3:悪事の準備 その2
冒険者ギルドにも顔を出しておいた方がいいかなってことで、ギルドの場所を探して向かう。まあ、まだ1回しか仕事してないし、それも大失敗したので、冒険者と名乗ってもいいのかどうか。ランクも最低のFのままだし。
さすが王都のギルドだけあって、表通りに近いいい場所にあった。大きさも豪邸レベル。
「ちょっと依頼がないか見てくるか」
そんな軽いノリで中に入る。
今は昼休みも終わって暇な時間帯なんだろうか。5つも窓口がある受付には4人組だけ。
あれ、なんか見覚えがあるな、あのパーティ。
えーっと、確か全員Aランカーの《炎のなんとか》だったな。
「お? 町で見た顔だな」
「その節はお世話になりました、《炎の鴉》さん」
「《炎の鷹》だ!」
「ジェイト、記憶力ない。馬鹿」
殺気立ったパーティがセイルの一言で落ち着いた。
「嬢ちゃん、もっと言ってやれ。全員Aランカーのパーティ名も覚えられないで冒険者名乗ってんじゃねぇってな」
「次までに頭改良しておく」
「おう、頼んだぜ!」
「いや、もう覚えたし!」
セイルの本気か冗談かわからない台詞に《炎の鷹》の連中が笑い、俺は苦笑するしかない。
と、ここで思い出した。こいつら魔王を倒すとか息巻いてたっけ。意趣返しのつもりで突いてみる。
「そういや、魔王を退治するって言ってましたね」
「ああ、退治する前に王国の討伐隊が殺っちまったんで出番はなし! 残念だったなぁ」
「タイミングが悪かったんですね」
「どうも上手くいかねぇんだよな。魔王倒しとけば名声が上がってSランクに上がれたのに」
ランク上げのための便利道具になってるぞ、魔王。
ここで思いついたことがある。上手く行くと面白いことになるし、こいつらにとっても悪い話じゃないだろう。
「でも、噂聞きました?」
「なんの?」
「王女が倒した魔王は身代わりだって」
「なんだと?」
「従軍した兵士から聞いたんですけど、その魔王って猫くらいの大きさで、弱かったっていうんですよ」
「なんだそりゃぁ?」
「だから、偽物か身代わりなんじゃないかって話で」
「はっはっはっ! だろうな! そんなこったろうと思ったぜ。やっぱりオレたちが倒す運命なのさ!」
乗りやすい奴でよかったよ。
「で、4日後に王女の結婚式でしょ?」
「ああ、それでオレたちも久しぶりに王都に来たんだ。それがなんだ?」
「いや~、俺が魔王なら結婚式なんて打ってつけだなーなんて思うんですよね」
「なるほどな。式を襲撃して魔王の汚名をそそぐってことか。こりゃひょっとするかもしれんな」
リーダーは真剣に考えてる。ホントに乗りやすいな。
「でも、なんで俺に教えるんだ?」
「ただの思いつきだし、本当に魔王が来たら俺じゃ無理だし」
「違いない! ようし。どうせ式典まで王都にいるんだし、万全の準備してやる。来なけりゃドラゴンでも倒しに行くぜ」
上機嫌で俺の背中をドンと叩くと、《炎の鷹》はギルドを出ていった。
仕込みはひとつ終わった。次はローネだな。




