?」

「う~ん、じゃあ、『ふたりきりで……』ええっと、どんなことがしたいんだ? 貴族の生活はわからないなぁ」

「それなら、定番で食事とか舞踏会とかだろうな。まあ、私なら馬で遠出して、狩り。湖畔でランチの後、ハプニングで湖面に落ちて、そのままジェイトと結ばれたりして……」

「ん? 考え事してた。何か言ったか?」

「やりたいことをつぶやいてただけだ。それだけだぞ!」

「じゃあ、それ適当に書いといて。その後、ここらでとどめかな。『私を掠ってください。式典当日、教会に来て下されば、私はあなたの胸に飛び込んで参ります』っと、こんな感じでどうだ?」

「ああ、ドレス姿のまま駆け出してジェイトの胸に……いいな。い、いや! デレクの胸になど寒気がしたぞ!」

「一所懸命に考えてやったのに」

「いや、それは嬉しかった……ぞ?」

「そうか? じゃあ、『愛するデレク様』と、最後に署名か」

「うむ。封筒を蝋で封緘すれば終わりだ」


 封筒に溶けた蝋を垂らし、ローネが印璽を押しつける。これで正式な文書として完成といいたいところだが、もうひとつ重要な作業がある。こっちは後で魔王に任せるしかない。


「ジェイト……」

「後は任せておけ」


 不安なのか俺を見つめるローネに安心させるように笑うと、来た時と同じように魔王の魔法で宿に戻る。

 とにかく、後はこれを魔王に渡してデレクに届ければ仕込みは完了だ。


活動報告に書きましたが、1週間ほどお休みです。

仕込みを済ませて再開します!

お待ちください!

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